寮の廊下には みらあじゅの恐怖博物館④ | 星導夜

星導夜

何気ない日常にも素敵なことが満ち溢れているように思います
日常のささやかなよろこび、楽しみを書き留めてみたいと思います

わたしは「恐怖博物館」の学芸員(キュレーター)をつとめるみらあじゅです。

ようこそ当恐怖博物館においでくださいました。  

私の創作した恐怖話がたくさん

この博物館には収められておりますよ。

本日は
「寮の廊下には」です。

「寮の廊下には」

僕の通っていた高校には寮があり遠くの出身である生徒たちは寮生活を送っていました。

寮は学校の裏山にあり昔から怪談話には事欠かなかったのです。

東西南北と4つの寮から構成されて居ますが、特に北寮は随分前から使われなくなっておりました。

「お化けが出すぎるから使用禁止にしたんだ」

そんな噂がまことしやかに流れているほどだったのですね。

僕の友人は使用禁止にはなっていなかった南寮にいたにもかかわらず、試験前のある晩なんとも気味の悪い体験をしてしまったのですね。

和彦くんと言うのが僕の友人の名前です。
毎日遅く迄体育会系の部活動に夢中になっていた和彦くんは、このままでは今回も赤点に違いないということに大変焦っていたんですよ。

前回の試験でも赤点になってしまいましたが、追試を受けてなんとかなりました。

しかし追試のために部活動は休まざるを得ませんでしたし、顧問の先生からは雷を落とされてしまいます。

もうあんな思いは懲り懲りだと、寮の自習室で勉強することにしました。

普段は夜には誰も居ない自習室なのですが、この日はやはり赤点取りそうな同級生の敬くんが居て、共に試験勉強に集中していました。

どのくらい時間が経過したでしょうか?和彦くんと敬くんとの間に会話はなくて、辺りを夜の静寂が支配していました。



ふと、廊下に人影のようなものが通るのを、和彦くんは視界の片隅に捉えました。

「あれ、僕たちの他にも試験勉強してるものが居るのか?」
そう思ったのですが、人影らしきものは自習室に入らずにそのまま通り過ぎて行きました。

それから間もなく、コツンコツンと、まるで松葉杖をつくような音が廊下から聞こえてきたのです。

「誰なんだ、この南寮には松葉杖なんてついている人は居ないぞっ」

そう不審に思った瞬間

突然和彦くんは金縛りにあってしまいました。

敬くんに助けを求めようにも、体も動かせず声も出せません。

そうしているうちに、いきなり自習室の扉が音もなくスウ〜ッと開きました。
そして片足がない老人が現れて

「イヒヒヒ」とゾッとするように笑ったではありませんか。

和彦くんが覚えていたのは、そこまででした。あまりの恐ろしさに体育会系の部活動してる和彦くんでさえ、気絶してしまったのですね。
後で敬くんに聞いたところ、敬くんも松葉杖の音は確かに耳にしたし、恐ろしい老人の姿も見ては居ましたが、やはり金縛りに遭って動けなかったとのことでした。

この事件があってからは、自習室を使う生徒は誰も居なくなったそうです。