根拠発掘屋

「脚下照顧。」

中学生の頃。

全校集会で、

校長先生が、

よく言っていた言葉があります。

「脚下照顧。」

自分の足元を見つめなさい。

そんな意味だったと思います。


校長先生は、

黒板に向かい、

力いっぱいチョークで、

「脚下照顧。」

と書きました。

力が入りすぎて、

チョークが、

「ポキッ。」

また、

「ポキッ。」

僕たちは、

そのたびに、

笑いをこらえるのに必死でした。

話の内容は、

ほとんど覚えていません。

でも、

「脚下照顧。」

という言葉だけは、

頭に残りました。


後になって、

『みなさんのおかげです。』で、

貴さんが、

先生役で、

「先生の名前は……」

と黒板に書くのを見るたびに、

あの校長先生を、

思い出しました。

そして、

一人で笑っていました。


根拠発掘。

なぜ、

話の内容ではなく、

「脚下照顧。」

という言葉だけが、

残ったのでしょう。

折れ続ける、

チョークが、

印象に残ったからなのか。

言葉の響きが、

残ったのか。

本当の理由は、

今でも、

分かりません。

ただ、

私の記憶には、

話の内容よりも、

その時の光景や、

言葉の方が、

強く残ることがあるようです。

そして今、

昔の自分を振り返りながら、

やっていることも、

どこか、

「脚下照顧。」

なのかもしれません。

あの頃の【僕】は、

そんなことより、

チョークが折れるたびに、

笑いをこらえていましたが。

続く。

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