彼はロマン主義 | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

「身体はきつかったんですけど…」

殺風景な白いロッカールームで、彼は伏し目がちに静かに語り始めた。彼は二度目のワクチン接種を済ませてから数日の休暇を取り、その日出勤していた。ワクチン接種の翌日に熱が39度まで上がり早めに就寝したらしい。全身が怠く軽い吐き気を催し注射した左腕が痛くて眠れない。と、ここまでは一般的に良く聞く副反応である。しかし、満身創痍の彼の身体には全く別の異変が生じていたのだ。

「なぜか2時間くらいずっとあそこがぎんぎんやったとですよ!」

果たしてそれも副反応の一種だろうか。いや、彼は私が知るワクチンとは別のものを注射されていたのかも知れない。ワクチン接種会場を間違えていた可能性も否定できまい。あかひげ薬局に行ったんじゃないのか。そんな彼は後にこうも語った。

「この前、竹乃屋で唐揚げ定食食べたら、うまかったですよ」

彼の言葉を鵜呑みにした私は竹乃屋へ行った。ランチ、つまり昼食のために。私は、とりかわハラミ丼(590円)みそ汁(100円)を注文した。何故、唐揚げ定食を注文しなかったのかと問う人があれば、私はきちんと理由を説明できる。唐揚げ定食は、数日前に一度食べて、普通に美味しいなあ、と思ったからである。その時メニュー表に、とりかわハラミ丼が通常790円が今だけ590円、で提供されると載っていたのを、唐揚げ定食を注文した後に気付いたのだ。唐揚げ定食は850円、ハラミ丼に味噌汁を追加すると690円、その差は160円、唐揚げ定食を食べながら私は損した心持ちがしてリベンジ、つまり復讐を誓ったのだ。

失敗した。とりかわハラミ丼は米の量が少なかった。浅瀬だった。甘辛く味付けしたらしい鳥皮はぐにゃぐにゃした食感だけを感じて、なんだか味はよく分からなかった。黄身の色が濃い卵もぐちゃぐちゃに混ぜて、味噌汁で流し込んだからか、味はこれもよく分からなかった。私は馬鹿舌なのだった。850円を支払って単純に十分なボリューム、つまり量があった唐揚げ定食にしておけば良かった。私は後悔した。160円を渋ったばかりに、安物買いの銭失いとはこの事か、嗚呼。アーメン。ぎんぎんになった彼は苦しみの中でのたうち回りながら何を祈っていたんだろう。それは私には、分からない。   B440043596

 

 

 

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