マーク・キャリー | オーナーの読書室

マーク・キャリー

マーク・キャリー


私は毎日I-Tuneを聴いている。これは、アップルが提供しているインターネット上のストリーミングサービスで、日本にいて、最新のジャズを米国内と同時に聴けるのだ。こんなこと知っている人には、今や何でもないことなのであろうが、一昔前では考えられなかったことだ。


 さて今、私のお気に入りが、主題のマーク・キャリー、ピアニストである。先ず、I-Tuneで彼の曲である“タイワ”を聴いたのだが、そのラブリーで、哀切なメロディが気に入っている。美しくも、切ない感情が、抑制されたシンプルなラインに反映されていると思う。彼の曲想はオリジナルであり、そのピアノの演奏は、陳腐なイディオムにとらわれることなく、自由だ。四連譜でつくられるフレーズには、コルトレーンの影響を感じさせるが、後述するように、本人のインタビューでは、コルトレーンは一言も出てこない。それはともかく、この“タイワ”が入っているアルバム、“フォーカス”におさめられている他の曲も深い味わいがある。そこで、彼の演奏をもっと聴いてみようと思って、I-Tuneストアで探すと、2006年の録音で、もう一枚別のアルバムがあった。これは“アンティドート”(解毒剤)というタイトルで、前者のピアノトリオに対して、こちらは、サクソフォーン、トラペット、そして何種類かのパーカッションという編成になっている。この中の一曲に、“チャカパティック・ウーマン”というのがある。この曲のリズムパターンは、日本の民謡にあるいわゆる、岡林信康が提唱しているエンヤトットと少し似ている。これはどういうことだろう。黒人なので、アフリカのリズムに偶然近いものがあったのか、と思っていた。


 で、彼のことをネット上で調べてみると、アメリカでも“タイワ”はヒットしていて、彼は人気者であった。本人のインタビュー記事があったので、それを読むと、自分の略歴と、上記の曲についての説明があった。その舌をかみそうな名前、チャカパティックは、ネイティブ・アメリカン、すなわちアメリカン・インディアンの部族の名前であり、彼の母親は、この部族出身のインディアンであり、彼女は、国立の保護区で、自らの部族の伝統を保存する活動をしている、とのことであった。つまり、彼は黒人と、インディアンのハーフであった。彼自身、自分は黒人とインディアンの文化を誇りに思っていると語っている。これで、この曲のリズミックパターンが、何となく日本の民謡にかすかに似ているのだ、とひとり納得するものがあった。


 上記のインタビューで、彼は自身の来歴を紹介しているのだが、ごたぶんにもれず、十代のとき、ヤクに走り、矯正施設に入っている、余談だが、その施設の名前が、RAP(ラップ)で、これは、Regional Addiction Prevention

(この意味は、常習者矯正地域施設といったところか)の略である。彼はワシントンD.C.の出身で、同じここの出身者にデューク・エリントンがいて、そのデューク・エリントン音楽学校に転入している。そして、十代の終わりごろ、すでにホワイト・ハウスで演奏した経験をもっている。


 言わずもがなであるが、やはりアメリカにおけるジャズの層の厚さには脱帽である。―――ケイズケイス緒方