あけましておめでとうございます
皆さんにとって素晴らしい年でありますように
こちらは、過去の記録と物語をすこし続けてから新しいネタに進みたいと思います。
本年もよろしくお願いいたします
ツノゼミのつくり方
若いツノゼミ達が大きな葉の上で陽を浴びながら語りあっていた。
「前から思ってたんだけどさ、おまえのその角みたいなのって何なの?」
「それがさ、なんか不思議なんだけどさ、俺、カブトムシ好きじゃん?それでさ、いいなあ、俺もあんなカッコいい角欲しいなあって、ずっと思ってたらさ、いつの間にか出来てた」
「いや、いつの間にかって、出来ないでしょ、ふつう」
「なにかの病気なのと違う?」
「ちょっと触らせてみ」
「や、やめろよ、触覚で触るの、気持ち悪いよ」
そう言って角のあるツノゼミが触覚から離れようとした瞬間に、大きな黒い影が目の前を横切った。
触覚を伸ばした仲間が、鳥に食べられてしまったのだ。
「ああっ!」
「くそー!何てことだ!」
「か、隠れないと!」
慌てて葉の裏に隠れたツノゼミ達は体を寄せ合い震える声で話しながら、一つの決心をした。
自分も強い何かに変われるよう、心に強く思い続けよう。
何かに変わらなければ、私たちはいつまでも小さなセミのような姿の弱い生き物のままだ。
だけど、私たちは、変わる。
ツノゼミとしての誇りを胸に懐き、必ず、もっと強い生きものになってみせる。
ツノゼミ達の思いは、その子孫へと伝えられていった。
だが、その過程の中で先祖の思いは伝言ゲームのように少しずつ違うものになってしまっていた。
ただ、強い思いを持ち続けることだけは、絶えることなく脈々と伝えられていったのだった。
若いツノゼミ達が大きな葉の上で陽を浴びながら語りあっていた。
「前から思ってたんだけどさ、おまえの角って何なの?」
「これ?良いでしょー 木の実がたくさんなってるとこだよ。可愛いでしょ」
「いいね、可愛いね。俺のは蝶だよ。羽を立ててとまってるところ。こういう感じ、すごい好きなんだよね」
「分かる、おまえそういうの好きそうだよなー。そっちのは?フツーの角みたいだけど」
「カブトムシだよ、強いからね」
「俺のもカブトムシ!」
「え、そうなの?でもなんかそれ、ちょっと角っぽいの多すぎじゃない?」
「私のは蟻」
「そりゃ、おまえのは見たら分かるけど、…いや、でもホント凄いよな。どう見ても生きてる蟻がくっついてるようにしか思えないもんな」
「僕の、は、トカゲ、だよ。む、無敵、なんだ、から」
「!…、まあ、確かにそれ、トカゲみたいに見えるけど、でも超重そうだよね。さすがに無理っぽくない?だって俺たち昆虫だよ?爬虫類クラスはキツいっしょ?」
「オレの、恐竜!雷竜だよ。オレ、でっかくなりたいんだ」
「えー、それ、恐竜だったのかよ。ずっと木の芽だと思ってた」
「私もー」
(木の芽…)
「そういえば、おまえのは何なの?」
「…それがさ、…なりたいものを考えて集中してた時にさ、目の前に鳥がフンを落としたのに凄く驚いてしまって…」
「プッ」
「わ、笑うなよ」
「ククッ…いや、でもさ、それけっこう最強かもよ」
「そ、そうかな」
「そうだよ」
「そうよ」
「そうか!」
「そうよ!」
眩しい日射しを浴びた大きな葉の上には、ツノゼミ達の陽気な笑い声がいつまでも響き渡っていた。
(みなさんもぜひ、ツノゼミについて調べてみてくださいね)
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