
留吉少年は、すこしばかりの賞与が出たので
思いきって同僚の与作・田吾作少年と一緒に
初めて遊園地にでかけて行った。
まだ少年の彼らは思う存分楽しんで
さあ帰ろうとなったときに
見知らぬ幼い女の子から声をかけられた。
「お兄ちゃんたち、私と一緒にあの飛行機乗ってちょうだい。お願い🙏お願い」
こんな小さな子供がなんで保護者と一緒にいないんだろう。
迷子として案内所に連れて行った方が良くはないだろうか。
留吉少年たちは迷ったものの
結局は女の子のすがるような目に負けてしまい、一緒に乗った。
飛行機から降りると女の子は
「ああ、楽しかった。ありがとう」と言うなり、その姿はみるみるうちに黄昏時の風景に溶けて行った。
後で聞いたところ、以前その遊園地🎡に重い病気でもう長く生きられない女の子が来たそうだ。
最後にどうしても飛行機に乗りたがっていたそうだ。
「飛行機に乗れば自由な鳥さんみたいに、どこまでも行けるね」
それが女の子の口癖だったという。
「良かったなあ、最後に夢がかなって」
留吉少年たちは
恐いというよりしんみりして、自由な鳥となって病気を気にせず大空を羽ばたく女の子の幸せを祈った。
作者より
留吉少年が出てくるシリーズはひとまずこれで終了します。
私の描写力が足りないせいか、
昭和30年代に工場の寮生活をしている留吉という、限られた条件で恐怖話をする事が難しくなってしまったのです。
私のブロ友さんには、音楽好きな方がいらっしゃるんですよ。
その方は「ジャズ喫茶」という限られた空間の中で、
毎回楽しいお話を披露して下さいます。
悲しい事に私にはまだまだネタ不足ですし描写力がないので、ひとまず留吉少年の出てくる話はこれでおしまいにします。
ぬいぐるみの留吉の方は
クレクレで態度が大きいのに
こちらの朴訥な留吉少年は、いつも恐い目にあって
ふんだりけったりでした。
最後は恐い話というより、しんみりした話でまとめました。
せっかく恐怖劇場再会したので、
次回からはもっと恐い話を書くつもりです。
それではみなさま、新生恐怖劇場でお待ちしています。
恐怖劇場支配人みらあじゅより。