キャリーバッグの歴史(1)

 

 キャリーバッグの使い方(8)では、交差点付近にあるデコボコ道を人はどのようにして通り越しているかについて、見てみました。

 

 そこでは、つんのめりながらも何とか引いて歩いている人、バッグを持ち上げて進む人、2輪車に持ち替えて引いて歩く人など、いろいろな人がいました。

 

 交差点付近を4輪キャリーバッグで引いて歩く人のほとんどが、4輪キャリーバッグの処方に戸惑う姿が見て取れました。

 

 それは、つんのめりや左・右旋回などの問題点に関するものです。

これらの問題を解決すると、キャリーバッグはヨリ楽に引いて歩くことができると思います。

 

 ではその技術の開発はどうなっているのでしょうか。

このことを考えるために、キャリーバッグの歴史を概観することにしましょう。

 

 キャリーバッグがまだ出現していなかった頃は、みんなバッグ(たとえばボストンバッグというもの)を手に持つか、肩にかけて歩いたものです。

1960年頃はまだそういう時代でした。

 

 車輪つきのバッグが出現したのは、1960年代後半くらいだと思います。

スーツケースに車輪が取り付けられました。

 ただし当時のスーツケースの車輪は、360度回転するものではなく、前方方向に向かって固定した車輪からなるキャスターでした。

 

 キャリーバー(伸縮する取っ手)はまだついていませんでした。

 

                 

         縦型                         横型

 

 前方方向に向かって固定した車輪からなるキャスターを固定型ともいいます。

それに対して、360度回転する車輪を回転型ともいいます。

 

 外国に行く人は、固定型の車輪を4つ付けたスーツケースを持って行きました。

しかし、国内でこれを使用する人はほとんどいませんでした。

 

というのは、当時はまだ道路が不整備で、車輪を転がして歩ける状態ではなかったこと、

また、車輪そのものが未成熟で壊れやすかったからです。

 

 そして、1980年代に折り畳みができる2輪車が、登場しました。

 

 

        

 

 

       折り畳み2輪カート                2輪キャリーバッグ

 

 

 この当時の2輪車は、左図のように、カートとバッグは別々になっていました。

しかし、程なく、右図のようなバッグ一体型の2輪キャリーカートも出てきました。

 

 さて、2輪車の車輪は2輪とも固定型です。

回転型の車輪を取り付けた2輪車は、現在でもありません。

 

 ではなぜ、2輪とも固定型にするのでしょうか。

 

 2輪車を回転型にすると、左右に振れて収拾がつかないことになるからです。

 

 車輪は、路面のデコボコによって、抵抗を受けます。

凸部分があると、車輪はそこを避けようとして、右または左の凸でない所に移ろうとします。

 

 そのとき、車輪が回転型ですと、車輪の方向を右または左に方向転換して、凸でない所に移動します。

そのため、ここで右または左へ大きく移動してしまいます。

 

 その結果、振れが増幅して、収拾のつかない振れに発展していくのです。

 

 2輪とも固定型にすると、引き手に引かれて無理にでも前に進まざるを得なくなります。

その結果、左右の振れが少なくなり、直進するのです。

 

 2輪型では、固定車にしないと、うまく走行できない、ということは、経験からわかっていることです。

 

 昔の大八車やリアカーは、2輪の固定車に決まっていました。

 

 そしてこのことが、4輪キャリーバッグをデコボコ道でも楽に引いて歩けるようにするヒントを与えてくれるのです。

 

 さて、2輪カートの話に戻ります。

折り畳みの2輪カートは、ロープでバッグを巻き付けて固定し、引いて歩きました。

現在もこのタイプは時々見かけます。

 

 ここまでは、ずっと2輪車の時代です。

 

 2007年前後だったと思いますが、現在の4輪キャリーバッグが出現しました。

このときの車輪は、現在と同じ360度回転する、回転型です。

 

(これ以降については、次々回に続く)