女達はどう生きて来たか 山崎敬子 6 | 気になる映画とドラマノート

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女達はどう生きて来たか 山崎敬子 6

 田中が松沢病院(東京の世田谷区にある有名な精神科の病院)に収容されていたのを知った時は、あのまま本当に気が狂ってしまったのかと私は心配した。しかし、その後、平静にかえってだいぶよくなっていることを聞かされて安心した。

 薬の中毒も、治していただけるとどんなにいいかと思っている。
 今、私は三十九度近くの高熱の中に、今度こそはしっかりと田中を抱いて離さないと思うのでした。

 終わり。

 田中というのは、太宰治の弟子のような立ち位置の、太宰より2歳歳下の作家、田中英光で、この時、田中英光は、アル中と、昭和24年当時流行していた簡単に入手できるアドルムとか、ヒロポンという精神安定剤(ただし中毒して、理性的ではなくなる。泥酔していれば、なおさら)この山崎敬子さん、多くの女性なら、アル中、DV男は、ごめんだと、もう死んでほしい、二度と会いたくないだろう、と思うのではないか、と思うはずだが、刺されて、なお、高熱を出しながら、書いた手記には、実に的確達意な文章で、当時を回想し、そして、精神の安定を取り戻してもらって、会いたい、と言っているのだから、驚く。

 次回は、この山崎敬子さんは、一応戸籍の上では、愛人の位置にあり、田中喜代子さんという名前の田中英光の妻の手記を紹介しようと思う。



 おまけ

 昔、アンネの日記が世界中で読まれた。今はそんなに読まれていないんじゃないだろうか。正直言うと、私も読んではいない。何度か引用だとか、テレビ番組では、見たと思う。

 その頃、世界中でしいたげられたユダヤ人に、多くのひとが同情したが、今は、イスラエルとパレスチナの紛争、パレスチナ難民の問題では、知れば知るほど、ユダヤ人のイスラエルは空爆のやりすぎだ、残酷だ、傲慢だと世界中から非難されている。

 いまや、アメリカ国内ユダヤ人さえ、イスラエルに対して批判しているくらいだ。
 ちょうど、在米中国人が中国の言論弾圧を批判したり、在米韓国人が産経新聞の加藤達也記者を韓国から出獄させない事を批判するような事がユダヤ民族には、起きているのが、現実だ。

 (ただし、中国の場合、は、在米中国人が中国を非難している現実は本当に、一部、あることだが、在米韓国人の場合は、韓国を批判するのは、今でも、滅多にない。例外的に、韓国国籍をやめてしまった元韓国人で、韓国を批判している人は、日本の大学やハワイ大学に、何人か、いますが)

 ところで、ここには、「弱い者の見方をしたい」「強くて不正な者に逆らいたい」という人間心理の傾向に潜む難しさがひそんでいる。

 これは、アメリカに、大都市の市民を無差別爆撃を受けた・・・ドイツのドレスデン、日本の大阪、東京、広島、長崎・・・他にも・・・日本、ドイツがそれでも、アメリカに、うらみつらみを、ほとんど言わず、(保守でさえ)アメリカと協調してきたからこそ、日本もドイツも、アメリカに追いつき追い越すくらいの経済発展を遂げた事実がある。

 これに比べて、いまだにうらみつらみを言っている韓国は、日本とドイツが基礎研究や高品質の製品分野で、アメリカを追い越したほどには、発展していない。

 これは、日本もドイツも共通の、アメリカにうらみつらみを言わなかった理由があって、日独両国の保守派は、ソ連、中国、北朝鮮、東ドイツに対する嫌悪がアメリカに対する嫌悪よりも、切実だったから。

 では、左翼も、さほどアメリカを非難しなかった理由はなにかと言うと、日本軍国主義を倒したのは、アメリカだから、ナチスをヒトラーを倒したのは、アメリカだから、というのがある。日本軍国主義を憎めば憎むほど、日本を倒したアメリカのありがたみが出てきて、あまり大空襲をうらむ気持ちもなくなる。ドイツの左翼も同じで、ナチズム、ホロコーストを憎めば、憎むほど、アメリカが終止符を打ってくれたということになり、アメリカのドレスデン大爆撃にうらみを言う気がうせてくる。

保守も左翼も、長い事、アメリカには、文句を言わないできたものだから、「日本よ町人国家になれ」と言う者さえ現れた。だが、日本人は武士の魂を描いた小説や映画が好きで、どうしても、町人が主人公の近松門左衛門の心中物語が好きになれない。あまりにめめしいくてげんなりするからだ。

 考えてみれば、ソ連はレニングラード戦で、ドイツ人にロシアの同胞をだいぶ殺されたが、東ドイツと仲良くやったのは、いがみあっていたら、資本主義国家群の西ドイツ、アメリカに対抗できないので、うらみを忘れるほかなかったからだ。そういう意味では、北朝鮮や日本嫌いの在日韓国人(在日と言っても、政治意識の高い人)も、意外と日本人すべてを毛嫌いしているわけではないことがわかる。朝日新聞、岩波書店系の学者、文化人、民主党、社民党などの政治家とは、仲がよいのである。これも、日本人すべてを嫌ったら、困った時の味方がいなくなるわけで、保険の意味がないわけではない。

 人間、本当に憎んだら、たとえば、(在特会みたいに)どこの民族、というだけで、憎むものだが、韓国人も北朝鮮も、一応、朝日新聞、岩波書店、そして、土井たか子のような政治家とは、仲良しだった。けっして、何?土井たか子?おまえも、日本人じゃないか、福島瑞穂?おまえも、野蛮なウェノムじゃないか、とは言わない。

 なぜか。なぜ、北朝鮮は土井たか子と仲良くし、韓国は、岡崎トミ子や福島瑞穂と、朝日新聞とは、仲良しだったか。在特会は、韓国全部を嫌いだというのか。

 なんのことはない。在特会は、別に、全部嫌いだと言っても、困ることはひとつもないし、損することもないからだ。ところが、北朝鮮、韓国は、一部日本人と仲良くしておけば、得することもある。
 経済援助、技術供与である。

 最初に戻って、「弱い者に味方する心理」で、むかし、新左翼、連合赤軍は、イスラエルでテロをやって、パレスチナに味方した。アメリカと同盟を結ぶ日本の自衛隊に武器を提供する三菱重工を爆破して、まきぞえを食って、腕をもがれた郵便局員もいた。

 福島瑞穂も岡崎トミ子も、辻本清美も、日本に比べてはるかに平均所得の低い、弱い韓国の味方をして、
日本政府を訴えましょう、がんばりましょう、とやった。

 しかし、考えてみれば、やれば、やるほど、逆効果なのである。効果は、弱い者の味方をすればするほど、弱い者が困る結果になる。
 というのは、今、イスラエルとパレスチナは、圧倒的にイスラエルのほうが軍事的にも経済的にも優位で、まず絶対に、イスラエルが敗けるということは、ありえない。
 ところが、こんぽイスラエルにうらみをつのらせれば、パレスチナの子どもたちが、かつての、日本の少年がそうだったように、ちょっとでも、大きくなったら、自爆テロしてやるということになる。そして、イスラエルにパレスチナ人が出稼ぎに行く方向性が途絶える。

 韓国も、同じで、日本植民地主義の悪を言ったはいいが、また、その正義に、善意の日本人が応援したはいいが、結果は、日本人観光客の減少と、新大久保の衰退なのである。

 これをよくかんがえなくちゃいけない。「弱い者に味方する。悪を糾弾する。それは、長い目で弱い者の、とりわけ、新しい世代の子どもたちの、得になるか?


 弱い者の味方も、時によけいなお世話になる場合がある。

ちなみに、日本のばりばりの左翼でベトナム反戦運動のリーダーだった鶴見俊輔は、アメリカ軍の占領時代に、毎年平均1000人の日本の婦女子が暴行された。と、書いた。
 さすが、晩年に筑紫哲也が知の巨人と褒め称えただけあって、朝日新聞よりも、鶴見俊輔は真実の記録を残したが、朝日新聞も、テレ朝、TBSも取り上げないので、日本人はたいてい、アメリカ映画のイメージから、自国の悪と戦う根は、いい人たちだと思っている。

 しかし、ニッポン日記で有名なマーク・ゲインは、焼け野原の東京を見渡して、6000人くらい死んだのだろう、と書いた。

 実際は、10万人の非戦闘員が犠牲になった。
 日本軍国主義は、まさか非戦闘員を何十万とい殺すのが戦争だとは思っていなかったフシがあるが、南京虐殺30万人とアメリカは言って、まるで、原爆はたいしたことないよ、といいたげな態度をとった。

 南京大虐殺のヒントになったのは、中国びいきのエドガー・スノーの説で、最初は、「南京までの進撃の途中に、虐殺30万人」だった。それが、いつのまにか、南京市内30万人説に変化した。