#533 (gootama 41) お酒と木材の話 (2024.3.22) | コトバあれこれ

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子ども作文教室、子ども国語教育学会の関係者による
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  昨年10月ごろに、木材からお酒を造る研究の話が、NHKや新聞で報道された。国の研究機関である「森林総合研究所」(茨城県つくば市)で開発された木から酒造を行うプロセスで、世界初の技術を言われる。木材(杉、しらかば、みずなら等)のセルロースを糖分に変換することがなかなかできなかったのだが、これを克服する技術開発に成功したものである。

 

 そもそも、糖分を酵母を使って発酵させるとアルコールが出来る。これがお酒である。ぶどう、りんご、みかんなどの果物は糖分が入っているので、そのままお酒の材料になる。穀物のデンプンを糖に変えれば、やはりお酒が造れる。以下に、発酵法の種類を示す。
                                                                 <お酒(醸造酒)の発酵の方法 (1)

  発酵されてできたお酒は醸造酒と呼ばれる。更に、これを蒸留させて、アルコール分に凝縮させたものを蒸留酒と呼び、ウイスキー、ジン、ブランディー、ウォッカ、焼酎などがある。木のセルロースは、細胞壁の中でリグニンという成分により硬く固められているため、容易には分解することができない。そのため、長い人類の歴史を通じても、木は酒の原料になることはなかった。ところが、木材を1ミクロン程度まで非常に細かく粉砕すると、リグニンから解放されたセルロースが表に露出し、糖に変換できることがわかってきた。この方法を使うと木材の香りなどが残ったままの糖液を得ることができ、これを発酵させることで、これまでになかった香りや味わいを持つ新しい酒を製造することが可能となった(2)。現在、商業ベースに乗せるための技術開発を

継続している。

  セルロースをミクロンを通り越してナノまで細かくすると、ナノファイバー(CNF)と言われるものが出来ることが分っている。このナノ化の技術は非常に難しいものであったが、これも日本発の技術として開発された。 鋼鉄の5倍の強度で、鋼鉄の1/5の軽量であり、プラスティックを混ぜた構造物、半導体素材、化粧品、食品などに使われ始めている(3)。まさに、革命的なことだ。日本にたくさんある木材がこのようにお酒やナノファイバーの材料として使わると、山村地域の産業活性化、雇用などに大きくつながるのではなかろうか。

 

 更に、こんなニュースも新聞で報じられた。富山県の酒造メーカーが、収穫されずに木に残された柿の実をつけこんだウィスキーベースのリキュールを昨年10月から販売し始めた。商品名「カキスキー」と銘打って。柿の有効利用とクマ対策にもなるようだ(4)。リンゴのワイン(シードル)もちょっとだけ売られているが、リンゴ王国としてもっと大きな展開(輸出)を考えたらどうだろうか。また、茨城県の酒造メーカーが、県産の大麦を使った「日の丸ウィスキー」を開発して販売を始めた(5)。ウィスキーは、大麦やとうもろこしを糖化して蒸留酒にするのだが、コスト面から原料の大半を輸入に頼ってきた。実は、日本のウィスキーは海外で好評で、日本酒に負けない輸出品になっている。ここで、特徴あるウィスキーが出せれば、茨城の農業にも貢献できよう。

 

 最近、日本からの酒類の輸出が増えてきている。海外のおける日本食の好評と併せて、日本酒も好まれ始めている。日本のウィスキーも評判が良い。円安効果もあるのか、輸出額が大きく伸びている。更に、特徴ある高品質のお酒を海外にどんどん売りたいものだ。そういう自分が、お酒が飲めない体になってしまったのはなんとも悔しい。この世界は、おいしくて、楽しい世界なのに、トホホ------。

                                                 引用:国税庁資料 0024001-030.pdf (nta.go.jp)

 

出典:
(1) お酒の発酵の種類をわかりやすく解説|単発酵、単行複発酵、並行複醗酵を説明 |
(2)
. 「木の酒」森林総合研究所公式サイト (affrc.go.jp)
  木を原料とする飲用のアルコール製造-世界が注目! – ChiePro (jifpro.or.jp)

(3)  セルロースナノファイバー(CNF)とは? (aist.go.jp)

(4) 【富山】未活用の特産柿 お酒に「カキスキー」 クマ被害減にも:地域ニュース : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

(5)「茨城発”日の丸ウィスキー”」 2024.2.19 東京新聞 夕刊