時はマッカーシズムが吹き荒れる1953年のアメリカ、空軍予備兵のミロ・ラデュロヴィッチが国家機密を脅かした罪に問われる。裁判も無しに有罪となった彼に対し、同情的な立場で取材をしたのは CBS の報道番組「See It Now」。たちまち軍から製作サイドに圧力がかかるが、同番組の名物プロデューサー、フレッド・フレンドリ(ジョージ・クルーニー)やキャストのエドワード・マロー(デヴィッド・ストラザーン)らは放映を強行。

国全体を支配する「赤狩り」の風潮に対立を強めていく同番組は、ついに上院の政府機能審査小委員会で決定的な支配力をふるっていたジョセフ・マッカーシー上院議員についてのレポートを放映。不服がある場合には同じ時間枠を開けて編集抜きで反論を放映する、とあおるのだが…


米国で伝説となっている名キャスター、エドワード・マローを題材にした伝記映画で、グラント・ヘスロフと共に脚本を執筆し、また演出も担当したのはジョージ・クルーニー。ロバート・ダウニー・Jr やパトリシア・クラークソンなど大物俳優も出ていますが、登場時間はきっぱり短め。なおタイトルは番組で同キャスターが必ず口にした〆の台詞から取られています。


モノクロームで撮影された本作品、話にあまり尾ひれをつけずに、ストレートかつシンプルに物語を進めていきます。主人公のマローも、その敵役として登場するマッカーシー議員も、あえてその人間性を掘り下げることなく、時間軸に沿って淡々とイベントが発生していく、というのは、クルーニー流の演出の味なんでしょう。ちょっと淡白すぎる気がしなくもないのは、脚本家=演出家にありがちな、背景の説明不足という構造的な問題もあったように思います。


面白いなぁ、と感じたのは、登場人物がやたらと煙草を吸うあたり。番組開始直前までキャスターがスタジオ内でスパスパ吸ってるのも、今から見ると異様ですが、驚いたことに片手の煙草に火を灯したままで放送を開始してしまうあたり。そういう所から時代の差を感じさせるというカラクリはとても新鮮でした(でも作品のメイン・テーマに係わるあの当時の時代の雰囲気、みたいな物はさほどうまく演出できてなかったかも?)。


しかし伝説の名キャスターを題材にしながら、映画の興味はあくまで歴史的事実で、キャラクターの掘り下げは二の次、というスタンスだったのは意外でした。反権力と戦う報道番組、と言えばマイケル・マン監督、パチーノ、クロウの「インサイダー 」を思い出しますが、考えてみるとこの映画で取り上げられている番組も CBS でした(最近はなんだか時流に乗り遅れた年寄り臭い局というネガティブなイメージもあったりしますが)。えらくこじんまりまとめられた本作に比べ、さすがにマン監督の作品はいろんな意味で大作だったなぁ、と思ったのでした。


「赤狩り」の時代をからめたハリウッド映画は少なくなく(最近ではジム・キャリーの「マジェスティック 」か?)、また '99 年のオスカーで功労賞を受賞したエリア・カザンを鬼のような目つきで睨んでいたエド・ハリスなど、触発されて思い出した物はいろいろあって、そういう意味でも満足の行く観劇だった気がします。

決して傑作でも大作でもない作品ですが、観て良かったと思える良質な作品だと思います。レンタル待ちしてもいいでしょうが、映画好きは映画館に行っても損はしないんではないでしょうか?


IMDb: Good Night, and Good Luck.
Official Site: Warner Independent Pictures

GoodNight

舞台はFBIの取調室。ベガスを舞台にヤクザ同士が派手に打ち合った事件の真相を探る捜査官( ルーシー・リュー)の前に座るのは、華奢ながら芯の強そうな妙齢の美女ドミノ(キーラ・ナイトレイ)。彼女の口から語られる事件の真相とは…


というセットアップや、映画の背景(実在の賞金稼ぎドミノ・ハーヴェイを元にした創作映画。公開直前に彼女薬で中毒死)などは、日本公開も近いのでここではあえて省略。


最近特に力が入った熱い作品が目立つトニー・スコット監督の最新作で、出演者もミッキー・ローク(出番は少ない)、クリストファー・ウォーケン(さらに少ない)、ミーナ・スヴァーリ(もっと少ない)、デルロイ・リンドーなど、脇役まできっちり豪華。

というわけで期待度は高かったのですが、イマイチ観劇後の満足度という点で釈然としないモノも。50 億とも噂される制作費に対し、米国公開第1週で5億ちょっとの興行収入7位登場という事で、客の受けもイマイチだったよう。


というわけで、何が不満だったかを振り返ると、やたらと凝った、まるでミュージック・ビデオのようなビジュアル・スタイルに、時間軸をシャッフルして組み立てるフォーマット、と、プレゼンテーションがやたら凝っている割に、主人公ドミノの人間描写はあまり厚くなく、いま一つ感情移入できなかった点、なのかなぁ。やたら血しぶきが飛ぶ割には、人間に通う血が画面から感じられないっていう不満かも。


改めて考えてみると、トニー・スコットの演出する暴力性やクールさって、きっちり計算されつくされていて、その隙の無さに息苦しさがあるのかもしれない。計算された粗暴さって、粗暴じゃないわけで。


そんなこんなで、プレゼンテーションこそがすべて、のバイオレントでクールな映画になるはずが、そのプレゼンテーションの完成度の高さゆえにバイオレントでもクールでもなくなっている、というとっても不思議に逆説的な作品だよなぁ、と思いながら映画館を後にしたのでした。


邦題は「ドミノ」で、今週末から公開されるようです。日本での評判はいかに…


IMDb: Domino
Official Site: New Line Cinema

Dmonio

ドリュー(オーランド・ブルーム)はスポーツ・シューズに勤務する新進気鋭のデザイナー。彼が長年打ち込んできたデザインは新作ラインナップのフラッグシップとして採用され彼の名前は世界的に有名に。しかし新商品の打ち上げは大失敗し、会社に約一千億の損害をもたらす。会社は首になり、美しいガールフレンドのエレン(ジェシカ・ビール)にはフラれ自暴自棄の彼に追い討ちをかけるように、妹( ジュディ・グリア)から父が旅行先で突然死んだとの電話が。
長男の彼は父の遺骨を受け取りにケンタッキーのエリザベスタウンまで急きょ旅する事になるのだが、誰も居ない深夜のフライトでオーバーなくらい親切でなれなれしいステュワーデス(キルステン・ダンスト)とめぐり合う…


ザ・エージェント 」や「あの頃ペニー・レインと 」で知られる有名なキャメロン・クロウ監督が脚本と演出をこなし、プロデューサにはトム・クルーズの名前も。
冒頭に出てくるオレゴンはポートランドの靴メーカーは、ナイキを意識しているのは自明で(実際ナイキの本社がある)、アレック・ボールドウィンが演じる社長もなんとなく実在の人物を彷彿。PDX 空港のショットは全然違うなー、と思って調べたら、やっぱりカリフォルニアの某空港で撮影されたんだそう。


打ち込んだ仕事が挫折し失意の青年が、父親の生まれ故郷の田舎で家族やコミュニティの暖かさに触れ、気の合う女性と知り合い、次第に生きる力を取り戻していく、というようなプロットが中心に流れているのですが、実は見終わって数日経った今でも、なんとなく自分の中で整理がつかないような、不思議なモヤモヤが残っている作品です。


オーランド・ブルームは相変わらず男前だし、キルスティン・ダンストも例によってキュートで二人のケミストリもばっちり、だけど、美形のブルーム君からは世界的に有名になったインダストリアル・デザイナのカリスマ性も、そこから落ち込んだ落差の大きさも感じる事はできず。
また、雑多なエレメントが未整理のママどんどん挿入されて積み重なるストーリーはひどく混乱しているし(スーザン・サランドンのタップ・ダンスや下ネタ・ジョーク、ありゃー、何なんだ…)、2時間を越える尺のわりには未消化のエピソードも多く感じてしまう。


さすがクロウ監督、とうならせる抜群のBGMの選択ながらも、次から次へ切り替わる忙しさがウザく、もう少し編集に力を入れてもよかったかもだ、とも。(某映画評論家は「素人の旅行体験話って本人は面白そうに振り返ってるけど聞いてる周りはしらけちゃう事あるよね」というような喩えを出してましたが、言いえて妙だなぁ…)


そんなこんなで、いろいろ不満はあるのですが、部分部分ですばらしく完成度の高いカットもあって(隣のおばちゃんはボロボロ泣いてたし)、ちゃんと満足している部分も多いので、全体的にどう考えてたらいいものか、なんとも評価に悩む観劇になったのでした。

邦題は「エリザベスタウン」となり、来月公開らしいですが、テーマはなかなか深く複雑なので、オーランド・ブルーム目当てで来る若い観客にはあんまり受けないかもなぁ、などと余計な心配をしてみたりしました。


IMDb: Elizabethtown
Official Site: Paramount Pictures

Elizabethtown

発明家のウォレスとそのアシスタント犬グルミットは、畑を荒らす野ウサギの駆除を事業化。折りしも町は年に一度の巨大野菜コンテストを目前に控え、ガジェットを駆使した凸凹コンビは野良ウサギの捕獲作業に大忙し。

そんな中、巨大野菜コンテストの主催者でもあり、豪邸に住むレディ・トッティントン(声:ヘレナ・ボナム=カーター)は、自分の庭に巣くうあまりの数の野ウサギに音をあげていた。
彼女と結婚し財産を狙うヴィクター侯爵( レイフ・ファインズ)は銃でウサギを追い払おうとするのだが、心優しいトッティントンは巨大吸引機で一網打尽にウサギを生け捕りにしたウォレスにすっかり惚れてしまう。
すべてが丸く収まるかに思えたのだが、すぐに夜な夜な野菜を食い荒らす巨大ウサギの怪物が町を荒らすようになる。コンテストの開催が危ぶまれるようになり、ウォレスは困り果てているトッティントンに怪物退治を約束するのだが…


とまぁ、そんなストーリーは実はどうでも良くなる程、待ちに待ったウォレスとグルミットの新作がついに公開。構想5年、撮影18ヶ月、制作費30億(60億とする記事もあり)という、今時ありえないほど丁寧に作られたクレイ・ストップ・モーション・アニメ。

演出はもちろんニック・パーク監督で製作は Aardman スタジオ。 Ardman は当初ディズニーへの参加を
打診されたそうですが、著作権のすべてをコントロールを主張して譲らない巨大アメリカ資本を諦め、結局作品製作の権利を保持したまま提携を結べるドリーム・ワークスと手を組んだんだそう。
実際、米国興行を考えてドリーム・ワークスは はピーター・サリスをウォレスの声優役から外そうと考えたそうですが、Aardman がそれを拒否。妥協案として、米国でも名前が売れている有名俳優二人(前述のヘレナ嬢とレイフ氏)を脇役で入れる事になったんだとか。


前作までは30分の短編映画だったので、今回の85分という尺をどのように料理するのか、半ば不安に思いつつ観劇に臨んだのですが、あのテーマ音楽に乗り今まで通りのウォレスとグルメットがそのママ大画面に帰ってきたのには大満足。クラシカルなクレイ・アニメに見えて、実は700カット以上のデジタル処理が含まれているそうですが(確かに「Were-Rabbit 」の変身シーンはちとスムーズ過ぎたかも)、従来のトーンを崩さずに一貫性を持ったシネマトグラフィに仕上げて来る辺りはサスガ。


日本公開にあたり、ちょっと悩ましく思えそうなのは、字幕と吹き替え、どちらで観るか? という選択。ピーター・サリスの声を聞けないのは勿体無い気もするけど、絵を楽しむのに字幕を追うのも辛いし。¥それと、結構英語に依存したギャグ、例えば「touppe」(かつら)と「to pay」(支払い)や、「hair」(髪の毛)と「hare」(大型の野ウサギ)を引っ掛けた台詞などもあって、これはなかなか訳者も大変そうです。


アニメーションのテクニカルな技術や美術造形など、感心した点はたくさんあって書ききれない程誉めちぎりたいのですが、中でも一番感服したのは、無邪気でイタズラっぽい子供っぽさと同居する大人の落ち着きのバランスの絶妙さ。安っぽさの中に輝く高尚さ、高貴な中の茶目っ気、とでも言うか、俗と聖の同居具合が見事。やっぱりこれはブリティッシュ以外の何者でもない、という結論に帰着するわけで、その辺りの微妙さがアメリカ製とも日本製とも異なるアニメーションの味として出ている所に降参したわけです。


95年の「ウォレスとグルミット、危機一髪! 」でオスカーを取っている作品ですが、この作品もオスカーをなみいる強豪を押しのけて受賞するのではないか、と思ったのでした。

邦題は「ウォレスとグルミット/野菜畑で大ピンチ!」となり来年3月中旬公開予定だそうです。

米国公開では「マダガスカル 」からのスピンオフで、あのペンギン達を主人公にした短編映画がおまけで併映。フルCGIで動きの楽しい作品で、こちらもお勧めです。


IMDb: Wallace & Gromit: The Curse of the Were-Rabbit
Official Site: DreamWorks


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あんまりキュートだったので、あちこちで拾ったおまけ画像を添付

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舞台は19世紀なかごろのイギリス。北部の貧しい救貧院で奴隷のように扱われる孤児達のなかに、オリバー・ツイスト(バーニー・クラーク)が居た。意地悪な大人達とトラブルになり、ついに一人外へ飛び出し、向かった先はロンドン。ぼろぼろになってやっと到着したものの、あてもなく途方に暮れているオリバーに救いの手を差し伸べたのは、オリバーと同じ年端も行かぬ幼さにもかかわらず、すりの名人であるドジャーだった。彼は窃盗団のアジトへオリバーを連れて帰り、世話役のフェイギン(ベン・キングズレー)へ引き合わせるのだが…


文豪ディケンズの名作を「戦場のピアニスト 」のロナルド・ハーウッドが脚色し、同作品でもタッグを組んだ
ロマン・ポランスキー監督が演出した異色のファミリー文芸ドラマ。

レイチェル・ポートマンの音楽もパヴェル・エデルマンの手によるシネマトグラフィーも水準が高いですが、何といっても目を引くのはプラハに再現された19世紀のロンドンの広大なセット。カメラが引いても引いてもちゃんと町並みが出てくる辺り、なかなか迫力があります。(道路の角には人だかりが出来、往来を馬車が行き交い、路上には馬糞が落ちている、というリアリティさ!)


21世紀にリメークされた本作品の主テーマではないでしょうが、リアルに再現された原始資本主義の弊害(=悪徳資本家が貧乏人を搾取し、富のシステムから溢れた者が社会不安を引き起こす)を大画面で改めて見せられると、なるほど社会保障って概念は必然から生まれたわけね、となんだか判った気分になったりもします。


オリバーを演じたのは天使のように純真な顔立ちのバーニー・クラーク君。彼の美貌と小器用な演技もそれないではありますが、やっぱり目を引くのは未成年者を窃盗集団として働かせて富を蓄える小心者の悪徳ユダヤ人フェイギンを演じたベン・キングズレー。悪と善の両義性、みたいな複雑で入り組んだ役作りをいかがわしく完璧にこなすあたりは、さすがオスカー俳優。


ふりかえって考えるに、劇中主人公のオリバー君は運命に流されるママ、主体性を持っての行動は一切なし。この、主人公は単なる透明なメディウム(媒体)という構造、「戦場のピアニスト」の主人公を演じたエイドリアン・ブロディそのママだなぁ、と思った次第。

当初、あまりに無力なオリバー君に「志村~、後ろうしろ」みたいな歯がゆさを覚えつつ、ふと我に返るとすっかりストーリーにのめり込んでいた、というのは、よく出来た作品だったという事なんだと思います。ラストも、しゃんしゃん、のお約束で終わらせずに、ずっしり重たい手ごたえを残して〆る演出で、見ごたえがありました。


観劇前に予告編から想像したよりはずっと面白い映画だったのは確か。万人にお勧めできる良作だと思います。邦題はそのまま「オリバー・ツイスト」で2006年お正月第2段の公開だそうです。


IMDb: Oliver Twist
Official Site: Sony Pictures

OliverTwist

先日「The Memory of a Killer」 のコメント欄でいくつかベルギーについて質問や書き込みがあったので、まとめの意味でベルギーについての雑記を少し。


高校で履修した地理の記憶は遠く彼方へ消失し(K先生、すんません)、記憶の隅にかろうじて引っかかってるのはベネルクス三国(ベルギー+オランダ+ルクセンブルグ)というキーワードと、だいたいの場所 くらい。ふと考えてみると今の職場の上司は外国暮らしが長いとはいえ生粋のベルギー人だ。なので早速仕事の打ち合わせついでに、軽く質問をフッてみた:


「… ところで先日近所で'The Memory of a Killer'っていうベルギー映画を観たんだけど、知ってる?」

「僕は見てないけど、NYCで上映された時にはちょっとした話題になってたよ。確かベルギー本国で人気のTVドラマが原作だよね。主人公を演じた役者(ヤン・デクレイル))はベルギーで最高の役者の一人だよ」


「映画は奇妙な言葉しゃべってたけど、あれってベルギー語?」
「ベルギー語ってのは無いよ。フラマン語、これはほとんどオランダ語だけど、が50%、ワロン語=フランス語が50%で、ドイツとの国境付近にごくわずかにドイツ語圏がある。この3ヶ国語が公用語で、例えば法律は3ヶ国語併記で発効されるんだ」


「ベルギーの映画産業ってどうよ?近所のデンマークからはたびたびアメリカにも来るけど?」
「デンマークはドグマ運動とか活発だからね。ベルギーの映画産業はそれに比べるとずっと小さい。ただフランス語圏は隣接するフランスというずっと大きいマーケットを共有できるので、他と比べると盛んだ。フランス語圏のベルギー人で有名なのはカンヌにも行った「ロゼッタ 」のダルデンヌ兄弟、あとは「トト・ザ・ヒーロー 」や「八日目 」のジャコ・ヴァン・ドルマル。オランダ語圏からだと、「ウィンター・テイル 」のドミニク・デリュデレが有名かな。オランダ出身の映画人と言えば、「スピード 」のヤン・デ・ボンが有名だけど、そう言えば「killer 」もオランダ語だったでしょ?」


「いやー、何語かよく判らなかったんだけど。そういえばどっちの言語圏の出身なの?」
「聞いててわかんない?」


「全然」
「オランダ語だよ。アクセントでわかんないかなぁ?」


以上、自分と上司の会話を、記憶の欠落を想像と後追い WEB サーチで補いつつ超訳してみました。(恥ずかしいことに、ロゼッタは今の今までフランスを舞台にしたフランス映画だと思ってました)


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ベルギーの映画人と言って忘れてはならないのがジャン=クロード・ヴァン・ダム。確か最後に観たのはノック・オフ 」という香港映画(たしかこの映画の直後、コカインのオーバードーズで入院→リハビリだったはず)、かと思っていましたが、今調べてたら、悪い意味でまるで悪夢のようだった「ユニソル2 」をその後に見ている事が判明(深層心理で記憶から消したがっていたのかも?)


どうしても、 B 級映画に出続けた筋肉馬鹿、のような印象が強いのですが、たしか記憶によれば何が何でもハリウッド進出を希望する彼は悪徳プロデューサにひっかかり、極悪非道な契約書のせいで一番おいしい時期数年をまるまる棒に振った、というような話だったと思う。ちょっと可哀想な話ではあります。


先日某芸能雑誌の「あの人は今?」特集で取り上げられていたバンダム君、「ブリュッセルから来た筋肉、というあだ名はどう思う?」との問いに「ブリュッセルから来た馬鹿、と呼ばれるよりいいんじゃない?」と答えてました。なんだか、なぁ。


脱線ついでにもう一つ。昔仲がよかったフランス人によると、フランス人はフレンチ・ジョークに馬鹿を登場させる場合には、必ずベルギー人だという設定にするそうだ。そういえば、「奇人たちの晩餐会 」でも、とっさにサエナイおっさんをベルギー人だと嘘をつくシーンがある。場内のフランス人らしき観客はクスクス笑っていたけど、自分は「おっ、ギャグをちゃんと理解できてる」と、ちょっと嬉しいような自慢なようなくすぐりを覚えたのを、急にふと思い出しました。


以上、普段はまるで意識しないベルギーという国ですが、映画をネタに掘り下げていくと結構な量になりました。だらだら長くなったので今日はこの辺で。


Wikipedia: ベルギー


PS 日常生活でのベルギーとの唯一接点は、近所に出店がある高級チョコの GODIVA。日本語表記だとゴディバですが、アメリカ英語ではゴダイヴァと聞こえます。(歴史に出てくる馬に乗った裸の彼女はゴダイヴァ、と表記されている模様。靴の Nike はナイキだけど、ギリシャ彫刻の方はサモトラケのニケになるようなもんか?)。ちなみに上記の上司によると、「あんなの買うのは外国人だけ、うちらはもっと安くておいしい地元のブランドのを食うんだ」、だそうです。


VanDamme うーむ…

舞台はインディアナ州の静かな田舎町。美しい妻エディ(マリア・ベロ)と二人の子供とに囲まれ穏やかに暮らすトム(ヴィゴ・モーテンセン)は、今日も自分が経営する小さなコーヒーショップでカウンターに立つ。
いつものように一日を終わろうとしていた閉店間際、二人連れの男が店に飛び込み銃を突きつけ金を要求。が、トムはとっさにコーヒー・ポットで相手を殴り、銃を奪って反撃。トムは足を負傷するものの、激しい銃撃戦は強盗二人が射殺されて幕が閉じた。

田舎の中年男の鮮やかな撃退劇は全国ニュースとなり、トムは一躍ヒーローとなる。が店に復帰した彼の元に、黒尽くめの見知らぬ男(エド・ハリス)が手荒そうな部下を従え訪れる。男はトムのことを何故かジョーイと呼び、フィラデルフィアでの借りがあると告げるのだが…


ジョン・ワグナーと ヴィンス・ロックの原作(グラフィックス・ノベル)の映画化作品。またアメコミ原作の映画化か、と思われる人も多いかと思われますが、この作品を演出するには、なんと"あの"デヴィッド・クローネンバーグ監督。先日観劇して記憶に新しい「シンシティ 」では、ロバート・ロドリゲスがフランク・ミラーの原作をいかにそのままトランスフォームさせずに3次元のカメラに落とし込むか、という尖った実験作だったのに対し、こちらは原作からプロットの骨格だけを借りてクローネンバーグが自由に逸脱しまくったある意味逆方向終着先とも呼べる形態の実験作品。


粗筋はえらくシンプルで、話だけ取り出せば半ば陳腐なアクション・スリラー+ファミリー・ドラマなんですが、この作品の面白みは表層にあるわけではなく、ストレートなプロットに監督のレンズを通してかかった複雑な歪具合こそが肝のように思われます。
96分の最初から最後まで一瞬たりとも無駄が感じられず常に張り詰めるような緊張感が続くという、いつものクローネンバーグ節は健在。湿度の高いねっとりとした重苦しい空気が満ちた画面の中で展開される高度に推敲された心理ドラマ、やっぱりすごい監督さんです。父親と息子が普通に朝食食べているだけでも、かなりヤバい感じが漂う、というのはなんとも。


マリア・ベロとヴィゴ・・モーテンセンが見せるよもやの過激で変態なエロティック・シーンも、いきなり登場するウィリアム・ハートのコミカルさも、監督独特のフィルターに乗ることでうまく機能していました。

人間や社会の内に潜む暴力性を考察した実験映画、とまとめちゃうとひどくつまらなく聞こえますが、クローネンバーグの緻密な計算と作り込みの完成度がすばらしく、見ごたえのある作品に仕上がっていたと思います。


評論家の受けもまずまずのようで今年の賞レースにかかわってきそうな勢いですが、えらく間口の狭い尖った作品なので観劇は自己責任で。(ヴィゴ・モーテンセンの銃撃アクションを期待した人はたぶん火傷すると思うぞ)


IMDb: A History of Violence
Official Site: New Line Cinema

AHistoryOfViolence

南洋の楽園バハマで暮らすカップルのジャレッド(ポール・ウォーカー)とサム(ジェシカ・アルバ)。ジャレッドはとりあえず素人相手のダイビング・インストラクターで日銭を稼いでいるが、子供の頃から追い続ける宝探しの夢を捨てきれずにいる。
そんな二人の元に、ジャレッドの親友ブライス(スコット・カーン)が彼女を連れて島へ遊びにやってくる。金持ちの別荘を留守番する彼のツテでクルーザーを借りた一行は、さっそく沖へ出て宝探しをはじめる。

四人は沈没船からの遺留品と思われる黄金の短剣を発見し莫大な財宝が近くに眠っている事を確信するのだが、同時にすぐ近傍にギャングの手によるものと見られるコカイン輸送機が水没しているのも発見してしまう。
船の名前や由来が特定できない現時点で警察に通報すれば、宝の所有権は主張できない彼らは、飛行機には手を触れずに秘密裏に沈没船の証拠固めを急ぐ事に決めるのだが...


南洋の海を舞台にした新作、主演は正統派イケメンのポール・ウォーカーと正統派アイドルのジェシカ・アルバ、演出は「ブルー・クラッシュ 」(←密かにおすすめ)のジョン・ストックウェル監督、とくれば否が応でも期待は高まるというもの。

しかしオープニングから暗く荒れ狂う嵐の中で墜落する麻薬輸送機、と出鼻をくじかれるようなイントロ。あれっと思っていると、どうにもこちらの期待とは90度ズレタ方向に物語はどんどん進む。


こちらは、体育会系の青春スキューバ馬鹿映画を期待しているのに、どうも作り手は、真面目にハードなアクション・クライム・スリラーをやろうとしているのだ。こりゃいかん、見方を変えねば、と気づいた頃には映画は既に中盤にさしかかっており、「そうならそうと、はじめから言ってくれよぉ」と愚痴の一つも言いたくなる状況。いえ、映画自体はキッチリ隙無くそういうトーンで作られているわけなんですが、ジェシカ・アルバがセクシー水着でくねくね腰を振って泳ぐシーンばかり予告編で流す配給会社の宣伝に壮大にハメられた、とでも言うか...


あとで調べてみたら、77年公開の「ザ・ディープ 」という映画のリメークらしいんですが、だったらこんな紛らわしいキャスティングすんな、ってかジェシカ・アルバもったいないじゃん、という気もするんですけど。


そんなこんなで、期待の入れ方が180度ずれちゃってたせいか正直あんまり楽しめなかったわけですが、はじめからそういうつもりでみたら面白かったのかもしれません。ジェシカ・アルバ(特に水着シーン)はあんまり多く出てきませんが、それでもやっぱり、という人にはいいかも?


IMDb: Into the Blue
Official Site: MGM / Sony Pictures

IntoTheBlue





おまけ:

SweetIntoTheBlue BitterIntoTheBlue

予告編からこんなのを期待してたんですが... 実際はこんな感じでした

ローズ(トニー・コレット)とマギー(キャメロン・ディアス)とは、似ても似つかない何から何まで違う姉妹。姉のローズは一流大学を卒業しフィラデルフィアの一流弁護事務所に勤務するキャリア・ウーマン。アパートのインテリアに懲り、服や靴を買い揃えるものの、体型に自身が無くおしゃれな服を着る勇気も機会もなし。
一方妹のマギーは高校をぎりぎり卒業後、エントリー・レベルの職を転々とし続けている。おしゃれで美貌のマギーは男にモテる事のみが自我の中心で、生活はズタボロ。ホームレス同然の経済状況だった。
そんなある日、高校の卒業式に出たマギーは飛ばしてトイレで泥酔。迎えに行ったローズの目前で素行の悪いマギーは間借りした家を追い出され、仕方なしに二人は同居生活を始める。真面目一本やりのローズと自由奔放なマギーの関係は何かとギクシャクし、やがてマギーの決定的な失態に憤慨したローズはダメな妹を追い出すのだった。

当ても無く途方にくれるマギーが思い出したのは、父から死んだと聞かされていたはずの祖母エラが、どうやらフロリダで存命らしい事。古い手紙の住所を頼りに探り当てたフロリダ在住の祖母エラ( シャーリー・マクレーン)の元で、マギーは居候をはじめるのだが...


ジェニファー・ウェイナー原作の小説「イン・ハー・シューズ」を、「エリン・ブロコビッチ 」のスザンナ・グラントが脚色し、「L.A.コンフィデンシャル 」のカーティス・ハンソン監督が演出した、コメディ・タッチの家族ドラマ。
(オープニング・クレジットで「スコット・フリー」のアイキャッチャーが出たので、よもや?と思ったのですが、監督さんは別。リドリーはプロデューサ、トニーはエクゼクティブ・プロデューサとクレジットされていました)


プロモーションにはキャメロン・ディアスが全面に強くだされていて、実際この映画の中の彼女は新境地とも言えるすばらしい演技を見せるのですが、作品自体は姉と妹の二人に等しくスポット・ライトを当てる、というか二人の関係がメイン・テーマ
で、キャスティングを振り返って、トニー・コレットは期待通りの演技力。お約束として前半もっと激しく太っててもいいんじゃないかな、とは思いました。シャーリー・マクレーンは、悪くはないと思うんだけど、特に驚くような発見はなし。で、残るはキャメロン・ディアス嬢なわけですが、これがなかなかびっくりの好演技。

過去得意としてきたあけすけに明るい役作りに加え、キャラクター造形に奥の深さが出てきた感じ。劣等感の裏返しの明るさとか、外向的すぎるゆえに逆に孤独に陥っているマギーという難しい役どころですが、技巧的な脚本と演出に負けないだけの演技の厚みがよく出せていたと思います。


すばらしい姉妹役の演技の一方でローズの婚約者を演じたマーク・フォイアスタインのあんまりさに、ちょっと首を絞めたくなったりもしましたが、物語のテンポは中盤からどんどん加速して行き、2時間10分と今時の映画にしてはの長尺さを感じない編集の具合が非常にいい感じ。

靴のサイズ以外共通するものがない姉妹二人の関係の難しさと絆の深さを浮かび上がらせ行くのは、物語の影に隠れた二人の母親だったりするプロット上の仕掛けには正直うまいと思いました。


個人的にはラストになっての走りすぎとトーンの抑えが足りない部分に少し不満があったりもするのですが、全般に丁寧に作ってあって、題材も掘り下げ方も良く出来た作品だったと思いました。

メリーに首ったけ 」のディアス嬢を期待しているとちょっと肩透かしでしょうが(本作品はどたばたコメディじゃないしね)、暇だったらレンタル待ちせずに映画館まで足を伸ばしてもいいんじゃないでしょうか?

邦題は「イン・ハー・シューズ」として、今月12日から公開だそうです。


IMDb: In Her Shoes
Official Site: Twentieth Century Fox (←よく出来てます)

InHerShoes

ルイジアナの田舎にヴードゥーの秘力を使い残忍なスピリッツを封じ込めた女祈祷師が居た。彼女は家路へと急ぐが、村はずれの橋で交通事故を起こす。邪悪な執念が乗り移った蛇達は箱から逃げ出し、救出作業に当たっていたレイ(リック・クレイマー)を襲い、蛇に噛まれたは車ごと水中に落下してしまう。
その後死体となったレイは、13の邪悪な魂に支配され、村のティーン・エイジャー達を次々と襲い始める…


「Venom」 ("蛇の毒"くらいの意味)は、元々ビデオ・ゲームに想定されていたストーリーを映画化したそうで、脚本家としてクレジットされている二人も元々ゲームのシナリオ・ライターのよう。


そういう事情もあってか、普通に考えると、穴だらけの駄作B級映画にしか見えないわけで、それを裏付けるかのように、興行1週目で公開スクリーン数が500枚弱というえらく弱気なミラマックスの戦略(2週目は460枚で、3週目でほぼ打ち切りになるもよう)。驚く無かれ、第2週の1スクリーンあたりの週末(金→日)平均興行収入は2万7千円。一日5回のローテーション(12:00, 2:00, 5:00, 7:00, 9:00)と考えると、一回につき1800円 (27K = 3 * 5 * 1.8K)、ってことは上映中平均3人くらいしか(1800円=3×600円)劇場に居ないって事になる。実は自分が観た回も観客はぴったり3人でした。


で、つっこみどころ満載のこのアクション・ホラー・ムービー、文句を言い出せばきりがない。導入部の静かなシーンでは、犠牲者となる若者達を演じる役者のあまりの大根ぶりに驚き、ブロンドのグラマーを主要メンバーに入れる初歩の初歩がなってないキャスティング(混同するので普通はどっちかブルネットにするとか違う体型タイプにするとかする)に呆れ、しょぼい蛇のCGIに幻滅(水気が足りない感じ?)。


それでも時間や金の無駄ではなかった、と思ったのは、この手の出来が悪い映画を観るとなぜつまらないのか、どこを変えればどうなるのか、斜め上から批判的に映画を見つつ、改めて普通に見れる映画って極めて良く出来てる(=普通の映画を作るのもなかなか難しい)って事を再認識できる事。


改めて思うに、ゲーム・シナリオと映画脚本ってやっぱりツボが微妙に違うのだと思う(もしかして戯曲と映画ほど差は無いのかもしれませんが)。ある程度強制的に限定したシチュエーションに無条件にユーザをほうり込む事ができるゲームより、万人を納得させつつ物語に導く必要がある映画は、導入部は特に難しいように思えます(この映画は激しく失敗していた)。一方で、舞台や登場人物を絞込み、あまり画面をうるさくせずに物語を進行させるテクニックは、ゲーム・シナリオの方が得意とするあたりなのかも(中盤以降の設定はこの映画もなかなか巧く出来ていたと思う)。


後半、ばったばったと若者がヤラレ出してからは、徐々にお話のテンションも調子が上がってくるのですが、あとで調べてみたら演出は「ラストサマー 」で知られるベテランのジム・グレスピー監督。この監督、同作品のコメンタリーを聞いてから実はひそかに尊敬してます(何も考えてないような馬鹿作品に見えて、限られた予算や時間の中で実にいろんな工夫に知恵をしぼっているのだ)。


恐怖の一夜が明け、朝日の中で迎えるエンディング、夜のシーンでは不満だらけだったシネマトグラフィーはびっくり見違えるほど良くなり、物語もテンポ良く回り始める。そんなわけで、冒頭はどうなることかと思ったこの作品も、見終わった後はまずまず納得。

まー、好きな人しか見ない類の作品で、しかも決して誉められる事はない類の作品なのでしょうが、(日本ではレンタル直行かな?)、考える所はいろいろある作品でした。


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