冬期講習にて。
数学の演習中…
ある女子は円の問題でパイをつけ忘れている。
ある男子は反比例の整数解問題で負のエリアのカウントが抜けている。
英語…
ある女子は名詞の前のaが抜けている。
ある男子はgood booksのgoodの訳が抜けている。
しょうがない…
また例のをやるか…
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解説にて。
「この問題。さっき色々見て回ったら、円なのにパイが抜けている人が何人かいたな。なぜこうなるのか。結論を言うと視野狭窄なんだ。自分のことしか考えていない。試験中、手元の問題と自分のことしか頭にないんだ。
オレが中学生のときはどう考えていたか。もしも円がらみの問題が出たら、問題作成者にありがとうと心の中で感謝した。三角錐じゃなくて円錐にしてくれてありがとうとね。なぜか。円なら一定数、パイをつけ忘れるバカがいるからな」
生徒らがハッとするように敢えてキツイ言葉を言いました。該当の生徒らは苦笑い。
(効いたか?もっとエグっていくぞ)
「オレが100点を取ることは当たり前だった。そんなものには興味がない。それよりも100点は自分だけでありたいと願った。みんなが100点を取ったらオレの価値がないからな。だから自分が何点取るかよりも、問題は難しけりゃ難しいほどいい、それが無理なら敵がコロコロと転がってくれるような問題が良かった。そういう問題かどうかがテストの唯一の楽しみだった」
(↑なんてひどいヤツだ!)
「このグラフの問題も。一次関数とか二次関数じゃなくて反比例か~!ありがとう!と心の中でほくそ笑んだ。なぜか。反比例なら双曲線のもう片方の存在を忘れるバカが一定数いるからね。試験中、『ああ、これはヤラかす奴がいるだろうなあ…バカが。フフフ』と心の中で笑った」
下唇を噛み、首を振る生徒数名。フフ、効いてる効いてる。
「英語でもま~だaをつけない。複数のsをつけない輩がま~だいる。ありえない。もしオレが万が一aをつけ忘れて次の行に行ったら、せき髄にビビッと電流が流れるね。
これは頭で考えるのではない。大脳を経由しない。条件反射。思うに、まだこのミスをやらかしている人は脊髄がヤバいんじゃないかな。塾じゃなくて神経外科に行った方がいいと思うね」
生徒が歯ぎしりしている。フフ、もっと、もっとだ!
「おいK!お前はいつも英語を書くのが速いな。速すぎて見ていて危なっかしいんだよ。まるで暴走特急。ブレーキの壊れたダンプカー。そんなんでは事故りまくりだ。安全に目的地には到着できない。馬だな馬。覆面をつけた競争馬。狭い檻に入れられて目の前のゲートが開いた瞬間に一目散に駆け出す馬。スピードを調整する騎手がいないとレースには勝てない。ひょっとしてお前の背中に小人が乗ってるのか?(生徒の背中をさする)うん、やっぱりいないか」
生徒らがゲラゲラ笑っている。背中をさすられた男子も大笑い。
「しっかしなぁ…オレって口悪いよなぁ。言っとくがこれはわざとだからな。お前たちの脳裏に焼き付いてほしくてあえてこうやってネチネチと罵倒してるんだ。悪人を演じるのはオレのような善人にとっては大変なことなのよ(生徒笑)
もうね、おかげで最近は家に帰ったあと自己嫌悪がひどくてさ。毎晩部屋の電気を消して暗闇で体育座りしてるから(生徒爆笑)」
「暴走特急の話。どうしてブレーキをかけながら問題を解かないかな。アクセルしか踏んでないから「○○化石」の○○に示準化石と書き、示準化石化石となっていることに気づかないし気づけないんだ。
思うに、やっぱり子供なんだな。ボールを追って公園から道路にはみ出す子供。ボールしか見えてない。そういうバカな子供がいるから、ボールを追う子供のイラストを空き地に立ててドライバーに注意喚起をするんだ。もっと落ち着きなさいよ。問題を解くときはアクセルも踏むけどブレーキも踏みながらやるんだよ。
例えば英語のリスニング。
最後の問題の音声が流れる。最後は簡単だからササっと答えを書いて次のページに行く人がほとんどだな。『もう一度繰り返します』の2回目なんかほぼ聞いちゃいない。まったく…何をそんなに焦っているのかね。そのあとの『これで、リスニング問題を終わります。次の問題に進んでください』のメッセージなんてだ~れも聞いちゃいない(笑)。でもそれでいい。
なぜならオレにとってその時間は試験中のお楽しみだからね。ほかの科目ではこうはいかない。ページをめくるタイミングは人それぞれだから。しかし英語のリスニングは違う。1回目の音声が終わって『次の問題に…』の手前で全員が一斉にページをめくる。
『2回目はいらない。今のうちに…』とでも思ってんだろうな。馬だよ馬。とにかくみんなそろってページをめくるあの音……一斉に駆け出すあの雰囲気。全員が全員同じ方向を向く下僕感。これが王にはたまらないんだ(生徒笑)。
ほら、はよ行けと。今のうちに進むがよいと。オレはあとからゆっくり始めるからどうぞお行きなさいと。その場その時を支配しているような気分だった。周囲の緊張を体全体に感じることができた。最高だった。
こういうと性格が悪いヤツのように聞こえるかもしれないな。しかしこれは戦略だから。視野狭窄に陥らないための戦略だ。平凡なミスを何度もやらかして、どうしてそういうことが起こるのかを徹底的に研究して、たどり着いたのが視野の狭さだった。
間違えないためには広く見渡すことだ。行間も奥行きも。奥行きというのは問題作成者の意向ね。2Dじゃなくて3Dで見渡すんだ。スポーツでもそうだろう、野球でもサッカーでもうまい人は自分の手元足元だけじゃなくてフィールド全体を体全体で感じている。
そのためには何をすればいいか。オレは一つの仮説を立てた。カメラは自分の目の位置ではダメなのだとね。理想は教室の天井。教室全体を広く見渡せるぐらいの位置がちょうどいい。そういう視点を持つために、試験前やリスニング直後はあえて周囲の人間観察、目じゃなくて五感での観察を行った。これがバッチリハマった。ゆとりが生まれ、落ち着いて問題に当たれた。ブレーキをかけながら高い集中力で問題が解けたんだ。
話しが長くなったでは次の問題を解説しよう」