ホテルカクタス 読了 | 星導夜

星導夜

何気ない日常にも素敵なことが満ち溢れているように思います
日常のささやかなよろこび、楽しみを書き留めてみたいと思います


江國香織さんの

ホテルカクタスを読了した。

大人の為の童話と言っても良いだろうと思う。

ホテルカクタスとは言っても実態はアパート。

そこでであった3人の住人がいったん別れてしまうまでの4年ほどの日常を描いている。

3人の住人と描いたが

果たして彼等は人間と断定出来るものだろうかと思うことがしばしばだった。

2という住人

この人(?)は
割り切れないのは性に合わないという几帳面な人物。

きゅうりと呼ばれるのは

おおらかな性格。本文を引用させていただくなら 
「南のきゅうりは皆笑い上戸」

帽子と言うのは

ウィスキー好きで
ハードボイルドな性格。

ホテルカクタスでは

別に大事件が起こる訳ではない。

競馬に興じたり

音楽聴いたり

お酒を飲むという他愛のない生活だ。

しかし

そのささやかな日常にも

3人の性格が強調されているのは印象的。

2は2である。

きゅうりはきゅうりである。

帽子は帽子である。

他の何者にもなれないということだろうか。

自分を自分たらしめているのは一体なんであろうか?

この哲学的命題に

果たして正解はあるのだろうか?

アイデンティティーで説明出来るものだろうか?

ホテルカクタスは取り壊されることになり、3人は一旦はバラバラになるが

たとえカクタスが無くなっても

一緒に過ごした4年ほどの時間は

大切な宝物として

精彩な輝きを放つことだろう。