Happy Curry House | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

HAPPY CURRY HOUSE(ハッピーカレーハウス) 」は西鉄小郡駅すぐ近くにある。


昼から晴れる予報が出ていたが、どんよりした雲が頭上に垂れこめ、湿った重苦しい空気が身体にのしかかる。駅周辺は大型連休GWにも関わらず、人通りが少なく閑散としていた。



赤茶色い煉瓦ブロック調の外観に覆われた、三階建ての巨大な長方形、小郡ステーションビルだ。男は階段を上がった。何故ならその二階にカレーと表示された幟が見えたから、である。



開け放たれたドアの向こうを覗き込むと、色落ちしたデニムシャツを着用し、カレー本場の国からやってきたと思しき、浅黒い肌をした青年から、いらっしゃいませ、と声が掛けられた。


バーかスナック、といった造りだ。カウンターの内側の壁面に食器棚があり、中に酒瓶が飾られている。棚は入ってすぐ右手のスペースにもあるが、空間に大分余裕がある。余白を埋める意図なのだろうか。子どもっぽい動物のぬいぐるみが詰められ、一種異様な感じを受ける。ここは居抜き店舗なのだろうか。



選ぶカレーによって値段が違うらしい。男は「ハッピーランチ」からナンセット、ダルカレー680円を注文する。ソフトドリンクはラッシーを選んだ。



サラダはコーンが入っている。冷たい千切りキャベツのウエイトが多い、ドレッシングがかかったごく普通にサラダだ。



同時に提供されたラッシーはビールグラスに注がれている。もしもラッシーを知らない人に味を説明するなら、カルピスだ、と男は言いたい。



程なく、ダルカレーとプレーンナンのお出ましである。男は一目見て、胸中で声を上げる。


(…なんてデカいんだ!)


ナンを千切る時に、思う。


(…なんて熱いんだ!)


もちもち、しっとりたナンは仄かに甘味がある。おいしい。パン扱いで毎朝食べたいくらいだ。カレーの辛さは4段階で調節出来る。男は辛口にしたのだが、日本人向けにアレンジされているようで、全然大丈夫だ。辛さを求める人には物足りないだろう。意味を知らずに値段で選んだダルカレーは豆のカレーだった。序盤は割と薄味で、後半底に溜まった豆をナンで掬って食べると、結構な質量で腹にたまった。

お替りナンは無料だ。当然、注文する。フルサイズだ。


(…なんてデカいんだ!)


(…なんて熱いんだ!)


男は同じことを再び思ってしまう。



会計時、青年から、割引チケットを持っているかどうかと尋ねられる。持っていない、と言ってから思い直し、さっき店頭で引き抜いたチラシでもいいのか、と駄目元で聞いてみる。あっ、それでダイジョウブです、と青年が答え、まんまと50円引きになる。


(…なんて気前がいいんだ!)


男はハッピーだった。カレーハウスでの出来事だった。



HAPPY CURRY HOUSE(ハッピーカレーハウス)ネパール料理 / 西鉄小郡駅小郡駅大板井駅
昼総合点★★★☆☆ 3.9