前回 <<           >>次回


----------------

「D-蒼白き堕天使1」 菊池秀行 著

出版社:朝日ソノラマ社 ISBN:9784022655103

値段:480円(税別)

Dー蒼白き堕天使 1 (朝日文庫 き 18-11 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 9)/朝日新聞出版
¥504
Amazon.co.jp


あらすじ:「旅のあいだは吸血を禁じるとの条件tきで、クラウハウゼンの村へ送ってほしいというバラージュ男爵の護衛依頼をDは承諾した。青いマントをまとったその美しい貴族は、西部辺境統制官である父を弑する旅に出るのだ。貴族と貴族を狩るハンター、本来なら到底あり得ぬ奇怪な組み合わせの一行は、間違いなく選りすぐりの刺客たちが待ち受ける危険な街道へと、歩を踏み出した。」


----------------

D、通算11冊目。シリーズとしては9作目となる「蒼白き堕天使」を紹介します。今回なんと全4冊という事ですが、1巻のあとがきには「1冊を2冊に分冊した」と書かれてある…。あれぇ~?増えてないかぁ?別に劇オコプンプン丸ではないけれど、突っ込みたくなりました。


でも、これ到底2冊じゃ収まらないですよ。壮大になるのも仕方ないかなと思った。貴族とそれを狩るDが共に旅をするわけですよ。もう、この設定だけでいつも以上に面倒くさい旅になるのはなんかもう分かりそうなわけです。


----------------

物語は、Dとバラージュ男爵の二人がメインですが、そこにミスカという女貴族、それに旅の途中で、タキ、メイ、ヒュウという人間も加わり異色なとんでもないパーティで旅を進めていくわけです。今回は、Dの口数がいつもより多く「初期に近い?」様にも思われます。でも基本はぶっきらぼう。


そして、おなじみの「刺客」御一行様も大奮発で沢山登場します。Dと言ったら、勿論Dの凄さも堪能したいけど、襲いかかってくる「強力な刺客」達がいるからこそ。彼らがいないとやはり盛り上がりませんよね。花を操り、貴族の身体に花を咲かせる刺客に、空から襲いかかってくる刺客、傀儡師、土中に潜み攻撃をする刺客などなどもう強敵ぞろい。


パラージュすらも苦戦する相手もいる位。彼らを掻い潜るため、クラウハウゼンまでの道のりは過酷になっていく。道中、貴族が残した禁断の場所にまで潜入。そこで貴族が残した遺物と戦うなど、刺客以外でも、Dに襲いかかる敵たち。Dの行く所に戦いありなのです。


----------------

今までは、人間の視点から「貴族」を見て、Dの立場を見て物語に浸るという事が多かったのですが、今回は、「貴族」が人間を見た時にどう想うのか、Dをみて彼らは何を思うのか。そういう部分が描かれているというのは今回の設定が完全に活きた証拠ですね。Dがいかに特別なダンピールかを改めて知るいい機会になりました。


----------------

貴族は、人間と絶対的に違うのか。今まではこれに対して明確に「違う」なんて言えましたが、彼らとてかつては一時代を築き、繁栄をきわめていた存在です。人間とは確かに尺度は違うかもしれない。しかし、彼らもまた「過去」に想いを馳せ「思い出」に浸ることもある。

女貴族、ミスカ嬢がレコーダーに収められているかつて過ごした日々を再生しながら思い出に耽るというシーンが描かれています。それをみると、なんだか、人間よりも長く生きるからこそ「過去」というものを大事にしているのかもしれないなと思える描写に見えました。つまり、精神的な部分では人間と貴族の間には微妙に似通った部分があるともいえるわけですね。


しかし、ミスカは「人間如きに見られて同情の目で見られた」という事で怒りつつもどこか恥ずかしさもにじませているようなもう色々な感情がごった返しているんですけれども、何故「同情の目」を向けられたのか。それはもしかしたら「同情」ではなく、実は「人間と同じなんだ」という「理解を示そうとした目」であるという事に気付けてもらえたらな~とまぁ、貴族だからね、人間の気持ちを理解しづらいのだろうけど分かってほしかったなぁ。


貴族にも実は人間と同じ面も兼ね備えているんだよというのを双方に教えたかったD。でもまぁやり方が不器用だったなとは思います。


----------------

貴族なのにDに良い様にやられたり、刺客に襲われそうになったりなんか変なパワーを持っているミスカ嬢がこれからどうなっていくのかが今後の見所になっていくのかな。しかし、彼女が持ってしまったパワーにはさすがのDも何故か危惧しているシーンがあり、これも2巻への伏線になるのか。


刺客たちがあっさりやられていくのは仕方ないとは思う。が、『薔薇姫』のようにもう少し歯ごたえある敵が欲しいな。


しかし、まだまだゴールまでは遠いですからね。これからまた次々と敵が襲いかかってくるのでしょう。



2巻に期待しながら今回はここまで。


===============

次回は、かなり久しぶりのシリーズ。

『鋼殻のレギオス6』を紹介します。

===============