ここは、どこだろう。
性懲りも無く鹿児島ラビリンス、ツーリングマップルで大体の方角を確認して後は勘で走り出したが、また道に迷った。知らない小高い山の公園。土曜日の朝から草野球の試合が行われている。公衆トイレに入り、一服して携帯を開き地図と照合して現在位置を確かめる。なんだ。方向は間違っていない。鹿児島北インターまで近い。3号線に出て右折レーンに入り、高速に乗る。緊張する。ETCは付けてないから一般レーンに入り通行券を手に取る。厚い革グローブを両手に嵌めているからもどかしい。風で飛ばされないようにドカジャンのポケットの奥まで慎重に仕舞う。アクセルを捻って加速する。風に晒される。ドカジャンの下は防風対策で合羽を着ている。大丈夫そうだ。大人しく左車線を暫く走ると、矢張り指先が痺れてくる。感覚がなくなる。痛い。防寒パンツも限界を迎える。意志とは無関係に両足が震え出しニーグリップの膝が暴れる。えびのパーキングエリアに入って自販機で熱い缶コーヒーを買う。グローブを外して指先を押し付けて温める。まだ先は長い。絶望しながらサイドバッグから余ったカイロを取り出しドカジャンの袖口とブーツに突っ込む。少しはマシになるだろうか。
人吉あたりではっきり気温が上昇したのを感じる。安堵する。もう大丈夫だ。距離が数キロと長いトンネルが幾つも続く。トンネル内は寒さが少し和らぐ。一面が黄色。高速走行にも慣れて、眠気が襲う。フェリーでも熟睡はしていない。余計に危ないと感じる。歌ってみる。曲は、ハイロウズ、日曜日よりの使者。なんでやねん、今日は土曜日や、と関西弁で突っ込んでみる。退屈さが紛れる。オートバイは調子が良いみたいだ。走り続ける。途中で給油を二回挟み、見慣れた街に戻ってくる。
鳥栖で降りて先輩の仲間が働いているハーレー佐賀で自販機の無料コーヒーを一杯、マックスフリッツ鳥栖で何も買わずにただ雑談に興じ、いつもの山道で福岡市内に入り、胡庵で夕飯用に持ち帰りもつ鍋一人用を買い、行きつけの珈琲店で旅の報告をしたかったけど非常に忙しそうだったからペーパーフィルターだけ購入し、自宅マンションに無事に戻った。
旅が終わった。
久し振りの自室は暗くてひっそりしていた。荷物を床に放り投げ、衣類を洗濯機へまとめて入れ、台所で食器を洗った。生活。僕は日常に戻った。
拾った貝殻と珊瑚の欠片を肩掛けバッグから取り出し、部屋に飾って、眺めた。
