#0319【まさ63】星座の名を冠した台風?(2020.08.11) | コトバあれこれ

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子ども作文教室、子ども国語教育学会の関係者による
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 酷暑の夏が来た!同時に台風襲来の季節でもある。昨年は1月に早くも台風1号が発生、7月末までに7つ発生したが、今年は8月11日現在で6個に過ぎない。棒グラフは2000年以降の年間の台風発生数の推移を示したものである。

 一番新しい台風「メーカラー」は中国華南方面にあると聞いたら、みなさんは不思議な顔をされるかもしれない。日本では通常、台風は番号で呼ばれるからで、メーカラーは台風6号のことである。タイが提案した名称で「雷の守護神」を意味する。ちなみに、5月に発生した台風1号のアジア名はマカオ提案の「ヴォンフォン」(スズメバチの意)、温帯低気圧になった台風5号は韓国提案の「チャンミー」(バラの意)だった。

台風の名称の付け方

 台風の名前のつけ方には、米国のように名前をつける「リスト方式」と、日本のように、毎年1月1日午前0時以降に最も早く発生した台風を第1号とし、以後発生順に番号をつけていく「番号方式」がある。国連の下部機関である世界気象機関(WMO)の台風委員会(日本、中国などアジア13カ国・地域と米国が加盟)が1997年、アジア地域の北西太平洋と南シナ海で発生する台風にはアジアの名称がふさわしいということで、2000年からリスト方式でも名称をつけ始めた。気象庁は台風の発生を発表する際、「2020年台風○号(カタカナ名、アルファベット名)」と表記する。例えば、2020年台風1号(ヴォンフォンVonfong)というように。

 この方式では、同委員会であらかじめ決めておいた台風名のリストを使って、台風が発生するたびに順々にリストから名前をつけていく。リストは第1群から第5群までの5群に分かれ、各群には各国・地域から提案された、2つずつ合計28の名前がある。5群合わせると、全部で140個の名前になる。2000年に第1号の名称に選ばれたのは、カンボジアのDmrey(ダムレイ=象の意味)である。表のように、カンボジアからベトナムまで順に名前をつけていき、第5群までつけ、140個使い切ると、最初のダムレイに戻る。名称の由来は様々。米国はハリケーンや台風に人名をつけ、かつてはジェーン台風など女性の名前が多かった。

日本は星座名を採用

 アジアの名称は動植物の名前や地名、名所旧跡、神話の神様など多様だが、日本は星座の名前に徹している。表は日本が使用できる星座由来の台風名である。名称では人名も検討されたが、台風で大きな被害が発生したときに人名というのはどうかという話があり、自然系の名前にしようとなったようである。ただ、天気に関係する名前は紛らわしいので除外された。

 台風情報は船舶にとっても重要な情報であり、かつて航海術に星が関係していたことからも星座の名前になったという。当初は黄道12星座という案もあったが、アルファベット表記にするため読みにくいとの意見が参加国などから出て、今の14種類になった。

 

 ここまで読めばお分かりだろうが、日本提案の星座名が付いた今年の台風名も決まっている。第13号の「クジラ」(くじら座)と、その次は第27号の「コグマ」(こぐま座)である。台風「クジラ」の年内発生はまず間違いないだろうが、「コグマ」は来年になるかもしれない。何れにしても、化けクジラになったり、大熊にはなってほしくないものである。