かけうどん物語 「束の間の沈黙」 | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

ーあらすじー

(“かけうどん”、そのシンプルな食べ物に魅入られてしまった男が、久留米市にいた。男はうどん屋を訪れると、決まって、かけうどんを注文した。孤独な旅路、一体その先には何があるのか?男は目指す。“かけうどん”の向こう側を…)


「…へっ?」


タイムラグが生じていた。ほんの数メートルの距離だったけれど、まるでスタジオで衛星中継のやり取りを交わすニュースキャスターと海外特派員みたいに、その店主と客である男との間には、間抜けな空白が横たわっていた。


男は、もっとゆっくり、そして力強く、いつもの決まった台詞を再度繰り返した。


「かけうどん、ください」と。


未だ腑に落ちないといった表情の店主だったが、それでもやっと男の言った意味を理解してくれたらしく、了承の一声を発すると、作業に取り掛かる。午後7時にふらっと入店した三十路男性が注文する品にしては、些かシュール過ぎたみたいだ。しかし、同年代の男性が夜のうどん屋で果たして何を注文するのが一般的であるのかを、男は全然知らなかった。



入り口脇に置かれた新聞を広げ、テレビ欄にざっと目を通している段階で「かけうどん」290円は提供された。ソフトバンクホークスの今宮選手の打率をチェックする前だった。素早い提供に、男は点けたばかりの煙草をもみ消し、立ち上がる湯気に顔を近付け、くんくん香りを嗅いでみた。昆布出汁だろう。とろろ昆布がトッピングされている。それに葱と蒲鉾が彩りよく配されていた。手打ちらしい麺は、まさにそれらしく不揃いに切断され平べったく、所々くびれていた。食感はなんとも柔らかい。口の裏と舌だけで押し潰せそうだ。いや、流石にそれは言い過ぎだろうか。柔らか麺にあっさり優しい昆布出汁はベーシックな筑後うどん、男の好きなタイプのうどんだった。



男が訪れたのは、久留米市東町34-86「城島一番」である。城島は町の名前であり(平成17年合併で久留米市に編入された、以前は三潴郡)、酒処として日本酒好きに知られている。たしか同じ名前ということで元ホークスの城島健司捕手の私設応援団も以前存在していたと思う。それで、店主は勿論、現在城島町から通われている。





城島一番そば(蕎麦) / 西鉄久留米駅花畑駅櫛原駅
夜総合点★★★☆☆ 3.9