カラスにも構造色? | 構造色事始

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構造色の面白さをお伝えします。

これまで鳥の羽は構造色によるものだという話を書いてきましたが、カラスの羽にも構造色があるのでしょうか?

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カラスは真っ黒だと思われがちですが、良く見ると本当の黒というわけではなく、ちょっと紫がかった色をしています。

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(李銀玉氏提供)

羽を見ても、下側が少し紫がかって見えています。

こんなカラスの紫色に着目した研究結果が、最近、発表されました。韓国の李銀玉さんは、宇都宮大学と大阪大学でカラスの研究をしていました。カラスの羽が黒いのも、クジャクと同じように、小羽枝と呼ばれる羽枝についた毛のような構造の中にメラニンの顆粒がたくさん入っているためです。

カラスのオスとメスの違いを調べるために、電子顕微鏡で小羽枝の断面を調べてみたものが次の写真です。

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(李銀玉氏提供)

小羽枝の中のメラニン顆粒は、直径200-357nm、長さ2ミクロンの円柱形をしています。カラスのオスとメスは見た目にはほとんど区別がつきませんが、メラニン顆粒の入り方にははっきりとした違いが見られます。オスの方はメラニン顆粒が多く、また、小羽枝の表面には一列に並んだ綺麗な配列が見られます。一方、メスはメラニン顆粒が少なく、表面にはなく、むしろ内側に乱雑に分布しています。

クジャクの場合は、メラニン顆粒が正方格子に並ぶことで色付いていたのですが、オスとメスとでこんなに違いがあるのに、紫色に見える点ではオスもメスも一緒です。この理由を、李さんらはメラニン顆粒の大きさや位置が乱雑になっていて、カラスの場合は発色には寄与せず、むしろ、小羽枝の表面にある外表皮が紫色に見える原因であることを突き止めました。外表皮は右の写真では黒い層としてはっきりと見えてますが、オスでもメスでも共通にあるからです。

光がこの外表皮に当たると、シャボン玉や油膜と同じように薄膜干渉を起こし、弱い紫色を出すことが分かったのです。この色がどんな役に立っているのかは分かりませんが、カラスの羽にはメラニン顆粒が多いために、普段目立たなかった紫色がはっきり見えているのかもしれません。(SK)

【参考文献】
E. Lee et al., Ornithol. Sci. 11, 59 (2012).

構造色研究会のホームページ:http://mph.fbs.osaka-u.ac.jp/~ssc/