国産フルレンジ試聴会   亀戸 クレシェンド | 音楽と何でも手作りの部屋 Room314

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江東区は亀戸にあります 「珈琲と音楽 クレシェンド」 さんです。  → http://www8.ocn.ne.jp/~audiofan/



本日は 「国産フルレンジ試聴会」 があると言うことでやってきました。



これは国産にこだわった9種類の6.5インチと8インチの鳴き比べを開催するとのことで、それも往年

のフルレンジの名器ばかりで...。 



そのラインアップは、6.5インチがFR-16A、P-610A、6P-HF1、PIM-16A、AR-160s (BETA-6のそっくりさん)

8インチが20PW09、FLAT-8、PE-20、20PW56 となっています。



フルレンジファンなら、型番を見ただけでもメーカー名を言わなくても分かってしまいますね。


流石にこれだけありますと、当然ながら全部を使ったことも無いし試聴したことも無いユニットも含まれ

ていますので、これらが一同に聴けると言うことで大変楽しみにしていたものなのです。



さあ、それでは中に入って見ましょう。





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こちらは真空管アンプも店内に沢山あります。 

多分、今後使い続けても使い切れないと思われる程あります。


手前に見えるアンプが今回、メインで駆動する50のプッシュプルです。

モノ構成で、出力トランスがLUXのSZ36型、電源トランスはモノアンプにしてはかなり大型のもの

が使われています。

この位の電源トランスですと朝から晩まで使っても発熱は僅かなもので業務用としても余裕タップリで

す。


無帰還アンプのようですからDFは2位だろうと思われますので、使用するスピーカーや楽曲によっては

若干低音がもたつくかも知れません。


しかしながら、真空管全盛期に作られたスピーカーは真空管アンプで駆動するのが一番良いのです。




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試聴会は13:00からでしたが、少し遅れましたので会は既に進行しておりました。



使用するボックスは230リットルの密閉箱と120リットルのバスレフの箱となります。


使用するユニットによって2つのボックスを切替えます。




ユニットはサブバッフル交換方式です。


今回のためにバッフルも製作されているようですから、この試聴会への意気込みもかなりのものです。



写真は、230リットルの密閉箱に入れたパイオニアのPIM-16Aの試聴中です。


このユニットはパイオニアのフルレンジの中で最も音の良いと思っているもので、個人的には同社のPE

-16より好みでコストパーフォマンスの良い元気な音を聴かせてくれました。


ロクハンから始まり、1ユニットあたり5曲程で試聴を行います。




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サブバッフルに取り付けられたP610と6P-HF1です。

その側には好きな人が見れば分かってしまうというホーンが何気なく並んでおります。


何と、デラリバのギターアンプまで置いてある店でもあるのです。




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ダイアトーンのP-610(初期型)についてはもうあえて言うまでもなくフルレンジの名器として知ら

れておりますが、今回の目玉と言うか、アッと驚く穴馬的存在のユニットがコレ。


アシダヴォックスの6PHF-1です。


このスピーカーは、あの長岡鉄男氏もコストパーフォマンスの高いユニットとして製作記事に良く取り上

げておりました。

MRコーンと称する薄いコーン紙で作られており、そのせいかマグネットも大きくなくスピーカーユニッ

トの重量も750gと軽量。  何とも非力なユニットで、見た目は昔の安物のラジオ用のスピーカーに

も見える。


このスピーカーをうまく鳴らすにはコーンが薄く背圧が掛けられないので密閉型なら極力大きい箱に入れ

るか、簡単に済ますならこれも大きな平面バッフルとするか、はたまた後面開放型にするかでバスレフ、

バックロードには向きそうに無い。



このユニットは歴史が古く1960年代頃に発売され、価格は極めて安く70年代でも1000~120

0円程度のもので、これが80年代前半まで売られていましたので超ロングセラーな商品でもあります。


ローコストユニット代名詞みたいな感じですが、このユニットは今まで聴いたことがなかったのでこれが

どんな感じのものか今回の一番の楽しみでもありました....が、結果は極めて良い方向に裏切られま

した。



恐らく、今回聴いた中ではダントツに一番であろうと思われます。


価格と音の違いのギャップがこれ程大きいユニットも珍しい。 フルレンジは自然な再生音が特徴です

が、この自然と言う言葉がピッタリなユニットでP-610も真っ青と言う感じだろうか。

その驚きは230リットルのBOXに入った6PHF-1の音を聴くだけでも参加した甲斐が十分あると

言う程のものだった。 


クラシックには最適で大人しめな音と言うより、これは歪み感が少ないユニットなんだろうと思われる感

じです。


ポップス系ではコーン紙が軽いせいか、バックロードホーンのようなハイスピードな音が出てきます。

ボーカルは軽く前に良く出てきて、ダイナミックにして繊細な音で大変魅力的です。





但し、箱の大きさが問題になり小さめでは難しそうなのが難点でこれがマイナスポイントとなってしまい

ます。

コーン紙も薄く切れ易いようですのでこれも難点ですが、その前にもう製造していないことの方が問題が

大きいですが。


アシダヴォックスは会社自体がまだ存在していますので是非、再生産して頂きたいユニットの一つだと思

いました。




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さて、ロクハンのどん尻はAR-160s(BETA6)です。

コーラルのBETAは8インチと10インチのユニットが存在しており、このBETA6は国内には存在

していません。


輸出用に作られたものとしてBETA6があるだけですのでこれはレアー中のレアー。

AR-160sとなっていますが多分、OEM用として作られたものだろうと思われます。



外観も単品のものより仕上げが粗雑ですし、コーン紙も薄緑から黒色となっています。 

BETA8と10は中央に星型デフューザーが付いていますが、BETA6はメタルキャップとなってい

ます。

これはシステム組込み用で単品売りは無かったと思われます。


そのようなことから、このユニットの音は殆どの人が聴いたことが無いと思います。



元々BETAは少しクセのある音が特徴ですが、このBETA6には全くそれが感じられない。

兄貴分のBETA8と10の前で少々大人しくなっているという感じだろうか。


耐入力も大きく(30W)パワーも入りますので、大音量で鳴らした方が良い結果が得られそう。

このBETA6はバックロードで聴いてみたい。 

やはりBETAはバックロード向きのユニットだろうと思うのです。

BETA6にも伝統的なコーラルサウンドは生きているようでこれも大変魅力的なスピーカーだと思いま

した。




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さてBETA6の次からは8インチユニットの試聴です。


トップバッターはゲンコツの愛称で呼ばれるナショナルの20PW09です。 

これは名器ですのでここで書くまでも無いですし、ここでも安定した聴き慣れた音を出してくれます。


16cmの後から聴きますと、やはり20cmの方が音には余裕が出てくるようです。




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今回の試聴会には約30名ほどの参加者がありました。

これだけの人数になりますと人による吸音効果も出てきますので、音圧とか低音の出具合も普段とかなり

変わってくるだろうと思われます。  曲によっては、恐らく影響を受けているだろうと感じたところも

ありましたから。

 


思っている以上に盛大な試聴会となったようです。 しかし、参加者の年齢層の高さも気になります

が....。




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次はコーラルのFLAT8、これも御馴染みのコーラルトーンで特にFLATはクセの無い音を出します

が、結構元気一杯に鳴ってくれたようです。 

このユニットは長く聴くと少し物足りなさを感じるのですが、聴いた曲も少ないせいかそのようなことも

無くまずまずでした。




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FLAT8の後はパイオニアのPE-20でしたが、どうも接続違いでFLAT8の音を続けて聴いてし

まったようです。

PE-20にしては現代的な音の印象なので、PE-20は見直さなければいかんなと思っていたら 「な

るほどね」 と言う感じでした。


でもって、急遽PE-20に接続し直しです。

PE-20は設計が古いと言うか少々ナローな感じですので、これは期待を裏切ることなくやはりそのよ

うな音を出してくれました。


改めて、パイオニアはPIM-16Aが一番良いと思いましたね。




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8インチのどん尻は松下の20PW56です。

これはゲンコツの後期型ですが、同じシリーズの20PW09との違いが試聴ポイントとなります。



しかし、試聴してビックリ。

とても同シリーズのゲンコツとはとても思えない。


20PW09も名器として安定した音を出しますが、これは別物で出てくる音はモニター的な現代型ス

ピーカーユニットと言う印象です。


一聴した限りでは8インチユニットの中では多分これがベストでしょう。 


良いユニットです。

頭の中では20PW09の方が音が良いだろうと思っていただけにこれは意外でしたね。





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これで長時間の全ユニットの試聴が終わりましたが最後まで十分に楽しめました。




全ユニットの中でベスト1はアシダヴォックスの6PHF-1としたいが試聴条件が一般家庭では少々厳

しいので、ここは松下の20PW56としたい。

但し、もう一度聴きたいユニットと言われれば黙って6PHF-1と答えるだろう。 知る限り最強のロ

クハンだと思う。



スピーカーユニット選びと言うものは毎度ながら難しい。

こういう試聴会でも無い限りとても雑誌やカタログ情報だけでは選べない。


何しろ、値段と外観と先入観と出てくる音は全く一致しないのですから、これに個人の趣味趣向が加わっ

てと、まあ大変な話ですよ。


だからスピーカー作りはアンプ作りより面白いと言えるのですが、沢山作っても置き場に困る状況にもな

る厄介者でもあるのです。



そんなことで今回の企画は面白かった。

最後は懇親会でワイワイガヤガヤと夜遅くまで十分楽しめました。