
真犯人を示唆しているようでなんとなく不気味でした。
タイトルにある『暗黒星』というのは
明智小五郎が犯人に対して名付けたものです。
本文中から引用しますと
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今度の犯人は、つい目の前にいるようで正体が掴めない。まったく光を持たない星、いわば邪悪の星だね。だから僕は心のうちで、この事件の犯人を暗黒星と名づけていたのだよ。
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簡単なあらすじになります。
関東大震災を免れた東京の麻布のK町は、古びた建物や瓦礫が点在する淋しい地域でした。そこには風変わりな資産家の伊志田(いしだ)が家族とともに暮らす西洋館がありました。
この一家が災厄に巻き込まれて行くのです。
前兆はごく些細な出来事に過ぎませんでした。
家族を撮影したビデオフィルムが焼けてしまい、目のところにぽっかりとあなが開いてしまったのが始まりでした。
その時に、長男の一郎青年が家族が立て続けに殺される夢を見たと言い出し、続いて一郎の姉の綾子が、館の室内の小物がいつの間にか移動していて、妹の少女鞠子の悪戯かと思ったけれど、鞠子はそんな悪戯はしていませんでした。
なんて事のない些細な出来事だった筈でした。
しかし、些細な事どころか一郎青年が見た夢の通りの事件が起こってしまうのでした。
まずは一郎青年が生死に関わる深手を負います。
一郎は不安を感じて明智小五郎に依頼をしていました。
明智と電話のさなかに賊に襲われてしまいます。
駆けつけた明智探偵によって危うく一命を取り留めることが出来ました。
目撃された賊は覆面にインバネスコートをまとった黒ずくめの男でした。
明智が警戒にあたるのでしたが、その中で資産家の妻と次女が次々に惨殺されてしまいました。
妻は入浴中に刺殺されて次女の少女鞠子はピストルで射殺されます。
明智もまた賊の放った凶弾に倒れてしまいます。
館の塔に夜な夜な出入りし、誰かと秘密の合図をしていた長女の綾子こそが犯人だと
最初は思われていました。
綾子は共犯者と通信していると疑われたのですね。
しかし
ネタバレになりますが長男の一郎青年が真犯人なんですね。
嫌疑の外に出るためにわざと深手を負ったのでした。
真犯人の一郎青年は
実は伊志田家の本当の子供ではありませんでした。
本当の親は伊志田氏に破産させられていました。
本当の親は復讐の為に産院で生まれた我が子を、看護師を買収して取り替え、伊志田家に送り込んでいたのでした。
私は怪奇色の強いカーのような作品が好きなのですよ。
塔のあるお城みたいな洋館なんてゴシック小説の舞台そのまんまだと思いました。
また冒頭のフィルムが焼けるシーンはまさに怪奇小説って感じの見事な不吉さを現しています。
焼けただれていく美男美女の顔貌。想像すると、まるで怪奇映画のようです。
怪奇趣味がお好きな方にはおすすめしたい小説です。