2021年の「ゴジラvsコング」の続編で、2014年からはじまるゴジラとキングコングが世界観を共有するモンスター・バースでは5作目です。

 2014年にハリウッドゴジラの2作目となるレジェンダリーによるゴジラ映画「GODZILLA ゴジラ」が製作され、2016年には日本で「シン・ゴジラ」が大きく成功し、以降はコンスタントに日米それぞれでゴジラの新作が展開されました。
 各作品ともに独自の解釈がなされ、関連性はないものの興行的には相乗効果を生んでいたのではないかと実感したのが、2023年公開の「ゴジラ-1.0」が第96回アカデミー賞視覚効果賞を受賞するという快挙を成し遂げた直後に公開された本作がアメリカで大きな観客動員を記録したからです。

 予告編を何度見てもピンとこなかったので、かなりの猜疑心を抱いていたのですが、アメリカでそれほどまでに高い評価を得たのであれば杞憂に過ぎないかと思ったのですが、予告編をまったく超えない作品でした。

 主役はキングコングで、キングコングの勢力争いにゴジラが加担するという内容なので、前作の「vs」が共闘を意味する「x」に変更されたのではないでしょうか。

 キングコングは言葉を発するまではないものの、ある程度の意志の疎通は可能ですし、コングの思考なども明確にわかります。従って、コングを介してゴジラの意志も伝わるということでいえば、思い切って人間ドラマを全カットした純然たる怪獣映画にしてしまうという手法もあったのではないかとさえ思ってしまいました。
 なぜなら本作における人間ドラマは怪獣たちの通訳でしかなく、その通訳の最たる登場人物が、髑髏島から来たイーウィス族の少女です。モスラの小美人的役割も果たす彼女はまさに人類と怪獣の仲介者なので、映画的役割も怪獣の解説者です。
 謎解きをするわけではなく、導かれて仲介役を行っているだけなので、少女に感情移入ができません。
 怪獣と少女という平成ガメラ的な魅力もなく表舞台にも上がりません。

 週末の午前中に吹替版を鑑賞した都合、劇場には小学生が多くいました。子供たちは作品に対して満足している様子で、好意的な感想は怪獣のバトルが恰好良かったというものでした。

 つまり怪獣のバトル映画という需要は日米共にあって、怪獣のバトルを見せるという意味ではエンタメとして充分に成立しているといえます。

「ゴジラ-1.0」の国内での評価は人間ドラマの部分でしたが、そのことが明確にターゲットとなる年齢層を上げていました。一方で怪獣がバトルをするためのお膳立てを用意すると、人間が介入するではなく、コングの勢力争いという怪獣主体のプロットになるのは当然といえます。
 本作がアメリカで成功した理由もそこにあるのだとしたら、やはり人間ドラマ全カットの怪獣バトル映画を見てみたくなります。

 本作は珍しくエンドクレジットの途中もしくは最後に短いシーンが入る、ポストクレジットシーンやミッドクレジットシーンがありませんでした。次作への布石が用意されていなかったということは、一応は本作をもって完結ということだったのではないかと思います。

 ローマのコロッセオで丸くなって眠るゴジラのビジュアルは面白かったです。