この文章は、2016年11月26日(土)19:00開演のcoffeeジョキャニーニャ『キラキラモノトーンタイムマシンラプソディ』についての劇評です。
これだけの劇にどれだけの暗転、時間の巻き戻しと反復・微修正が飽きもせず繰り返されたことだろう。そして、主人公の度を越した増殖。せめてラストが印象的な終わり方だったら。だがその願いもあえなく崩れ去った。不快感はない。楽しんだ方だ。暗転の度に黒子たちが実にきびきびと楽しそうに、不要と思える軽微な舞台の改変に従事していた姿も含め。それがどうしてか一番心に残った。
劇処第9作は、coffeeジョキャニーニャによる『キラキラモノトーンタイムマシンラプソディ』。劇団名も、「第あの紙ヒコーキくもり空わって回公演」という形容付きの演題も、意味不明である。分かるのは日本語表記のすべての可能性を網羅しているぐらいか。劇のあらすじを劇処の公演紹介冊子で読んでみると、最後に「※あらすじは変更されます」とある。別に挿まれていた劇団のパンフでは全く異なるあらすじが載っていた。「作・新津孝太 演出・GSI」も、二つ折りのキャスト紹介版では、新津孝太には「出雲のそば屋から」が加わり、「GSI」には(戯曲製作委員会)が添えられていた。この劇団ははぐらかすのが、或いは自分の正体(あるのか知らないが)を隠すのがとても好きなようである。
先入見を持たず(持てず)、素直に流れに乗ってみた。葛巻こうじ(年も靴のサイズも26)は引きこもりだ。親のすねをかじりながら実家でゴロゴロしているダメ人間。家族は父と姉と自分(母親は出てこない)。その彼に転機が訪れる。父親が仕事を辞めて旅に出ると言い出し、姉も結婚して家を出ていくと言う。そうか、これが契機になって彼の自立を促す、とは勿論ならない。それは別の劇団の領域であろう。何とか今の生活を継続すべく、こうじは父や姉を説得する。が、ことごとく失敗。そこへ現れたのが未来から来たと称する謎の女。彼女は少しだけ時間を戻すことができると言う。父が旅に出る原因を、姉の結婚と踏んだこうじは、少し過去に遡り、妨害工作を画策する。が、その過程で原因はむしろ父と自分との関係にあったと気づく。そうか、父との和解が真のテーマ、最後はめでたしめでたしかと先読みしたら、勿論そうはならなかった。それは別な劇団の領域であろう。結局、自分が原因でもないと分かり、旅を阻止する新たな理由付けが求められる。劇に倣って途中は省くが、父が中東に出掛けたら、核戦争が発生するというのがそれだ。そこで、また時間を巻き戻して新たな劇中劇が演じられる。今度はダメ人間にも崇高なミッションが与えられる。地球の破滅を救うヒーローの役だ。逆転ホームランが生まれるかも知れない。しかし、勿論そうはならない。それは別な劇団の領域であろう。使命に失敗し、父は旅立つ。
数年後核戦争も起こらないまま、父は中東で知り合った女性と帰国する。結婚する父、また結婚詐欺師から警察官に乗り換えた姉も家を出る。残されたこうじは、不時の入金があったようで、飢え死にもせず、働きもせず相変わらずのぶらぶら生活。同じプータローが住み着いて、新たな集団生活が始まる。結局、それが所期の落し所だったのだろう、上演者全員がこうじになって幕が下りる。
12月に入った。「クリスマス・キャロル」の三つの亡霊が、今年も過去・現在・未来に誘う。こうじとプータローたちの3年後を見てみたいものだ。