ケイズケイスの近況4
ところで、ライブで、マスターが演奏に参加するというのは、私が知っている限り、東京の「アケタの店」の明田川氏、大阪「サブ」のに西山氏である。両氏とも私が二十代のころから知っているので、大ベテランだ。私は三年前からなので、まったくの新参者ということになる。その上、楽譜が読めないときている。しかも、私がやる場合、コミックバンドのような状態となる。
先週の金曜日は、「土佐マサカズ」のピアノトリオであったが、今回で三回目となるライブだ。今回、私は自分の演奏が冴えないので、自分の出番はパスしようと考えていた。ところが、一通り彼らの用意したナンバーが終わると、彼らは当然のごとく、私の演奏をうながしたのである。少ない客席からも、期待の拍手があり、こうなるとやはり、やりたがりの私は拒否できない。思いつくありとあらゆる言い訳を言いながら、バンドスタンドへと向かった。いわく、「最近は調子が悪い」「マスターが演奏するのは、職権乱用、いわゆるパワーハラスメントであるという批判がある」云々。
で、最初の音を出そうとすると、音が出ない。すぐ気が付いたが、ソプラノサックスの管の内側を清掃するためのフェルト状になった棒のようなものを入れているのだが、それを取り出すのを忘れていたのだ。まるで手品師が何か手品をやるのかい、といった具合。気を取り直して、何とか一曲終わってみると、今度は何やらパンの焦げた匂いが漂っている。そう、演奏前に注文のあったピザトーストを完全に忘れてしまっていた。酔っていることもあるが、即興演奏であるため、最初の一音から、完全に集中するため、文字通り演奏が終わるまで、他のことには一切頭がまわらない。先の両ベテランはどうしているのだろうか。まさかこんなへまはなさらないであろう。
過去にも、私は文字通りキッチンプレイヤーなので、キッチンの中から演奏したことがあったが、サックスをキッチン内に立てかけていて、それを倒してしまい、上のEのキーを修理したことが二度あった。せまいキッチンの中なので、しかも床がコンクリートむき出しなので、十分に想定されるリスクのはずだが、ご丁寧に同じ失敗を二回もやらかしたのである。トホ。