この文章は、2015年10月24日(土)19:00開演の劇団ドリームチョップ「教授とその弟子」についての劇評です。
「知らないからそんなこと言えるんだ」という物言いが正しいのなら、「知っているからそんなこと言えないんだ」となる。笠原教授は言わないのではなく、言えないのだ。
劇団ドリームチョップ「教授とその弟子」は、妻に先立たれた中年男性教授、笠原を取り巻く人々と状況の一節である。彼が籍を置く大学には、改革の波が押し寄せている。女性助手の坂井は笠原教授を慕い、彼を支援する。改革側の女性准教授、奥泉は執拗に教授に詰め寄る。
笠原教授の講義ではずっと「旅人たち」というマイナーな小説を取り上げている。学生の受けは良くないこの講義をモグリで受講したいと、理工学部の男子学生、木戸が訪れる。役に立つ理系の学生が、役に立たないとされる文学を選んだのだ。文学の小さな勝利かと思えば、そうは終わらない。複数の問題が渾然となったまま物語は進む。
知り過ぎたが故に動けない教授、教授について熟知していると信じて疑わない助手、知らない事実も存在すると気付かない他者に苛立つ准教授、これから知ることに期待する学生。教授が朗読する小説の一場面と、四人が重ねられる。舞台上では照明が揺れ、波の音が響き、四人は渦を巻くように歩く。現実と想像の境目が曖昧になるこの場面では、彼らを束ねていた「旅人たち」の強さが示されねばならない。彼らに何かを教えてくれた特別の存在である。過剰なくらいの朗読でもよかっただろう。
何かを知ってしまったが故に、言えない言葉が増え、取れない動きが増える。文学を知ることに希望を抱いた木戸は現実を知り、行動を変える。とかくこの世はままならぬ。そんな台詞で諦めてしまえるだろうか。多くを知り、悟ったような笠原教授にもできないはずだ。何度も何度も同じ小説を読み解き続けているのは、まだ知らない何かを見つけるためではないか。文学、それを含む芸術、もちろん演劇も、その中にあるまだ知らない何かが喜ばしいものであることを願われて、続けられているのではないか。
この文章は、2015年10月24日(土)19:00開演の劇団ドリームチョップ「教授とその弟子」についての劇評です。
どこかで聞いたような題名で、その明治の文豪が付けたのではないかと思われる「教授とその弟子」、期待と不安を伴って会場に入る。この作品の作・演出をしている井口時次郎氏の作品は何本か見ているが、ロマンティックな甘い感じのものが多かったので、それとは趣きを異にしているように感じていた。
舞台は簡素で余計なものは何もない。薄暗くボンヤリと浮かんで見えるのは白い机と舞台中程奥に白く太い物が床より1m程上から浮かんで見える。そして、左奥には切り取られた出入り口と思われる所から薄い明かりが見えている。
さて、客電が消えて切り取られた左奥から明かりが射し込み男が一人出て来る。逆光の中に見えるシルッエットの男が語りだす。だんだん明るくなってくると本を片手にしているので朗読をしていると分かってくる。本から目を離して話し出した所から本編の芝居にはいったらしい、が読んでいる声と話している声に変化がない、残念なところである。
読んでいた本は「旅人たち」という架空の文学小説で、海で溺れた話らしい、ひょろり男という名がよく出て来るのであるがその音ばかりが耳に残って内容がよく分からない。文学は人を傷つけるが救いもするという壮大なテーマも出て来るがこれもよく分からない。
登場人物は4人。こだわりの多い、目の前の問題から逃げてばかりの大学教授、その教授を助けて、そのことに人生の意義を持っている助手である若い女性、大学改革委員会に真剣に取り組むよう教授に意見し続ける准教授である中年女性、理系の学部でありながら、この教授の講義に感銘を受け、モグリで講義を受け続けている男子学生、である。
この人物たちの関係性も芝居を見た限りでははっきりせず、教授と助手と准教授、教授と助手と男子学生、それぞれが三角関係にも見えるし、そうでもないようにも見える。各々に立場がありながら相手によって話し方や言葉を変えずに、裏表がないと言えば良い事のようだが、社会性が全く感じられない。
この一本の脚本の中に様々な問題やテーマを盛り込んでいるのに、文学は・・・、大学改革委員会・・・、学ぶとは・・・、生きるとは・・・、等々。なのに単なる色恋にしか見えないし、その色恋もうすっぺらにしか見えないのは真に残念なことである。いっそのこと恋愛に的を絞った「教授とその弟子たち」を見てみたいものである。
どこかで聞いたような題名で、その明治の文豪が付けたのではないかと思われる「教授とその弟子」、期待と不安を伴って会場に入る。この作品の作・演出をしている井口時次郎氏の作品は何本か見ているが、ロマンティックな甘い感じのものが多かったので、それとは趣きを異にしているように感じていた。
舞台は簡素で余計なものは何もない。薄暗くボンヤリと浮かんで見えるのは白い机と舞台中程奥に白く太い物が床より1m程上から浮かんで見える。そして、左奥には切り取られた出入り口と思われる所から薄い明かりが見えている。
さて、客電が消えて切り取られた左奥から明かりが射し込み男が一人出て来る。逆光の中に見えるシルッエットの男が語りだす。だんだん明るくなってくると本を片手にしているので朗読をしていると分かってくる。本から目を離して話し出した所から本編の芝居にはいったらしい、が読んでいる声と話している声に変化がない、残念なところである。
読んでいた本は「旅人たち」という架空の文学小説で、海で溺れた話らしい、ひょろり男という名がよく出て来るのであるがその音ばかりが耳に残って内容がよく分からない。文学は人を傷つけるが救いもするという壮大なテーマも出て来るがこれもよく分からない。
登場人物は4人。こだわりの多い、目の前の問題から逃げてばかりの大学教授、その教授を助けて、そのことに人生の意義を持っている助手である若い女性、大学改革委員会に真剣に取り組むよう教授に意見し続ける准教授である中年女性、理系の学部でありながら、この教授の講義に感銘を受け、モグリで講義を受け続けている男子学生、である。
この人物たちの関係性も芝居を見た限りでははっきりせず、教授と助手と准教授、教授と助手と男子学生、それぞれが三角関係にも見えるし、そうでもないようにも見える。各々に立場がありながら相手によって話し方や言葉を変えずに、裏表がないと言えば良い事のようだが、社会性が全く感じられない。
この一本の脚本の中に様々な問題やテーマを盛り込んでいるのに、文学は・・・、大学改革委員会・・・、学ぶとは・・・、生きるとは・・・、等々。なのに単なる色恋にしか見えないし、その色恋もうすっぺらにしか見えないのは真に残念なことである。いっそのこと恋愛に的を絞った「教授とその弟子たち」を見てみたいものである。



