腕を振るだけ! シンプルな運動で身体のOSが変わる! 武術界で〝謎の老師〟と呼ばれる著者が、多年に渡る武術修行の果てに見つけたのは、すべての運動の出発点となる「身体の基準性」だった。日常生活から武術・スポーツまで、別次元の動きの「質」を手に入れる!
「法を得たシンプルな動作の持続のなかにこそ成長し続けて止まらない種は宿る。」
武術やボディワークをやっている人は読むべき本。
世に出ない隠れた武術の達人として名高い小用茂夫先生が遂にご著書を出された。
この本では〝謎の老師〟になっている。
私が初めてお会いしたのは20年以上前で、例のN氏に連れて行ってもらい色んな技を見せていただいた。
この時に荒唐無稽で漫画的に語られることが多い中国武術の達人の話が、あながち嘘ではないことがわかった。
この本で何度も語られる「身体の基準」は、凡人の私が一番大事にしているところ。
思うに、私は治療院を初めて10年以上になる。
今まで最終的には患者さんの自立を目指してやってきて、施術以外に私が良いと思ったセルフケアを教えていた。
しかし、治療を受けに来るかなりの人が身体に良いはずのセルフケアをやっても、逆に悪くなる人が多いことに途中で気が付いた。
動作を見ると明らかに間違った動きをしているのだが、本人は正しくやっていると思っている。
大きな動作の前に、垂直・水平などの身体の基準を明確にする必要がある。
10年ぐらい前に、関西で身体の動かし方を教える先生と友人になった。
私が知る先生の中でも教えるのが大変上手な人だが、彼ですらセルフケアを教えた人が自分で出来るようになるには長い年月が掛かることがわかった。
更に元々動けない人が基盤となる身体を作るためには、整体や鍼などの施術を受けなければならないことを逆に教えられた。
また、少し前から武術を教える手伝いをしているが、習いに来る人が先生と自分の動きの何処が違うのかをわからない人ばかりで愕然とした。
やはり、本人は正しい動きをしていると本気で思い込んでいる。
もちろん、私自身完璧な動きが出来ているとは思っていないが、過去の私は出来ないなりに何が違っているとか間違っているかは自覚していた。
若い頃は先生の指摘に全く応えることが出来ないので、逆切れしたこともあるくらい。
身体の基準については、わかってくればくるほど厳格になってくる。
所謂ポジティブシンキングで「出来た!」と思い込んでも、絶対に出来ない。
この本の「揺腕法」や刀禅で行われるシンプルな功法は、基準の価値がわかる縁のある人にしか続かないと思うが、本として世に出されたことは感謝しかない。