「先生、合唱コンクール見に来る?」

「う~ん…まあ時間の都合がつけばね…」

 

適当に答えた後に思う。もうそんな季節なのか…。

 

それにしても合唱コンクール。自分的にはなんかイマイチ苦手だ。

 

中2のとき、放課後の大地讃頌のクラス練習で「工藤、声が出てない!」と女リーダー小野寺智子に指摘され、そこから机を8個並べて寝かされ、両手両足と頭を複数の女子に押さえつけられて身動きが取れなくなったところで小野寺がバスケットボールを持ってきて私の腹にドスンドスンと打ちつける。「声は腹から出さないとダメなの。さあ、歌って!」

 

「この状態でか?」

「そう!早く歌うの!」

 

「は…母…な~る~…だいち~の……ゲホッ!」

女達「ワハハハハ!」

 

今の時代なら一発でいじめ認定されたであろうその練習がトラウマになったのかもしれない。それに、みんなで感動して涙を流すイベントというのが自分的にはどうにもムズがゆい。

 

そんなことを思い出していたら、周囲の中1生たちの話題は指揮者になれなかったという話で持ち切りになっていた。聞けば指揮者役は争奪戦だったらしい。

 

「なんでそんなにみんな指揮者をやりたいの?」

純粋な疑問をぶつけたら方々から思わぬ答えが返ってきた。

 

「だって評価が上がるじゃないですか」

 

出た~ッ!また評価ッ!

 

男子A「えっ?上がるの?」

男子B「うん。ポイントになるらしいよ」

男子C「じゃあ僕も手を挙げればよかった」

男子D「先生の評価は大事だからね」

 

私は聞いているうちにとうとう居ても立ってもいられなくなりました。

 

「おいおいオーイ!

お前ら。そんな人生楽しいか?

やりたいから手を挙げる。興味ないから手を挙げない。それでいいだろ」

 

「ええ…でも~。評価が…」

「指揮者になれなくても手は挙げた方が意欲的に見えますよね」

 

うわ~~!この会社員的思考よ!

まだ12歳だよね!

今は何も考えず自分の思った通りに生きる時間だろ!

 

まったく…。

今度、タカトシ漫才にネタを提供しようかな。

「先生の評価が…」

「大人か!(バシッ)」

「先生に意欲を見せようかと…」

「大人か!(バシッ)」って。笑い話だよホント。

 

「いや~…先生の目なんてどうでもいいんじゃない?自分の思う通りに楽しく生きようよ。まだ12歳だよ?」

「でも~…」

 

「だからこその校内テスト。テストで有無を言わせぬ点数を取ればいいんだよ。もっともテストもボロボロだったら何してんの?って話だけどさ」

「・・・・・・」

 

「テストも自信なしか(笑)

だったらとにかく何かに一生懸命熱中しな。

他人の目とか気にせずに、自分の思う道をとことんさ。

そうすれば必ず道は開けるから。

そしてそういう人の評価は自然と高くなるから」

 

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(おまけ)

毎日熱心に自習に励む仙台三高のある男子、この日も19時に来て22時過ぎまでやってきました。

 

(↓生徒みんな帰った後に私に数学の質問)

 

今度の夏期講習では、数学の先取りをオレが教える。メッチャタメになること請け合いだし、数学の先取りをやっとけば、夏以降、他の古典とか英語とか勉強時間がかかる科目に手を回せるからかなり有益だ、と滅多にしない宣伝をした後に近況を聞くと、

 

SSHは楽しい、最近だと校舎の屋上から卵を投げる(割らないように落とす)のが面白い、この学校に入ってよかったと言うので、三高理数科一押しの私にとってもうれしいセリフ。

 

しかし、ただ一つ問題点があるんですよねと男子。

「それはなに?」

 

「校内テストの順位、三者面談で言われるんスよ。親に筒抜けになるじゃないですか(笑)」

 

「バカ!それは問題点じゃなくていいことだろ(笑)」