珈琲表面をびっしりと生クリームが覆い、きらりと輝く銀色の丸い粒々が付着している。一体何だろう。日本酒についている金箔的な意味合いなのか。高級感が増していることは間違いない。優雅で華麗な見た目だ。或る意味社会の特権階級(独身貴族)に所属する僕に相応しいコーヒーだといえよう。
粒を噛んで正体を確かめる。かりっとしており、甘い。どうやら飴みたいだ。飴細工だろう。表面温度が低いため、油断してしまった。ぬるい飲み物だと脳が誤認していたのかもしれない。ずずずっと音を立てて啜ったら、生クリーム層直下、熱いコーヒーが僕の舌に容赦ない温度で襲い掛かる。
「あっ、あつい。舌が」
火傷したかも知れません、哀しげな僕の訴えを先輩 は大して興味無さそうに聞き流す。頼んだモンブランが冷凍されており、ガリガリだったらしく、少し不機嫌な様子だ。夏に丁度良い冷涼なケーキでは無かったらしい。その喫茶店を訪問したのは夕方だった。もう今日はケーキ出ないだろう、余ったのは翌日分として冷凍しておこう、先輩が頼んだケーキは店内に於いて、そうした変遷、思惑で生まれたエコロジー精神、モッタイナイ精神の発露の賜物だったのか。
ただ、この喫茶店は居心地が良い。ソファ席は快適だ。ファンシーな小物も飾られてはいるが、統一感はなく、且つごちゃごちゃし過ぎていない。嫌みがない。誰でも落ち着く空間だろう。雑誌、漫画の類いも、いい意味でテイスト、方向性がバラバラで懐が深い。色々な客層が満足できるラインナップである。僕は若い女性向けファッション誌をパラパラ捲り、ニューヨークヤンキースみたいな縦縞ラインのズボンを履いた佐々木希を眺めた。そのズボンは僕が前入っていた草野球チームのユニフォームとデザインが同じだった。当時の僕たちは実は最先端のギャルファッションで白球を追い掛けていたとは全く知らなかった。
欧風チックな外観で佇む、喫茶「ますみ」さんは西鉄甘木駅ほぼ正面と抜群のロケーションを誇る。30分に一本で運行する西鉄甘木駅の待合所として使い勝手は最高だ。電車の時間まで思い思いにゆったり過ごせばいい。
