モラルライセンシング効果

 

日常会話の中で、やたらと「正義感」を振りかざす人に出くわすことがあります。

 

彼らの言葉は一見崇高で、倫理的な正しさを訴えているように聞こえますが、そういう人が何となく昔から苦手でした…。

 

 

 

長年、その理由がわからなかったんですが、社会心理学に「モラルライセンシング効果」という言葉があることを知り、腑に落ちました。

 

モラルライセンシング効果とは、社会心理学用語で、人が倫理的な行動をした後、その行動によって得られた「免罪符」のような感覚により、その後の行動の倫理基準が緩んでしまうという心理現象。

 

要するに、人は良い行いをすると、「いい気」になり、その後、自分に甘い“許可”を与え、羽目を外しやすいということ。

 

 

 

例えば…

 

  • ダイエットに励んで運動を頑張った後、高カロリーの食事に手が伸びてしまう。
  • 防災活動に貢献する消防団員が、慰安旅行で大きく羽目を外してしまう。
  • 自己啓発セミナーに参加した人が、受講後の一杯で泥酔してしまう。
 

 

 

まぁ、こんな程度なら誰にでも思い当たる話で可愛いものですが、これが個人の枠からはみ出すと厄介です。

 

「これだけ国民のために働いたんだから、ちょっとくらいいい思いをしても…」と政治家や官僚がスキャンダルを起こすような事態に発展したり、自民党女性局が海外研修と称し、エッフェル塔前でポーズを取り観光していたこともこれに相当するかと思います。

 

 

また、近年は、SDGsやLGBTなどを声高らかに叫ぶ人たちの中にも「自分は社会貢献しているから、他のことには目をつぶっても良い」という傲慢さが潜んでる気がします。

 

そもそも、正義なんてものは、見方によって180度変わるもので、善悪が一人の人間の中に混在するのが人間であり、半世紀に一度現れるくらいの偉大な宗教家でもない限り、一時的に「良いこと」をしても、その後、良からぬことに手を染め“帳尻合わせ”するものくらいに考えていて丁度いいと思います。

 

本当に誠実な人は、自分の中に悪の要素が潜んでいることを熟知しており、恥ずかしくて「正義」なんて言葉をそう簡単に使えるはずがないんです。

 

だから「正義感」を振り回す人って苦手…。

 

「正義」という大鉈を振るい「悪魔」になれるのが人間ですから…。