【原神】ナタで来そうな料理と言えば | 久印のゲーム雑考

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本業は人文学の研究をやっている人によるゲーム考察ブログ。

現在はHoYoVerseの『原神』を中心に扱っています。

オープンワールドRPG『原神』では、ゲーム内アイテムとしての多くの料理が実装されています。

ゲームシステム上、料理の効果を差別化するのには限りがあるので、実際には同じ効果ならば入手しやすい方しか使いませんが、多様な料理は世界観を伝える一つのフレーバーです。実際、国ごとにその特色を示す多くの料理が実装されてきました。

 

 

公式も作中料理を再現する「グルメの旅」動画をしばしば出しており、もう7本あります。

 

 

その他、独自に作中料理を再現した動画を上げているファンもいるので、興味があれば調べてみるといいでしょう。

 

この『原神』、8月28日には ver5.0 のアップデートで第6の国「ナタ Natlan」が来る予定になっており、このブログでもいろいろ先行情報について考察してきました。

ナタのモデルは南北アメリカ大陸のネイティブ文化(マヤ、アステカ他)を中心に、西アフリカからポリネシアまで及ぶ要素を含んでいるのを見てきましたね。

 

そんなナタでも、やはり地域性を示した料理が実装されるはずです。

それはどんなものになるのでしょうか。

 

アメリカ料理……

(『魔人探偵脳噛ネウロ』4巻、集英社、2006年、p. 187)

 

違いました。これは「現代の(西洋系)アメリカ人のステロタイプイメージのカリカチュア」です。

しかも、ハンバーガーなら(ケンタッキーフライドチキンとのコラボアイテムとして)もうあります。

 

『原神』の料理は、材料から作れるシステムになっており、多くの食材アイテムも存在しています。

肉は獣肉、鳥肉、魚肉の3種類くらいですが、植物はご覧の通り、ニンジン、ダイコン、小麦、キャベツ、タマネギ(紫色)、トマト、ジャガイモ、米といったものがあります。

なお、「大豆」というアイテムはありませんが豆腐はあります。また、スメールでは「ツルツル豆」や「コーヒー豆」も実装されました。

 

ジャガイモやトマトがアメリカ大陸原産であるのはよく知られた事実ですが、『原神』の世界は現実をモチーフにしているとはいえファンタジーですし、それにフォンテーヌのような近代的な世界観の国もあり、別に大航海時代以前をモデルとして特定しているわけではないので、ジャガイモやトマト自体は別におかしいわけではありません。

ちなみに、やはり南米原産のトウガラシは「絶雲の唐辛子」という名前でだいぶ外見を変えて、中国をモデルとした国「璃月(リーユエ)」の特産品となっています。さすがに現実のトウガラシそのままで璃月の特産とするのは変だと思われたのでしょうか。

 

しかし、アメリカ大陸原産の代表的な作物で、まだ実装されていないものがあるのにお気づきでしょうか。

トウモロコシとカボチャです。

 

特に、トウモロコシは中南米の原住民の文明で、長らく主食として食べられてきました。

メキシコの国民食であるタコストルティージャもトウコロコシペーストの加工食品です(今のような形の料理ができたのは比較的新しいという説もありますが)。

 

 

もちろん、ゲームの料理システムは簡略化されたもので、一つの料理にあまり多くの食材を使うような複雑なことはできません。ゲームシステム上は似た食材で代用することもあります。

私としては、もうトルティージャかそれに類する料理が実装されるのはほぼ間違いないという予想で、原材料アイテムとしてトウモコロシが実装されるかの方に注目したいと思います。

 

トウモコロシがあればポップコーンなんかも出せますしね。

 

なお、カカオ豆もアメリカ大陸原産です。今ではガーナなど西アフリカでの栽培の方が有名ですが、ナタのモデルが西アフリカにまでまたがるならちょうどいいかもしれません。

ただ、「コーヒー豆」とそれを用いたお菓子はすでに実装済みなので、「チョコレート」が出てもそこまで新鮮味はないかもしれません。

 


 

【余談】

宮沢賢治の『雨ニモ負ケズ』に、

一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ 

という一節がありますが、実際、これで一通りの必要栄養素は取ることができます(もう少し動物質も取った方が平均寿命は延びるそうですが)。それほど米(玄米)の栄養価は高いのです。

小麦ではそうはいきません。ですから、小麦食文化圏では肉食は不可欠です。

 

ではアメリカ大陸ではどうかというと……ジャレド・ダイヤモンドが『銃・病原菌・鉄』で指摘しているように、アメリカ大陸は家畜化に適した動物のいなかった家畜冬の地です。

 

 

南米の主な肉用家畜といえばアンデスのテンジクネズミ(モルモット)くらいです。あんな小さな動物を肉用に飼育していたくらい、肉用家畜となる動物はいませんでした。

ですから、南北アメリカ大陸とも、肉は狩猟が基本。畜産に比べると量は限られています。

 

そんな環境で、トウモロコシは肉がなくても生きられるほどの栄養源となったのでしょうか。

なっていたようです。

そのポイントは、トウモロコシを石灰水で下茹でする処理にありました。

このような下処理をしたトウモロコシを、ナワトル語を含むナワ語群で「ニシュタマル(nixtamal)」と言います。

 

今では骨の同位体分析などで、古代人が何を食べ、どこで育ったのかもかなり分析できるようになってきました。

同じトウモロコシ主食の集団でも栄養状態に差があるのは、この「ニシュタマル」の技術があったかどうかの差ではないか、という説もあるくらいの大きな発明で、これによりトウモロコシは文明を支えられる主食となったのです。

 


 

【8月29日~、ver5.0アプデ後追記】

確かに、トウモロコシのような植物と、ついでにカカオ豆とはあまり似ていませんがカカオを念頭に置いた、チョコレートの材料にもなる植物が登場しました。予想的中

詳しい答え合わせは下記記事にて。

 


 

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