
「たまゆらの鏡大正ヴァンパイア伝説」は栗本薫さんの作品です。
ゴシックロマン小説で、
栗本薫さんの「六道ケ辻シリーズ」の第6作目に当たる作品です。
六道ケ辻シリーズには、大導寺竜介という重要人物が出てきて、この「たまゆらの鏡」に出てくるヒロインの百合さんは、のちの竜介の奥さんです。
物語は、百合さんが年老いて死を迎える時になって、女学生時代に起きた恐ろしい思い出を回想するという設定で語られています。
大正時代、百合さんは「伊奈新山」と呼ばれている地方の小さな都市で女学生時代を送りました。
その伊奈新山というところは、閉鎖的で、伝統や因習に支配されているようなところでした。
ネタバレになりますが、そこで起こる吸血鬼の事件がメインテーマです。
突然、伊奈新山に、斎門伯爵という、洋行帰りの貴族が住み着きます。
元領主の小月家に客人として伯爵が住み着いてからというものの、近くでは血を抜き取られたり、野犬に食い荒らされたような奇妙な死体が発見されるようになります。
百合さんの家は、元領主の小月家とは主従関係でした。
わがままな小月家の娘に付きそって百合さんは、斎門伯爵のところを訪れて、伯爵の養女のマリアンヌに着物を選んだり、日本語を教えるように頼まれます。
だけど、もうおわかりですよね。
伯爵の正体が吸血鬼であることには。
竜介に救われたものの、伯爵の口づけを密かに受けた百合さんは、かなり長命になり、誰にも言えない秘密は墓まで持っていく事になるのです。
吸血鬼ドラキュラや、吸血鬼カーミラに対するオマージュみたいな作品だなあと思いました。
耽美的なものや大正浪漫が好きな方にはおすすめかもしれませんね。
ただし、斎門伯爵たちの正体は、すぐにわかってしまいますし、ヴァンパイア小説としては、やはりドラキュラやカーミラには叶わないような気がしました。