妊婦さんてやっぱりお腹にもう一人生命があるわけですから,体の中のバランスも変わるわけです.病棟で私が関わった出産は,外来で上級医の先生が診断をつけてくれているので何のためらいもなく,当たり前のように治療にはいっていくのですが,これからはそれを見つけていく立場ですから役目は重大です.
まずは採血変化からおさらいしなくちゃと本を片っ端から広げてみました.国家試験のときは覚えていたのに現場に入って曖昧にやっていた自分が情けないです.
臨床検査は個人差があり,体の大きさ,性差で大きく変動があります.
じゃあ妊婦さんはどうなんでしょう.簡単ですが,これだけは見逃さないように記載しようと思います.
血球系
赤血球,Ht,Hbは低下します.血球自体(溶質)は増えているのですが,血漿(溶媒)の量の増加率がより多いためです.実は赤ちゃんは多血症ぎみなんです.そうじゃないと小さくうまれてきたりします.白血球はちょい増加します.
生化学
基本は下がります.なぜなら循環血漿量が増加したため溶質濃度がさがるためを思っています.それを踏まえてみていくと
腎機能の正常値は低下します.(BUN 5-20→<12,Cre 0.8-1.4→0.3-0.8)なので初期,軽症変化を見逃すおそれがあります.でも循環血漿量が増えるわけですから腎血流量も増えるのでクリアランスは増えます.
糖代謝
HbA1c,フルクトサミンも非妊時に比べ正常値が低いです.
胎児構造異常を妊娠初期(期間形成期)の糖代謝異常が影響を与えることがわかっています.家族歴・既往歴・妊娠歴時の異常を確認しておきましょう.
検尿で普段は陰性の尿糖も20%の妊婦において陽性になるといわれています.腎血流量が増えるからといわれていますが,経過観察が必要です.
脂質
週数に応じて増加するようです.
ALP,LAPは増えます.(胎盤によるえいきょうでしょうか)
GOT,GPTは変わりません.
尿酸・血清蛋白,アルブミンは下がります.
産後に注意すること
① 甲状腺機能 橋本病は産後1-3ヶ月,バセドー病は産後3-6ヶ月から増悪をみられることがあります.→まだ勉強不足なので後日妊娠合併症ブログで取り上げます.
こないだバイトに行った小さな病院で甲状腺疾患の人でクリーゼになった人がいたそうです.まれなことですが,すぐ対応できるようにしないと怖いですよね.
② 血圧 レニン,アルドステロンともに妊娠時は上昇します.(レニン 0.1-2ng/ml/hr→8-15,アルドステロン <18ng/dl→30前後)でも生理的変化としては妊娠初期から血圧は軽度低下を認めます.循環血漿量異常に血管抵抗が減弱するためです.産後も高血圧が続く場合は原疾患の精査が必要です.
また次回分娩の際に注意すること
① 赤ちゃんが小さかった場合
母体要因として抗リン脂質抗体,抗核抗体など免疫関連検査,凝固線溶系検査
胎児要因として染色体異常に気をつけましょう
まれではありますがALP低値の時には低フォスファターゼ症も注意しましょう.
② 羊水が多かった場合
筋緊張性ディストロフィーや母体糖代謝異常も精査しましょう.
③ 赤ちゃんが大きかった場合
糖代謝異常を注意しましょう
④ 赤ちゃんが徐脈だった場合
抗SSA抗体などが影響を与える場合があります.
⑤ 産後うつ病になった場合
甲状腺機能低下症を見逃さないようにしましょう.
今回勉強した本にいい言葉がありました.
「妊娠は負荷試験!」ごもっともです.でもそれに気づいてあげれるのは僕たち医者の役目なんですよね.
本当に本を読んでいてもわからないことがいっぱいです.たぶん医者を続ける限り日々勉強なんだと思います.
息抜きは得意なほうなんで,めげずに毎日賢くなっていく予定です.
他業種の人にも,受験生の小中高校生たちにも負けないようにがんばろうと思う今日この頃です.