これを「cover」というには凄すぎる…… | 多弦Gutarist Tominha の部屋

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10弦・11弦という普通派では見ることがない多弦なギターを弾くギタリストTomonari.Cのブログ。音楽はもちろん、映画やら小説やら政治やら、思いつくままに書き連ねています。

  2014年後期のNHK朝ドラ『マッサン』の主題歌を担当したあたりから、中島みゆきさんへの注目は本格的に再上昇したようである。その年には再び「紅白」にも出たし、若いアーティストのトリビュートやカバーも相次いでいるらしい。
 そんなこんなで先ごろNHKのBSで特番が組まれた。僕は見逃したのだが、複数のFB友だちが見ていて絶賛していた。その番組の影響か、こんどはYoutubeの方で、みゆきさんの動画がいっぺんに増えた。同時にその番組で放送されたらしいいろんなアーティストのカバー集もアップされている。BSの特番でも何人かのアーティストがカバーを披露しており、その出来栄えは残念ながらご本人には遥かに及ばなかったらしい。果たして、この人の場合はどうなのだろうか。番組を見ていない僕は、彼女のこの唄が放映されたかどうかも知らないし、評判も届いていない。
 正直なところ、評価に困るパフォーマンスである。人によって評価は相当異なるだろう。いやだと思う人は徹底的にいやだろうし、逆に中島みゆきさんの熱烈なファンではなく、この人のことをかっている人は絶賛するのかもしれない。僕も複雑な感想を持った。正直、これはもはや「唄としての魅力」とか「歌唱力」とかいう評価軸を超越しているとしか言いようがない。あの偉大なるシャンソン歌手の生涯を描いた舞台で主役を務めるだけあって、彼女の唄はみゆきさん本人よりもドラマティックでさえある。しかし、それは普通の歌手が作りあげるドラマ性とは違う。彼女はこの唄の世界に完全に入りこみ、唄の世界を架空のお芝居に仕立て上げ、そのヒロインを演じているのだ。
 もともとこの唄はみゆきさんがデビューしたての頃のもの。おどろおどろしい表現ではあるが、所詮は20代の女性が背伸びをして「身の程知らずの恋」をしたものの、競争相手にさえしてもらえなかった、という「若気の至り」の失恋歌である。泣いて叫んで恨んでみても、そこにはだからまだまだ余裕というか、初々しさが残っている。
 しかし、そろそろ60歳にならんとする彼女が、全身全霊を賭けて歌うとなるとそうはいかない。そこに浮かび上がって情念は限りなく深く、暗い。たとえていえばそれは、何十年と尽くしてきた男から「真実の愛情」を得ることができなかった女性の、底知れない悲しみと絶望である。泣きながら唄う彼女から立ち上ってくるものはもはや男への感情ではない。そんな人生を選んでしまった自分への悔恨、決して誰にも委ねることのできない自己への不信と憐憫である。「シャンソンは一幕物のドラマ」だというが、それを真実やってのける彼女は、やはり日本を代表する大女優だと改めて思った。
ということで、聞きたい人はどうぞ。大竹しのぶによる『化粧』です。
「化粧」大竹しのぶ 作詞作曲:中島みゆき 歌縁 東京公演 再生リストはこちら https://www.youtube.com/watch?v=lscw4U_XqZo&list=PLfRhGVvjG0dGVjeJ9lM6tUEJ-