戦場で出逢った僕らが 船上で再会した | 今日も世界は美しい

戦場で出逢った僕らが 船上で再会した

戦友の結婚式に行って参りました。

2003年の深作組作品である『バトルロワイアルⅡ』の共演者、久保田 武蔵の結婚式。
彼は生徒役、僕はテロリスト役でした。設定上は敵同士&出番が重なっていなかったため、撮影中の絡みは有りません。
むしろ、僕が仕掛けた地雷で殺してしまった可能性だってあるのです。
(実際は工兵としての技術に長けているという設定の今給黎 聡役の和田 聰宏が殺した線が強い....とか脚本のせいにしようと思う)

しかし、敵同士とはいえ、戦友。
同窓会で再会し、ものの数時間で意気投合してしまう。
当時、自身が置かれていた状況も酷似していてさ。
大衆の玩具でしかない僕らの宿命ではあるのだけれど....それにしてもな、おかしいだろ。
久しぶりに、みく節を。


仮想現実は、事実を、超えない。
我々の体温が便所のラクガキになんて、負けるわけがあるか。


僕と彼には、魂の共通点があると僕は思っていて。
常軌を逸した情熱。不条理への怒り。怒りを表現できない、苦痛。
それらに勝手ながら自己投影してしまい、他人事とは思えなかった。

出逢いから18年が経ってから、再会。
その場で、意気投合するなんて、ちょいと奇妙で必然的じゃないか。
同窓会 の喧噪の中、
『結婚式に呼んでほしい』
なんて、突拍子もないワガママを言わせていただいたのが、2016年。

それから3年が経ち、僕の手元に1通の手紙が届いた。
結婚式の招待状だった。
彼は、約束を果たしてくれるんだ....。

僕は、結婚式に参列したことが無い。
葬式は得意分野になってしまったが、結婚式に呼ばれたことは皆無なのだ。
一度は、行きたかった。行ってみたかった。ピン札とか、用意してみたい。ピカピカの革靴で行ってみたい。準備であたふたしてみたい。浮足立ちたい!浮足立ちたい!ブーケトスとかで、本気の身体能力を使ってみたい!!次に結婚するのは、僕だと知らしめたい!!!!

僕は、着々と準備を進めた。
バッグを買って、ご祝儀袋を買った。ハンドメイドの桜のネクタイを買って、合わせるために吟味を重ねたボルドーのポケットチーフを買った。
ピン札を郵便局で用意した。郵便局員の女の子がすげー可愛かった。「結婚しましょう」って言いそうになった。そうだ、受け取ったブーケを渡せばいい。そう決めた僕はその足で、クリーニング屋さんに行った。革靴を靴磨きに出した。勝手に鏡面磨きにされていて驚いた。

僕は、人生初の結婚式に参列するため、理想通りに浮足立っていた。
10月の某日。2日前を迎え、新郎である武蔵から 連絡が来た。




台 風 直 撃 。




雨男でごめん!!!!

その2ヶ月後、12月。
『リベンジ!』と銘打たれた招待状が送られてきた。
やることが粋だぜ。
よし!それなら、リベンジしてやろう!!
もっといい式になる、必ずだ!!!!

さらに、2ヶ月後。いよいよ、式が近い。
しかし時は、2月。日本にはコロナウイルスが上陸していた。
僕は、招待状を確認する。
ふむふむ。クルーズ船で挙式かぁ。楽しみだなぁ。(主にブーケトス)

あれ....?




ク ル ー ズ 船 ☆




ブルータス、お前もか!!!!!!

てなわけで、結婚式当日。
コロナには、ライムをぶちこんで美味しく飲み干してやるとして。

BRⅡのキャストからは、久我伊藤 友樹田中 丈資(↑画像 L→R)



戦場で出逢った僕らが 戦友を船上で祝福する、17年後。
人生は、美しいダジャレに満ちているのだ。


いよいよ、挙式。
船上結婚式なので、愛の誓いを見守るのは船長。
これから、人生の大海原へと航海に出るのだ。
初老の船長が、厳かに話し出した。

「それでは、久保田 武........」

....静寂。
え?クボタ タケシ?誰それ?
よく見ると、お爺さ....初老の船長がモゴモゴ言っている。
あ....




マイクの音が出ていない☆




もうね、生声すら聴こえない!
なかば強引に、新婦の入場に移行する。すげーよ、ヴァンテアンクルーズ。居酒屋で燗酒を厨房さんに頼む時の久我未来レベルに強引だよ。
今更だが、伊藤 友樹と僕なら、あの音響トラブルに応急処置をできたんじゃなかろうか。

んで、新婦の入場。
花で飾られたロープが倒れる。ヴェールが飛びそうになる。船長も飛びそうになる。撫でつけた僕の髪が初期ロンドンパンクのお手本みたいになる。
そう....




風 が 強 い 。




ここで、新郎の武蔵が参列者の皆に言った。

(強運を)持ってるでしょう?笑」

武蔵よ....戦友よ....




うん。持ってる。




しかし、こういうフォローをサクッと出来てしまうあたり、業界出身は本当に素敵。
ちなみに、船長は飛んでった。

お父様に付き添わられてヴァージンロードを歩く、花嫁様。
花嫁様は皆に任せておいて。僕はずっと武蔵を見ていました。僕の悪い癖だよね。
そのうち『陰にこそ本質は在る』とか言い出すぜ、ほら 中二病だからさ、俺。

最愛の女性が自分の元に歩みよる様子を、心配そうに見守る新郎。
格好良かった、本当に。
形式さえ無かったら、彼はすぐに走って新婦のもとに駆け付けたいだろうに。


強風の甲板の上、新婦を待っている横顔を、僕は一生忘れないと思う。
美しい時間をありがとう、武蔵。


ちなみに、ブーケトスはお菓子トスでした。
僕の結婚が、また遠ざかりました。もういいや、金魚で。

挙式を終えてテーブルに着くと、新郎新婦からの手紙があった。
一人一人への手書きの手紙、だ。
ハルクホーガンを切り抜いた、メッセージカード。
とことん、エンターテイナーだなぁ。


手紙から、ふと顔を上げた。そこは4人テーブルだ。
同じテーブルには、田中 丈資。同窓会の時も同様、彼は常に全体を見ているバランサー役。
何故か、みっちり仲良しの伊藤 友樹は、隣のテーブル。そして、僕の正面にはおっかないおっさんが居る。眼光鋭く、山のように大きな体躯。
僕の右には、冷静沈着な男性がニコニコと座っていた。
僕は、気が付いた。




これ、久我の泥酔防止の布陣だろ!!!!




しかし、正面の男性が....黒シャツ!!
人生初の結婚式参列で、
「く、黒シャツでいいのかな? し、新婦様のご家族にも、しょ、承諾を....」
とかビクビクしていた僕と同じテーブルに、黒シャツの男性がいらっしゃるという奇跡。
「良かった!僕一人じゃない!」と安心して話しかけてみたら、共通点がいくつもあるたという素敵な出会いとなりました。
まず、ご近所さん!
次に、彼が20年ほど住んでいた街が、徒歩40分ほどの距離!
そして、共通の友人が金八パート2の直江 喜一さん!!(腐ったミカンの加藤 勝役)
直江 喜一さんとのエピソードはこちら

てなわけで、黒シャツ同盟。

ずいぶんな迫力ですが、経営者の方です。

んで、お色直し。


新婦様が綺麗だとは存じていたけれど、まさかここまでとは!
御子息を出産されているとは思えない、美貌。
主役自らが周囲への配慮を徹底されており、素敵な女性でした。

でもさ....


新郎が、袖落としタキシード!
もうね、黒シャツとか気にしていた自分がバカバカしくなったよ!!

新郎新婦のご挨拶では、僕の琴線に触れまくってしまうシーンもありました。
お二人の会話形式で進むご挨拶だったのですが、『幸せにします』という旨の宣言をした後のこと。

武蔵
(これからも頑張ります!)....お金はないけど!」

新婦様
「うん。これから、だよね?」


諭すように、頼るように、ちょっぴり脅かすような新婦様の台詞。
『女性の強さって、これだよなぁ』と、胸が熱くなりました。
挙式と披露宴。神聖さとイベント性のバランスが、絶妙な結婚式でした。
新婦からご両親への手紙の朗読で泣いてしまったことは、口が裂けても言えない秘密です。

帰り道、手書きの手紙を読み返す。
そこには『強くなりたい』と書いてあった。

大丈夫、あなたは強いです。
強いから、弱いの。弱いから、大切な存在を護れるの。
僕も、強くなりたいです、武蔵。
あなたが背中を見せてください。

式を見届けさせていただいた僕らは、久保田ファミリーの証人。
此処に居た全員が、武蔵の仲間です。

ご結婚、おめでとう!


↑船長が飛んでいく前。