営業職の新人研修でよく使われていた話です。
ある国の人々に靴を売りこもうとした営業マンが、
上司にこう伝えました。
「ダメです、この国の人は誰も靴を履いていません」
上司は言いました。
「何、誰も靴を履いていない? それはチャンスじゃないか」
ニーズは作るもの、と経済界では言われます。
今のままでいいや、我慢してあるものですまそう、
という精神文化は経済成長の妨げになります。
元広告代理店社員の萩原浩さんの小説の中の一節に、
「ニーズ、ニーズ、ニーズ! 少しは我慢しろ!」
というのがありますが同世代の私は大変共感するセリフです。
先日娘の会社に「退職代行」の会社から電話がかかってきました。
<これまで御社に勤めていた○○さまが退職を希望しているので、
弊社が代わって人事担当の方にその旨を伝えたい>
という内容の話で、昨日まで○○と喋っていた娘はびっくり。
そんなそぶりは全く感じさせなかったのに・・・
退職代行とは、退職の意志を依頼者の代わりに電話で伝えたり、
会社からの電話を仲介してもらうことができる事業です。
独力で会社を辞める勇気はないけどストレスなく円満退職したい、
という未熟で虫のいい人向けのサービスです。
ネットでの説明文の中には、<退職を認めない悪質な会社、
長時間労働やハラスメントの蔓延するブラックな職場ほど、
退職代行が役立ちます>と推奨するものもありますが、
悩みに悩んだ末に言い出せなくて退職代行業を利用した、
という以上に「あるなら使うか」という
軽い気持ちで使ってねというスタンスが社名からもうかがえます。
(サラバ ギブアップ オイトマ モームリ など)
それほど必要ではないけれど、あるなら使おう、せっかくだし。
新型コロナワクチンのようなものですね。
別に必要ないし接種しても感染するけど、
接種券送られてきたし無料だから撃っておくか、というノリ。
ただし、弁護士が担当しない退職代行サービスは、
基本的に会社との交渉ができないので、
有給の消化や未払い給料の交渉は自身で行うことになります。
その時人事担当者がどんな反応をするかどんな嫌味を言われるか、
結局気まずい思いをするのなら、
清水の舞台から飛び降りるつもりで自分で伝えた方がいい。
楽をしたい、という人間の気持ちに付け込んだサービス業は、
こからもまだまだ生まれそうですけど、
あるなら使おう、とすぐに飛びつくのではなく、
本当に必要かどうか考えて利用しないと逆効果になることも。
何より自分を甘やかしてばかりでは成長ができません。
若い人はワクチン撃つより免疫力を付けた方がよいのと同じく。