研究と現場の垣根 | 佐藤晃一のブログ

佐藤晃一のブログ

アスレチックトレーナー

経験や勘は科学ではないのだろうかを読んでの感想です。スポーツにおける、研究者の現場に対する不満と、現場でのコーチの勘や経験への評価不足に関して書かれています。

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用されている「科学者サイドには、我々がこれだけ研究し、現場に役立ちうる成果を公表しているのに、現場の 人たちはなかなかそれに目を向けてくれないで経験の枠から出ようとしないという不満があるよう に感じられます。」が、研究(科学)と現場(経験)の垣根を象徴していて印象的です。

私は「科学」とか「数字」(「科学で証明して」とか、「数字でみせて」的な発言)は、研究者が現場の人々に対して使う「差別用語」の思えるときがあります。現場の人と研究者が会話をしていて、これが出ると、話が進みにくくなります。

現場の人間にとっては、研究を待っていたら、流れに取り残されてしまいます。研究の結果が出るのには時間がかかります。数字が出るまでの時間、まして、ジャーナルに掲載される時間を考えたら、それはそれは。さらに、研究の結果をそのまま現場に還元することは、必ずしも簡単ではなかったりします。科学の結果を実践するのが現場ではなく、科学を含めた材料を試行錯誤してやりくりするのが、現場だと思います。

いつから、「研究と現場」が分かれてしまったのでしょうか?

研究と現場は共存共栄すべきというか、一緒のものだと思
います。例えば、Evidence Based Medicineにおいて、現場での経験は、エビデンス(科学)のひとつです。US Preventive Services Task Forceによると、Level IIIのエビデンスは「Opinions of respected authorities, based on clinical experience, descriptive studies, or reports of expert committees.」と定義されていて、「clinical experience」が含まれています。まあ、もちろん研究者の立場からは、結局「質の悪い科学」ととられてしまうと思いますが。

というわけで、「研究」と「現場」の間で「研究と現場」を両方やっているつもりのものとしての意見でした。