選挙関連でもう一つ。
今日の朝刊に僕が立ち会ったふじみ野市での開票作業の遅れを奉じた記事が載った。ただし埼玉地方版なので、全国の人には目に触れないのだろうが、結構大きな記事である。それによると、開票作業の遅れという点ではもう一つ越谷市でも大幅な遅れがあったようだ。こちらは「疑問票」の扱いだったという。
具体的なことはわからないので越谷のケースに論評はできないが、この「疑問票」の扱いというのは、非常に独特な基準でできている、というのを今回初めて知った。そこからすると次のようなことが問題になる。
ひとつは「誤記」の扱い。
選管は記事にもあるようにできるだけ「無効票」を減らそうと、かなりの誤記でも特定できるならば、その票を生かそうとする。政党名であれば、ひらがなで「じみ」は自民党、「こめと」あるいは「こめ」であれば「公明党」といった具合である。漢字の誤記も特定に支障がなければ全部認める。特に今回は「党」という字を「堂」と書いた人が多かったが全部スルーで有効票。逆にちゃんと漢字で書いてあっても「民社党」というのはどの政党か特定できないのでだめなのである。こういう独特な基準を知らないで、ただ杓子定規に「誤記は無効」と思っていると話が合わないことになる。
もうひとつは、この「疑問票」をあげるタイミングだ。市の職員は県の選管から送られてくる分厚いマニュアルを見ながら、「誤記票」を点検し、自分でまずその扱いを決める。そして、必要とあれば選管職員に合意を求め、そこで立会人に説明と確認を求める必要があると思われた票のみが「疑問票」としてあげられていくことになる。
つまり、立会人が見ることになる「誤記票」というのはかならずしも全部ではなく、マニュアルに基づいて職員がスルーして、300票とか500票ずつまとめられた票の束に入っている可能性もある。
越谷で問題になったのは自民党候補の「古川」氏の名前が「吉川」となっていたということらしいのだが、「立会人の並ぶ机のわきにはうずたかく積まれた票の山。手持ちぶさたの職員」という報道からすると、この「誤記票」は立会人がたまたま票の束を点検していて見つけたもののようだ。つまり、僕たちが比例の票を点検していたら、別の候補者の票が混じっていたのと似たようなケースであろうと推測される。そうすると、なんでもめたのかがわかる。
つまり、立会人からすると選挙区で一人しかいない自民党の候補者の名前を書き間違えるというのは常識的にいって考えられない。無効にするか少なくとも疑問票として立会人の確認を求めるべきである、にもかかわらず選管はその手続きを怠った。だから、こうして自分たちが「吉川」と表示された「古川票」を見つけたことになった。
選管は「吉川」も「古川票」でよいと「その時」に説明するだろうが、時は終了直前である。すでに「吉川票」というのがもっとたくさん束の中に紛れていた可能性は高い。あるいは別の、もっと明確な「無効」とするべき票もあったかもしれない、という疑問も生じる。「吉川」という「誤記票」が無効だと思う人なら、すべての古川票を見直すべきだと主張するだろう。そこまで思わない人でも、なぜ「吉川」という票が出てきた段階で立会人に確認を求めなかったか疑問に思うだろう。問題は「説明不足」だけではない、開票作業全体の信用性が問われているのである。
この記事を書いた記者は「昨年の衆院選の開票が遅れたのも一部の立会人が原因」とあたかも誰か一人が「文句」をいったから開票が遅れたように書いてあり、比例区については「……さらに時間がかかった。個人名の最後に『さん』や『です』『君へ』と書かれたものは、有効か無効か? 政党名は『生活』だが、「生活第一」や「国民の生活」は?そんな疑問が出るたびに責任担当者が立会人のテーブルに行き、1票ずつ丁寧に説明を繰り返す」とある。その後には「立会人にていねいに説明するといつもこうなる」との選管の談話もある。「悪いのは立会人」と言わんばかりである。しかし、同じようなことはぼくらもやった。票数が確定するまで待たされたそのあとにである。疑問票がまとめておいてあるテーブルに行って、それぞれについての説明を聞き、有効無効を確認した。別に大した時間だったとは思えない。問題はここでも「いつどうやってこの点検がやられたのか」である。
「作業が中断」という表現が記事にはあるので、やはりこれも途中で確認をやりなおしたのではないだろうか。そうでないとしても、この時点では選管と立会人の間に信頼関係がなくなっていたのだと思われる。「説明に時間がかかる」のはそのせいだろう。
どんな票を疑問票とするのかは実は恣意的である。県のマニュアルは一つの目安であるがそれ以上ではない。だから、この問題は「吉川票」を「疑問票」にし、他の「比例票」も「疑わしいもの」は職員や選管が判断しないでそのまま残しておけば済んだことである、と僕は思う。それでも疑問はのこるだろうし、「信用できない」といってしまえばそれまでである。しかし、立会人というのはそれぞれの政党から依頼されている人たちだ。利害関係もばらばらなのだから、一部の人の「異議申し立て」があまりに非常識であるなら、そんな意見がとおるとは思わない。
この記事では、こうした時間的経緯、手続き的齟齬の有無がなにも書かれていない。立会人の言い分も「誤記」についてのみだ。しかし、それだけでこんなに時間がかかるとはおもえない。だから僕は自分の経験から推測でこのブログを書いている。煎じつめていうと、選管は「「説明した」というが、それは単なる「事後承諾」だったのではないか、だからもめたのでは、と。もし事情がわかる人がいれば、誤りも含めて指摘してもらいたいと思う。
最後に、こんなことが起こるのも、県選管が経費節減のために「開票終了時間の短縮」ばかりをいうからではないかという疑問を。
この記事では二つの市でこんなに開票が遅れたのは前代未聞である、越谷は特に早大の研究所が行った調査で全国ワースト一位だったのにまたこんなことになった、といっている。しかし、問題は果たして「開票の遅れ」なのだろうか。そうではなく、立会人が信頼できるような開票作業がおこなれているかどうかではないだろうか。記事から見る限り立会人の疑問はもっともであり、そんなことも指摘しないようなら、それこそ立会人なんて形式的なものだと思うようなものばかりである。
選挙とは特別なものである。投票は有権者が唯一能動的に行使できる権利である。それを生かすための開票作業には何より「公平・公正」とそれに基づく「信頼」が必要となる。経費節減とか合理化のためにそのことが崩れてしまったら、それは取り返しのつかないことになる。
「急がば回れ」という格言は本当に正しいのだ、と僕は思う。