『テンペスト』が面白い | 多弦Gutarist Tominha の部屋

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NHKの大河ドラマの30分前まで、BSプレミアムでやっているのが『テンペスト』。沖縄は八重山出身の作家池上永一の同名原作をドラマ化したものだけれど、これがなかなか面白い。時間が時間なんで(夕方6時半から)、録画したのをとで見るという感じが多いが、結構はまっている。 

時代背景は日本で言えば幕末。清国はアヘン戦争によって揺れ、日本も幕末へと向かっていく激動の中で、女性であるにもかかわらず、「宦官」を装って琉球王朝の革新官僚として活躍する孫寧温が主人公。これ、仲間由紀江さんがやっています。いかに男の服を着て化粧を変えてもちょっと「宦官」には見えないけれど、琉舞の心得があるだけに所作で男女をわけているところはなかなかの熱演です。 

その他にも沖縄のオバアといったらこの人の平良トミさん、沖縄のオジサンと言えばこの人の藤木勇人さん、SPEEDの上原多香子ちゃんとウチナースター総出演、主題歌は安室奈美恵ときたもんだ。そいでもって歴史監修には「琉球独立派」の重鎮高良倉吉さんが名を連ねている。 

沖縄は今では日本の一つの県になっているけれども、もともとは独自の文化と国家体制をもった「独立国」だったという歴史、これを理解するためにはこのドラマはともかく必見です。なぜそうなったか、については若干説明不足ではあるが、薩摩藩に事実上組み入れられ、年貢も支払いながら、清国に対しては「冊封国」であった琉球の当時の姿が非常によくわかる。僕も知識としては知っているけれど、中国の科挙制度にならった独特の官僚制度や王朝のありかた、「聞得大君(きこえおおきみ)」という祭祀女王を頂点とする独特の宗教体制、華麗な衣装に踊りの数々を目の当たりにすると、確かに琉球は日本とはちがう歴史を背負った「一つの国」なんだと実感する。 

ドラマは今、沖縄にペリーが来航し、その後日本に赴いて開国を成し遂げるところで、いよいよこれから琉球は日本の「維新」に連動して激動の時を迎えようとしている。そんななか、今日放送分で一番興味深かったのは、主人公がペリー提督と交渉する中で「琉球の未来像」語るシーン。 
孫寧温は「琉球はこれほど美しい国土をもちながら、人民の権利を認めていない。琉球は変わるべきだ」とのペリーの主張に同意して「変わらなければならない」といい、「王府は外交と治安維持だけを行い、人民にはおおきな自由を与える」「「商人の活動は制限しない。外国人の居留も認め、貿易の自由を認める」「琉球はその地政学的特性を生かして、貿易と交通の要所として、西洋と東洋の緩衝地帯となるべきだ」と語る。 

これはあくまでも物語のうえでの話だから、このように当時考えた人が琉球にいたのかどうかまでは僕にはわからない。しかし、米軍基地からの解放を求める現代の沖縄の人たちの中から、こうした形での「琉球の独立」というか、「沖縄の世界的役割」を目指す考えが生まれていることは知っている。おそらく、歴史監修に携わった高良さんらの考えが反映されてのセリフなのだろう。 

もちろん、歴史は孫寧温のいうようには進まなかった。むしろのその逆に、日本とアメリカによって、その「地政学的特質」を利用されるばかりだった。それはしかも決して沖縄ばかりではない。太平洋にある島嶼国家はすべて、19世紀から20世紀にかけて同じような運命をたどったのである。 
ハワイ、グアム、というと僕らはリゾート地というようにまず思う。しかし、そこは沖縄と同様、米軍基地が島の主要部をしめる。西太平洋のタヒチはフランスの軍事拠点であり、核開発の前線でもあった。あの美しいリーフに原水爆を炸裂させる神経を僕は理解できないが、沖縄の現実も決してタヒチと違うわけではない。 

「守礼の邦(くに)」と自らを呼び、高い教養と美意識で大国清とも、野望の国日本とも対等に渡り合うという理想を僕は困難な未来だと思うけれども、「過去の遺物」とは思わない。それは日本という「国」が全体として目指してもいい「未来像」だとも思う。 
隣国のつまらないナショナリズムに対抗して、自分もその次元で争うのは本当に愚かなことだ。 

そんなことを考えたのですが、この『テンペスト』、小難しく考えなくても楽しいドラマです。少なくとも韓国王朝物や清王朝物よりは親近感もあるし面白い。