心が折れそうになったときのプレイリスト 第161曲
<タイトル>
ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 作品31-2 「テンペスト」
<作曲者>
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
<おすすめ音源>
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
<解説>
作曲された時期としてはちょうど、ベートーヴェンが難聴に苛まれはじめたときであり、有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」が書かれたのもこのころです。
友人に当てた手紙には、「自分はこれまでの作品に満足していない。新たな道を進むつもりだ」との趣旨がつづられています。
サブタイトルの由来については、ベートーヴェンの弟子であるアントン・シントラーが、この曲のイメージするところを師にたずねたところ、「シェイクスピアの『テンペスト』を読め」と語ったからだとか。
シントラーは「捏造魔」として知られており、師ベートーヴェンを英雄化するため、けっこうな数の偽エピソードを作っています。
この事実は本人による述懐によって明らかになっているのですが、この「テンペスト」の由来もあやしいものです。
しかしながら、「テンペスト」は「嵐」の意味であり、このソナタの曲調はいかにも「嵐」っぽいですから、ある意味ではふさわしいのかもしれません。
こういうことにうるさいファンも多いようですが。
全3楽章のすべてがソナタ形式で書かれているのが興味深いですし、単純にかっこいい音楽です。
天気が悪いときにかけると、なかなかマッチします。
おすすめしたピアニストは、旧ソ連オデッサ出身で、天才の名をほしいままにしたリヒテルです。
数種類の録音がありますが、「大木をなぎ倒すよう」と揶揄された彼の芸風のとおり、どれもパワフルで聴きごたえがあります。
映像のほうはバレンボイムのライブ録音で、ユーロアーツの公式チャンネルです。
彼らしい端正な音作りに好感が持てる名演になります。
嵐の晩などにかけてみてはいかがでしょうか。