
金剛山系をのぞむ風向明媚な御所市某所にあるEさんの圃場。化学肥料や農薬を使わず、栽培されています。
ひんやりとした泥の中に足を踏み入れると、思ったより深く足を取られ、バランスを崩しそうになってヒヤリとする。片手に持った苗の束から2~3本むしりとり、根元を優しく掴んで、腰をかがめて泥の奥へとまっすぐ挿し込んでいく。ただそれだけの作業を黙々と繰り返す…。
6月6日雨、奈良県御所市。
大阪の喧騒とくすんだ大気を遮るかのように、雄大な金剛山系がそびえ立つ風光明媚な場所に、Eさんの圃場(※田んぼや畑のことです)はありました。
今回、うちの大切なお客さまでもあるEさんのお手伝いに、うちの家族4人を含め、集まった有志は8人。
人生初の田植え体験に参加させてもらいました。
田んぼの大半は田植え機を使っての機械作業ですが、全体のわずかな場所だけ、あえて「手植え」する特別なエリアが残されています。僕たちが黙々と作業していたのはまさにその場所でした。
作業前、Eさんから「ここには立ち入らないでね」と言われた4メートル四方ほどの囲みがありました。
「あそこに見えるのがカエルの卵。もしかしたら絶滅危惧種かもしれないから、そっとしておいてね」とEさん。

後日、Eさんが絶滅危惧種かも…と言っていた卵がおたまじゃくしにかえったとの報告が!
途中には、田植え機に乗って植付けする稀有な体験も。初めてのことに戸惑う僕に一通りのレクチャーをした後は、「だいたいわかるね?」と、いい意味で突き放してくれるのがEさん流。お陰で、1〜2往復させる頃には動かし方を呑み込むことができました(笑)。
実は、このEさん、『ノア』という美容室をされている女性ですが、とにかく性格が「男前」、一言でいうと「人たらし」。^^
その厚い人望と信頼を集めるお人柄に惹かれ、今回は「ぜひ僕たちも参加させてください」と、こちらから願い出たのでした。

最初はハヤターも面白がって田植えに参加していたものの(隣で腰を屈めているのが僕です)、ものの30分もしないうちにこの始末…。やはりというか、案の定、機体を裏切ってくれます(苦笑)。
聞けば、一反半(約450坪)ある圃場もEさんの土地ではなく、水や耕作機械、納屋にいたるまで、良心的な地主さんから、なんと「タダ」で貸してもらっているとのこと。
今回集まった方たちも自発的に集まったメンバーでしたが、その手際よく作業される姿を見て、僕はてっきり、「地元の農家さんたち」だと思い込んでいましたが、何と全員が大阪市内からのご参加、今年で4年目ということを聞き、さらに驚かされたのでした。
「何時に来ても、何時に帰ってもいいよ」と、Eさんは自由そのもの。
人に強要せず、相手の自由を奪うような言い方はけっしてしません。
だから、各自、自分のペースでお腹が減ったら自前で持ち込んだおにぎりやパンを頬張り、気ままに休むというスタイル、それが何とも心地いいんですよね。
当日はあいにくの雨模様で、田植えシーズンとしては、予想外に寒く、肉体的にはなかなかハードな作業でしたが、誰ひとり不平を漏らすことなく、「今日中に田植えを終わらせてしまおう」と、ひとつになって作業していく姿に感動すら覚えました。
作業中、ぬかるみに足を取られた田植え機が横転するというアクシデントも。
幸い怪我人もなく、皆で力を合わせて車体を起こしたのですが、はずみで機械のオイルが少し田んぼに漏れ出てしまいました。
するとメンバーたちが、誰に指示されるでもなく杓子とバケツを手に取って、水面のオイルを丁寧に掬いはじめ、その作業は、大阪に還る直前まで続けられたのでした。
その参加者たちの、まるで「わが子」をいたわるかのように土地や自然への愛情を注ぐ姿を垣間見て、あの圃場へメンバーたちが自然に引き寄せられる本当の理由を教えられた気がします。
Eさんが育てているのはお米だけじゃない。人との関係性なんですね。
圃場や機械を無料で貸してくれる人がいる。お客さんが手伝いに来る。
これってお金だけでは成立しない人との関係性そのもの。
美容師として築いた信頼、人柄や関係性が、別の世界に広がり大きく実を結ぶ。
その「はみ出し」具合が半端なくカッコいい…。
身体はあちこち悲鳴を上げていますが(笑)、指先に残る泥の感触と、Eさんを中心に商売を超えて温かく繋がる「人の心の美しさ」に触れられた、とても贅沢な一日でした。
ただ、残念だったのは、この投稿を書くにあたり、嫁(様)が田んぼでバランスを崩し顔から突っ込っこむ場面を激写し、面白エピソードとして紹介しようと目論んでいたのですが、その思惑が外れてしまったことでしょうか。
「顔出しNG修正する手間も省けました」と、テロップまで考えていたのですが…(笑)。
楽しくて素敵な体験、Eさん、ご一緒させていただいた皆さん、本当にありがとうございました。
Eさんの「はみ出し」方、うちも見習って、もっと布団屋から「はみ出さなければ」と思いました(笑)。
──いや、ただの小さな布団屋の独り言なんですけどね。^^

写真左:Eさんに田植え機の操作法のレクチャーを受ける僕。写真右上:乗り物大好きなハヤターはのうきぐに大興奮!写真右下:何と嫁(様)も田植え機を運転させてもらっていました(注意:ネズミ男ではありません!)
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