南州翁遺訓
児孫(じそん)のために美田(びでん)を買わず(第5条より)
この文言は「子どもが堕落してしまうので財産は残さない方が良い」という意味です。南洲翁のとても有名な言葉ですが、元々は次のような文章から抜粋されたものです。
「何度もつらく苦しい経験をしたからこそ志が確かなものになる。男に生まれたからには冒険することを望み、安全だけを願ってひたすら生きることは恥じるべきである。後世まで伝えたい私の遺訓を世の人は知っているだろうか?」
この直後に主題の文言が来ます。そしてこの後の南洲翁の決意として「もしこの言葉に反する事があったら言行不一致と見なして見捨てても良い」と結んでいます。
南洲翁は二度にわたる島流しなど多くの苦難に遭遇しました。常に死と隣り合わせの状況で、生きることの厳しさや大切さを痛感したことでしょう。過酷な環境の中で、人生をどう全うするか。そのための信念がこの文言に込められています。
この考え方は現代を生きる私たちにも当てはまります。人間誰もが苦難は避けたいものです。しかし、苦しい状況だからこそ見えて来ることもあります。
また、それは自己を見つめ直す絶好のチャンスでもあります。楽な道ばかりでなく時にはいばらの道を自ら選択することが志を成すためには大切だと、南洲翁は説いているのです。