「第十回 大宰府路女子旅」Part1~竈門神社~ | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

この度、めでたく第十回を迎えた、デートの達人、久留米の爪切りがお届けする「絶対に失敗しないデートスポット」であるが、一つの困った事態が出来していた。


特に、反響が無いのである。


一体どうした禍事であろうか。世界中の迷える子羊(ストレイ・シープ)達は揃いも揃って、黙殺を決め込んでいやがるのである。ろくすっぽ読まれてもいないのか、私の投稿には時計の針ほどの意味もないみたいである。ああ。


しかし、私はめげない。立ち上がる。何度でも。私は自身の弱点を直視し、克服する決意を固めた。


私の弱点、そう、それは「女子の気持ち」が分かっていないことだ。ならば、どうすればいい?答えは簡単だ。「女子」になりきればいいのだ。

私は「レンタサイクルでめぐる 大宰府路 女子旅」を体験した。HPに男性も大歓迎、と小さな注意書きに記してあったから問題は無い。

西鉄太宰府駅改札に受付窓口がある。チラシを持参したので料金は100円OFFで300円だった。係員さんに、淡いブルーが麗しい小径の自転車に乗りたい旨を伝え、了承された。サガン鳥栖カラーみたい、かーわいーい、きゃっー、私は心中、既に女子になり切っていた。


サイクリングマップとチラシを渡され、いざ出発である。まずは「恋愛成就祈願おすすめスポット」とチラシに書かれた「竈門神社」を目指す。駅からおよそ1.9kmらしい。楽勝である。

(…馬鹿か)


犬っころのように、はあはあ息を漏らしつつ、思った。只管、ずっと登りなのである。結構な勾配である。滴る汗でハンドルを握る手が滑った。マジ、きつい。チラシをよく読めば「竈門神社へは、電動が一番!」と暗に、電動アシスト付自転車でないとマゾヒスティックな苦行に陥ることを仄めかしていた。


ちなみに上記の写真は、なんとか辿り着き息を整えている僅かな隙に、通りすがりの少年ギャングに自転車を強奪されようとする瞬間である。

鳥居である。この上に石が乗ったら恋愛が成就するという噂がまことしやかに流布されている。なるほど、たくさんの小石が乗っかっている。みな、ナイスコントロールである。

モダンな洋館の如き瀟洒な社務所である。

展望テラスまで設えてある。絶妙な位置に配された二脚の椅子が心憎い演出である。誰でもいいから取り敢えず告白したい衝動に駆られてしまう。

授与所はスケルトン仕様である。スタイリッシュである。

祈ることは勿論、国家安泰と五穀豊穣である。もとい、素敵なカレとの邂逅である。

「恋占い」らしい。目をつぶってむこうにある石にたどりつければ恋が叶うらしい。平衡感覚が試される。

煌びやかな表ばかりではなく、裏側も見ておくべきだろう。錆びつき腐ったようなドラム缶の内側が煤で真っ黒だ。侘しい寂しい光景だった。


健闘を祈る。