#318【ch-003】 ある雨の日に(2020.08.07) | コトバあれこれ

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子ども作文教室、子ども国語教育学会の関係者による
投稿記事ブログです。

 平年より11日遅く、8月1日に関東地方もやっと梅雨明けになりました。梅雨明け10日と言いますが、いきなりの猛暑で、涼しさになれた体にこの暑さは応えます。コロナ禍であり、マスク着用等で、熱中症にも十分に気を付けなければなりません。

 特に本日(8月7日)は、東京の最高気温は36度の予報で、初の熱中症警戒アラートが発表されました。ご無理のないようお過ごしください。


 この立葵のお花が終わるころ梅雨明けになると言われています。

 8月1日久しぶりの日の光、お昼頃梅雨明けの発表があり夏空になりました。

 

 数年前になりますが、ある雨の日に、私の前を学校帰りの小学校低学年の男子生徒三人が歩いていました。その時は小雨でしたが、一人の生徒が傘を差さずに濡れて歩いていました。傘を持っていないようでした。他の二人の生徒はそれぞれ傘をさしていますが、濡れている生徒を気遣うこともなく平然とおしゃべりをしながら歩いていました。濡れている生徒も傘に入れて欲しいような素振りも見せてなく、三人ともが普通に歩いていました。

 昔、(もう、昔になるのでしょう・・・)学校や仕事帰りに急に雨に降られることがありました。最寄りの駅から自宅までの間、同じ方向に濡れて歩いている人がいれば、そこまででもどうぞと言って傘をさしかけました。時には相手の方の自宅まで送ったこともありました。濡れている人がいればご一緒にと傘を差しだすのは当たり前の行為だと思っていましたので、三人の生徒の行動を不思議に思ったのと、今は相手に気を遣わず、それぞれなのかしらとも思った次第でした。

 伊集院静著『きみとあるけば』の一編「長靴の音色」に、少年時代の雨の日の思い出が記されていました。雨の日に、雨宿りをしていた少年と妹の二人を傘に入れてあげたのがきっかけとなり、母同士も知り合いになったことから、少年と妹は家に遊びに来るようになり、少年は兄さんのような存在になっていた。そして、著者は最後に「私はあの日、雨の中で素晴らしいものに出逢った。」と記しています。

 先の男子生徒の様子を見ていても、雨に降られて不安そうな気持で立っている人がいても今は気づかずに通り過ぎてしまうのでしょう。

 まして現在はコロナ禍、ソーシャルディスタンスが奨励され、2メートルは離れなくてはならい。そうなれば当然傘を差しだすこともできませんし、どこで感染するかもわからない現状では人に接近することは出来ません。

 今では、ちょっとした気遣いもなく、もう、こんな素晴らしい出逢いはないのだろうと思うと、なにか、寂しさがよぎるのでした。

 

 立葵が終わり、夏のお花、ギボウシとシュウカイドウが咲き始めました。

夏の風物の風鈴ですが、この音も騒音になってしまうのだろうかと、気になりながら出しました。

(chtaki 記)