秋が来て | KUDANZササキゲン「散文と音楽」

KUDANZササキゲン「散文と音楽」

ササキゲンのソロプロジェクト KUDANZ(クダンズ)の日記


秋が来て
もうそろそろ灯油を買う季節だなぁと
煙草を吸いながら その澄んだ空気を煙と一緒に吸い込んで吐き出した

その 夏よりも長く続く副流煙の先には
幾つかの星が瞬いていて
新聞屋さんに向かう配達員の人達が家の脇を自転車で通り過ぎていく


今年の肘折国際音楽祭は 冬の開催が中止となり
はじめての秋開催となった
このイベントは 活動休止していた初年度を除いて
ずっと参加させてもらっていて
出演者ではあるものの 裏方的な要素も少しあって
今年はライブ配信時に 水害やコロナで窮地に立たされている肘折に少しでも多くの方が興味を持ってもらえるような映像を作ってほしいとの事で
カメラマンと共に四日間の取材を行い
映像内の楽曲も制作した

今までは演者として 街の人達と関わるだけだったのが
急にインタビューをしたり 取材のアポイントを取ったりするのだから なんだか自分の中でスタンスがちぐはぐになった瞬間もあったけど
現地の皆さんとコミュニケーションを取る中で
その為人や 町に対する思い それぞれの仕事に対する思いを伺い知る事が出来て より一層この町のために 良いものを作り 良いライブをして 良いイベントにしなくてはと思った

代々受け継がれてきた肘折の様々な業種の方々の歴史に触れ 嫁いできた女性や 婿に入った男性の
それぞれの物語にとても感銘を受けた

撮影にご協力頂いた上ノ豆腐店の横山さんや
鈴木こけし店の鈴木さんは
自分達の代で その仕事が終わる事を受け入れて
日々を積み重ねて仕事に向かっている

その仕事をしている姿を見ているだけで
胸にくるものが沢山あったし
若い人たちがその映像を見て 
何かを感じて現地に会いに赴いてくれる事を 
心のどこかで願いながら 当日まで自分は自分の準備を続けた


家でどんなに歌をうたっていても たった一回の人前での演奏
それに勝るものはない
自分は常にライブを続ける事で ライブを磨いてきた
それが無くなり オンライン配信でのライブを何本か続けた中で 少しずつ自分の歌の筋肉や 心構えを思い出していったように思う

当日は 朝早く出て自分の運転で会場に入り
出番も最初だったので 身体の準備をたくさんして臨んだ甲斐もあり
リラックスして 伸び伸びと歌う事が出来た
何より嬉しかった事は 
取材でお世話になった現地の方達に 感謝の意味も込めて
数名ではありますが 観覧にご招待させて頂いて
歌を聴いて頂けた事

素性も知らぬ金髪の若者が 急に取材させてくれと伺って
それに対して優しく対応してくださったこと
本当に感謝しています

蕎麦処寿屋の早坂さん
ほていや 斉藤さん
カネヤマ商店須藤さん
村井六助の若旦那
つたや肘折ホテルの柿崎さん

特にこの5名の方には大変お世話になりました
また 雪深い冬にでも 今度はプライベートでゆっくりと伺いたいと思います

夜に居酒屋で 旅人さんとご飯食べようという事になり
そこに phewさんと寺尾さんも合流してくれて
色んな話が出来て楽しかったです
途中カネヤマ商店の須藤さんと村井六助の若旦那も混ざって 現地の人達と演者とで酒を飲めた事も
本当に良かったなぁと思います

旅人さんと若旦那が同じ高知県民だと分かった時に
二人が歌い始めた高知民謡は とても贅沢で
今回のハイライトとして胸に残っています
こういう なんとも言えないかけがえのない時間をたくさん作れたらいいですね
多分 これかな




自分は音楽が好きで 表現をする事も好きです
僕の好きだなと思う人たちはみな 素直で
他者を気遣う事が出来て 何よりさまざまな事に対し寛容で だけど 苦しんでる誰かのために怒ったり
その表現をもって救い出そうと本気で立ち向かう事が出来ます

年齢も性別も立場も関係なく
自分が分からないものを小馬鹿にしたり 
知識をひけらかして他者を嘲笑したりしない
丁寧で 言葉一つ一つをとても大事にしている
誰かの事を本当に想う事ができる

自分もそうあれる様 日々丁寧に音楽と
一人一人と向き合いたいなと思います

ライブが幾つか決まっていて 嬉しいです
ひとつひとつ 積み重ねていきます