(前回の続きです)

 

 

 

シロヤギから手紙が届いた

 

 

封筒に書かれたその筆跡を見たとき

一瞬、どきっとした

 

 

あの遠い日と

同じ

 

 

 

 

 

 

クロヤギは

湖が見える牧場のいちばん外れで

一緒に届いた小包を開けた

 

 

メ゛!!

 

オカシナ声が出てしまったのは

陽射しの中にとても高額な化粧品が出てきたからだった

 

 

手紙、何が書いてあるんだろう

 

 

どこからか、一匹のナナホシテントウが飛んできて

まだ開けていない白い封筒の上にとまった

 

そこから大急ぎで

封筒の角まで小さな足を小刻みに動かして進み

羽を広げると

また、飛び立った

 

 

 

シロヤギさんとの楽しかった思い出

 

いつも二人で

オカシナことばかりしていたっけ

 

その思い出は

明確な輪郭を取り戻そうとして

再び、すこしの絵の具が水に溶けるように滲んで消えた

 

 

 

紅いセスナ機が一台

青空を飛んでいる

 

そういえば、あの日も

音をたてて飛んでいたな

 

向こうの

山の上のほうを

 

 

 

何だか

 

お腹

すいた

 

 

 

 

 

 

畜舎に帰ると

クロヤギはミミズクに言った

 

シロヤギさんに手紙を出してくれない?

 

ミミズクは首を横に270度回して言った

 

シロヤギさんて、昔いたあのシロヤギさん?

 

ええ、そう、ていうか、首回しすぎよ

 

ミミズクはそのまま目をぱちくりさせている

 

なんて書くの?

 

手紙、もらったのよ、でも、何でもいいわ

 

何でもって、何なのそれ

 

いいのよ

 

そうなの?

 

ええ

 

 

分かった、出しとく

 

 

 

ミミズクはそのまま深くうなずいた

 

それ、うなずく角度、間違ってるって

 

クロヤギは笑いながら奥の部屋に立ち去った

 

その口元には白い小さな紙の切れ端

そして角の間には高級化粧品

 

ミミズクは深く考え込むようにして

目を閉じた