スタジオボノックの初長編アニメ作品です。
2014年にスタジオジブリが解体され、その受け皿として創設されたアニメスタジオで、ジブリの作風を継承することをコンセプトにした作品です。
米林宏昌監督作品としては「借りぐらしのアリエッティ」と「思い出のマーニー」に次ぐ3作品目となります。
前2作と同様にイギリスの児童文学を原作としています。本作は1971年に刊行され日本では1975年に「小さな魔法のほうき」の邦題で出版されていました。
「床下の小人たち」(1952年)メアリー・ノートン
「思い出のマーニー」(1967年)ジョーン・G・ロビンソン
「小さな魔法のほうき」(1971年)メアリー・スチュアート
スタジオジブリで制作された前 2作は宮崎駿ので、日本でも海外児童文学好きには知られている作品の映像化でしたが、本作は原作が絶版になっていたことで知名度は低いですが、その分「メアリと魔法の花」というジブリ的なタイトルが違和感なく受け入れられ、ジブリを離れたことでストレートに宮崎駿的な手法が散りばめられたセミ・ジブリ映画になっています。
魔法使いの世界と人間界とが両界存在している世界で、主人公の少女が一時的に魔法が使えるようになるという設定が面白いです。
原作が執筆された 1970年代というとアメリカのシットコム TVドラマ「奥さまは魔女」
が日本でも人気でした。
魔法使いの女性が能力を秘匿したまま結婚をして主婦をしているという設定で、このテイストはディズニーの実写映画「魔法にかけられて」シリーズに通ずるものがあります。
昨今はスーパーヒーローですら特殊能力を隠すことはなくなってしまったので、前時代的な設定といえます。
日本では1970年代に魔法使い少女ものアニメがいくつも制作され、魔女っ子ブームでした。
「奥さまは魔女」も「魔法使いサリー」や「魔女っ子メグちゃん」といった作品も現実社会の日常生活の中に魔法があるファンタジーで、特撮ブームの際には「コメットさん」や「5年3組魔法組」といった実写ドラマもヒットしていました。
ところが1970年代は科学が一般に浸透するようになった時代でもあり、SF ブームが到来すると、魔法は超能力に取って変わられ、魔法の世界観にもロジックが組み込まれるようになります。
本作の魔法の開発、研究といった内容もそういった社会背景の影響と思います。1990年代に大ヒットしたハリー・ポッターシリーズの緻密な世界観もSFの影響下にあるもので、いかにも現代的ファンタジーといえます。
ジブリが超能力よりも魔法との親和性が高いのは、宮崎駿の自然崇拝的な思考が精霊や妖精、妖怪といった自然現象の一端として表現されるからと思います。
本作の魔法の花も箒や呪文よりもジブリ的なギミックではないでしょうか。