根拠発掘屋
「ナパーム弾。」
-ひろし君③/③-
中学生の頃。
毎週、
『週刊少年ジャンプ』を読むのが、
楽しみでした。
その日も、
ひろし君と、
『こち亀』の話をしながら、
学校から帰っていました。
僕は、
通学路脇の用水路に、
学生帽を落としました。
用水路に下りて、
学生帽を拾い、
道へ上がってきた時でした。
その週の『こち亀』で、
両さんに向けて使われていた一言を、
ひろし君が、
僕を指差し、
大声で言いました。
「戦車の中から、
ナパーム弾のような男が出てきた。」
僕は、
大笑いしました。
何がおもしろかったのか。
今では、
うまく説明できません。
でも、
その時いた場所だけは、
はっきり覚えています。
⸻
あれから何十年。
あの道を通ることがあります。
すると、
景色を見ただけで、
あの一言が、
頭の中によみがえります。
出来事より先に、
言葉が浮かびます。
そして、
また笑ってしまいます。
なぜなのかは、
分かりません。
⸻
根拠発掘。
昔の出来事は、
ずいぶん忘れています。
それでも、
あの日の一言は、
景色と一緒に、
残っています。
橋。
小川。
落とした学生帽。
土手を上がってきた【僕】。
そして、
ひろし君の、
「戦車の中から、
ナパーム弾のような男が出てきた。」
という一言。
なぜ、
これだけが、
何十年も残ったのでしょう。
言葉がおもしろかったからなのか。
ひろし君と笑った時間ごと、
記憶に残ったのか。
学生帽を拾った出来事と、
結びついていたからなのか。
本当の理由は、
分かりません。
ただ、
あの景色を見ると、
今でも、
あの日の言葉を思い出します。
そして、
少し笑います。
続く。
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