私が不在の間に頼りになるウチのスタッフが毎日頑張ってくれています。ご苦労様です。
味方1割、監視9割のこのブログですが、またまた入院ネタになります。読みたくない人はどうぞ閉じてくださいね。
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看護士の話を。
手術・入院と聞いて、最初に思い浮かべるのは「痛くなければいいなあ」で、次に来るのが「優しい看護士さんだといいなあ」というのは決して自分だけではないと思う。
初日の担当看護士は20代男性だった。
別に女性の方が良かったというわけではない。昨夜のまさかの尿管取りもそうだけど、どちらかというと女性だと気を遣うことが多くて疲れる。普段の仕事でも女子生徒やお母さまはどこに地雷があるか分からないので話すときにかなり気を遣うが、その点、男子生徒はお構いなし。テメーコノヤロー!馬鹿かお前!とののしったりイジッたりしても向こうも笑うのでやりやすい。
なので看護士が男性だろうがどうということはないのだが、少し話して気になることが。一つ目は見た目。
彼は、体は筋肉質で髪はストレート、ヒゲあとの一つもない飯伏幸太似の中世的美少年で、女性患者にはモテるかもしれないが、萌え系美少女アニメと韓流男性アイドルを大の苦手とする私にとっては、ファーストコンタクトの時点で相容れないだろうなと予感。しかし、この後お世話になることも考えるといろいろコミュニケーションを取った方がいいので話を続けると、気になる点の二つ目が。
少しオネエ言葉なのである。
ここに置きますねぇ~、寒くはないですかぁ~、書いといてくださいねぇ~と語尾がかゆい点はまだいい。キツイのはそのあとに「ヨイショ」「ン、ショ」をつけることである。
ベッドをどかすときに使うのなら分かるが、彼はカルテを取り上げるときでも「じゃあこれもらいますねぇ~ヨイショ」、紙をめくるときも「じゃ次はこちらでぇーす、ンショ」、ボタンを押すときに「2階でーす、ヨイショ」という感じ。これが私的にはどうも…。一つ一つの語尾に体が切り刻まれるような感覚になるも、これは自分の性格が悪いのであって、彼が悪いわけでは決してない。いやあ~参ったなあ…
二日目、朝は例の男性看護士で、術後は女性になった。見た目はフツーだがなんかサバサバしていて、昨夜の尿管取りにしても、人をお嫁にいけない体にしておきながら、「取りますねー」の一言だけで、大丈夫ですか?痛いですか?のような心遣いや優しい笑顔がない。業務と言えばそれまでだが、こちらは体だけじゃなく、心も傷ついているのである。もう少し優しくしてくれても…と思うも仕方ないか。
次は水を飲めと言うが、尿管抜かれただけにすぐにひとまずトイレに駆け込んでオレのアレをチェックしたい。情けない声で「先にトイレに…」と言うと、「私は水を飲むところをチェックしないといけないんで。じゃああとで来ます」と憮然。しかもそのあと待てど暮らせど来ないし。
ほかにも、鼻血が止まらないのに時間だからと消灯になるわ(ベッドに明かりがあるのも点けていいのも知らなかった)
朝は、「薬を飲んでください、見ているので」と言われ、コップを持ってきていないことを言うと、「持ってないんですか~」と面倒くさそうな顔。「紙コップとかありませんか」と申し訳なさそうに聞くと、ため息を一つついた後、無造作に手元のタッパーを開ける。なんとそこには紙コップが40個ぐらい入っているじゃないの。その一つを取って「特別ですよ」とパス。
いや~やるねアンタ。これってもしやウワサの患者イジメの現場かい。オレはこれからアンタが来たらその上から強く出るからいいけど、元気も体力もないご老人はそうはいかないでしょ。
まったく…でもまああの人は夜勤明けだからこれで終わり。このあとは別の人だろうな…と思っていたら戸が開いた。3人目は20代ぐらいの女性看護士だった。
「おはよう、ございま~すえ…え~と、く、どうさん。ふふ、どう…ですか?痛みは…ない、ですか?」
うわ~!キター!たどたどしい〜!
「私、看護士の○○と申し、ます、ふふ」
看護士は首から下げた写真入りのネームを両手でかざして言った。その写真には無理に作ったこの子の緊張気味の笑顔があった。
うわ~!ウブーーーーー!
その看護士は、背は小さく、あか抜けない、なんとなく田舎っぽい感じながらも髪は後ろで丸く結って清潔感があり、有名人に例えるなら気の弱い石川佳純、いや石川佳純が気が弱いことはありえないから逆に想像し難いか。とにかくこのユルさ、手慣れていない感がおじさんにはたまらないのである。
「あ、血圧、いい、ですか?」
どうぞどうぞ!
「点滴、早く、しますね、フフ」
どうぞどうぞ!
「お熱は何度で、した?フフ」
どうぞどうぞ!
いや~、いいッ!この初々しさ!
計算ずく、論理ずくで生きてる自分にとってこういうのはオアシスだなあ。これで心の傷も癒えようというものだよ。
すると、急に看護士は私の手を取った。えっ!なに!?
「血圧が…ちょっと…。脈を、取ってもい…いいですか?」
ど、ど、ど、どうぞどうぞ!
「う~ん…ハイ、大丈夫です」
(いや、まだヤバいんじゃないのかな~?左手もどうぞどうぞ!)
看護婦は道具をしまって片づけを始めた。
(あ…コミュニケーション取らないと
何かないかな…もう20年以上も見知らぬ女性に話しかけたことなんてないからな…。え~と…どんなのあったっけ…)
支度が終わった看護婦が、点滴の袋をチェックしているときに思いついた。
そうだ!「この仕事は長いのか」だ!
これなら年齢とか出身とかよりもだいぶ手前のことなので失礼には当たらない。
歴が長かったら、「へ~それはそれは。じゃあもうベテランですね」
「そんなぁ」
短かったら、
「へ~それはそれは。でも優しいから人気出ますよ」
「そんなあ」
うん、これで行こう。
決心がつき、かすれる声で言った。
「あの~こちらは長いんですか?」
すると看護士は振り向いて言った。
「あ、この点滴はだいたい1時間ぐらいで終わります。ゆっくり休んでくださいね」
あ……は~い