只今中3に行っている入試予想模試。
生徒に採点済み答案を返していくと、ある女子が「ヤバい、ヤバい…」とポツリ。
(まあ確かに…。社会が40点台ではちょっとな…)
表情を変えないままどう返答しようか迷っていると、女子は机にぺたんと伏せて力なく言いました。
「先生、あたしヤバいですよね…ああ、もう落ちた…終わった…わたし…」
「大丈夫。この数字だけで判断しないで。ほら!間違ったところを…」
そう言って答案から女子の顔に視線を移すと…、
(うっ…目をしきりにパチパチさせている…泣いているのか?)
「ちょっと、ちょっと~。泣いてんの?」
「泣いてませんよ、ハハ…。でもウイニング(問題集)、もう何回も繰り返してやってるのに…」
確かに…。この子の努力は認める。
しかし、1個1個の理解に時間がかかるんだよな…。
次に理科を返却。
この子も含めてイオンが全然分かっていないのが一部いるようだ。
「ほらイオン!もう何回も解説しているけどもう一度行くぞ!まず電気分解からな!
①電離の式
②次に陰極と陽極でどんなことが起こっているのか
③最後に結局どのように分解されたのか。
電気分解はこの3つ!
これを記号を使ってきちんと記述できればOK(これが難しいが…)!じゃあよく聞けよ!」
もうこの1年で何回やったろう。
とにかくイオンについて、熱っぽく10分間のショートライブを行った。
もう過去に何回も書いたであろう板書をもう一度書き写す生徒たち。
その間に私は宣言した。
「このあと本当に分かったかテストをする」
「ええっ!」と先ほどの女子。
(ええ!じゃないだろ。来週入試だぞ?ありがたいでしょ!)
「イオンは絶対に入試に出るからね。絶対の絶対に出る。電気分解のほかに化学電池とか中和とかもあるけど、取りあえず電気分解は言えるようにして!5分後にテストをする」
普通、テストは翌週にするものだけど、さすがに今の今なら答えられるかも。
またできたことによって自信をつけさせたい。
CuCl2→Cu2++2Cl-・・・
ノートの1行目を何度も見る女子。
「ハイ、ではやるよ!では第一問。塩化銅の電離式を書いて」
ちょうど女子が見ていたものだ。ここはできてほしいが…
結果は不正解…。イオンは難しいよね…。
ふ~~っ…と大きくため息をつきそうになったがこらえた。
「じゃあ第2問。陰極ではどんな反応が起こっているか書いて」
****************
授業後―
出口まで一緒に連れ立って歩いた。
「あ~ダメだ…あたし…」
靴に履き変えながらつぶやく女子。
「大丈夫だから。今回のは難しかったよ。よく間違いを…」
女子が振り向いた。やはり目をパチパチさせている。
隣にいた女子大生講師の菊池さんに振った。
「ちょっと菊池さん、この子を抱きしめてやって」
「え?なんでですか?」
不思議そうな顔をしている菊池さんに、ほら…という感じで顎をしゃくる。(女子の顔を見れば分かるだろ!)
「ああ」と菊池さん。合点がいったようだ。
「でも今までそんなに接触がないのに私が抱きしめたら変ですよね。工藤先生の方がいいんじゃないですか?」
これに「ヤダ~!」と女子がすぐさま反応。両肩を抱えて身をこわばらせた。「キモイ~」
「バカ!オレが抱きしめられないから先生に頼んでるんでしょ!それにキモイとはなんだ!こっちからお断りだ。誰がお前なんかハグするかよ」
一緒にいた友達の女子がゲラゲラ笑っている。先生も女子生徒も大笑い。
(ふ~…まったく…自分はいつもこんな役回りだ…。まあこれでネガティブじゃなくなればいいんだけど…)
「わかったよ。次回な」
「え?」
「次回、女装してくるから」
「え?」「先生が?」
「うん。だって泣いている人を放っておけないだろ」
「アハハハ!」「なんなのそれ~」
「オレだってイヤだけどね。仕方ない…。次回抱きしめてやるから待ってろな」
「アハハハ!」「ハハハ!結構です!」
****************
エレファントカシマシ「悲しみの果て」
悲しみの果てに
何があるかなんて
オレは知らない
見たこともない
ただあなたの顔が
浮かんで消えるだろう
涙のあとには
笑いがあるはずさ
誰かが言ってた
本当なんだろう
・・・
