国をまたがって活躍してきたベテランの殺し屋アンジェロ(ヤン・デクレイル)は、高齢を理由に組織に引退を求めるが、逆にベルギーでの二人の殺しを頼まれてしまう。
首尾よく最初のターゲットを片付けたものの、二人目が12歳の少女だと知った彼は実行を拒否。殺人依頼の裏に隠れた事の真相を知り、糸を引く大物へと近づこうとするアンジェロ。しかし事の真相を知った彼をやっかいに思う組織と、事件の糸口をつかんだ警察の両方から追われる身となってしまう。しかもそんな彼を蝕んでいたのは、初期のアルツハイマー病だった…


少女売春をきっかけに起こる血なまぐさい真相究明劇を繰り広げるのは、記憶が飛びつつある凄腕のベテラン殺し屋と、ベルギーの司法政界にまで食い込む巨悪、そして熱血漢の若手刑事。監督も役者もベルギー系の人が多く、無知な自分は知ってる名前も顔も見当たりませんでした。(ユニバーサルのインディ系興行子会社フォーカス・フィーチャがリメーク権を買ったんだとか。そのうち見慣れたアメリカの役者さんで再製作されるんでしょう)


ちょっと意外でそれが逆にある意味楽しめたのは、「アルツハイマーの殺し屋」という設定の扱い。劇場予告編を見て、「おぉ、アルツハイマーの殺し屋とは良く考えたもんだ」と感心し、当然このアイデアが核になるお話なのかと待ち受けていると、実は物語はそれとはあまり関係に流れていきます。病気は詳細ディテールの裏づけとして所々に使われる程度で、「これだったら別に主人公がアルツハイマーじゃなくっても成立するお話だよなぁ」と、最後まで見終わって感じたりもしました。それはそれで面白かったわけですが。 (自分はもう少し「メメント 」チックな展開なのかと勝手に想像してました)


ちょっと都合の良すぎる部分もあり、若干とっちらかり気味の箇所も見受けられましたが、丁寧なカットの積み重ねで人物の書き込みに厚みがあり、メロウな部分もドライな部分もメリハリが利いていて、十分うなずいて納得できる出来。似ているようでいて、やっぱりどこか微妙にハリウッドとは違う趣のあるベルギー・オランダ合資映画、ありきたりのアクション・スリラーに飽きた人にはぴったりだと思います。

ちなみに自分が見たのはアメリカ公開版できっちり2時間の編集でしたが、本国ベルギーでは15分長いディレクターズ・カットが公開されたようです。


IMDb: De Zaak Alzheimer
Official Site: Sony Classics
Official Site: De Zaak Alzheimer

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20世紀最大の発見をしたと賞される天才数学者のロバート(アンソニー・ホプキンス)がシカゴの自宅で死去した。70年代に活躍した後は統合失調症をわずらいアカデミアから遠ざかっていた彼の最後を見届けたのは、末娘のキャサリン(グウィネス・パルトロウ)だった。父と同じく天才肌の彼女は父から精神病も受けついたのでは?と悩む一方で葬儀のためニューヨークから一時帰郷した姉クレア(ホープ・デイヴィス)の"そつなさ"に対して強く反発を抱く。
一方シカゴ大学の数学科のポスドク学生ハル(ジェイク・ギレンホール)は、ロバートが書き残した膨大なノートの中に未発見の歴史的価値がある資料が紛れているに違いないと家に通いつめていた。やがてキャサリンとハルの仲は急接近するのだが…


デヴィッド・オーバンの戯曲を、彼自身が脚色し、「恋におちたシェイクスピア 」でグウィネスにオスカーをもたらしたジョン・マッデンが演出。グウィネス+マッデンは英国での舞台公演もこなしており、ヒロイン・キャサリンのキャスティングはその経験を通じてマッデンの希望だとか。

出番は思いの他少ないもののアンソニー・ホプキンスは相変わらずの演技力を見せ付けるし、「ワンダーランド駅で 」のホープ・デイヴィスが演じるクレアも実にいい。ジェイク・ギレンホールはやや線が細いものの、芸達者な主役達に肩を並べる好演を見せる。でもやっぱり目立つのはヒロインのグウィネス嬢の巧さだよなぁ。


某掲示板には「good theater does not necessarily translate into good film, and Proof pretty much proves it. 」(いい舞台作品は必ずしもいい映画になるとは限らない。(この作品=)「Proof」はそれを prove (証明)している。)などと書かれていました。自分はこれを舞台原作だと知らずに見て違和感無く楽しめたので、原典既観者を半ばうらやましく半ば可哀想に思ったり。映画版は絵を動かす工夫があちこちにあって、戯曲原作にありがちな舞台臭さは自分には感じませんでした。


統合失調症(=分裂症)の天才数学者と言えば、ラッセル・クロウの「プルーフ・オブ・ライフ 」、じゃなかった「ビューティフル・マインド 」が思い出されますが、ロン・ハワードの明瞭で平易な演出とはやや異なり、本作品にはモチーフの数学に関しても難解さが若干残っていて、その辺に逆に理系心をくすぐられたりも(っても自分は工学部出身で本当の数学科って伝え聞く雰囲気しかわからんのですが)


で、この作品の面白みは、数学というとっつき難い題材を使いながら、普遍的な家族間の憎愛や、男女の微妙な感情の機微を巧みに描き出すという、チグハグさに帰着するような気がします。

キャサリンの父に対する思いも、姉に対する反発も、恋人に対する失望も、媒体である"数学"がうまく機能しつつドラマを先へ先へと回していく構成=脚本の面白さ、ですね。


予算は20億とごく平均的な"低予算"ハリウッド映画ですが、マッデンの演出良し、パルトロウの演技良し、オーバンの脚本良し、と基礎がきっちり通った面白さで見ごたえがありました。お勧めです! (9/29追記 邦題は「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」で来年1月中旬に公開予定だそう)


IMDb: Proof
Official Site: Miramax

Proof

"ワースト"の定義って人によっていろいろあるわけで、「こんな下らない映画なのに皆が誉めるのはおかしい」と憤慨するパターンや、製作者の意図通りに作られてはいるが自分のツボにはまるでハマらず低評価になるパターンなどなど。

そんな中で、自分が「ワースト」と挙げたいのは、あまりにレベルが低すぎて笑いも怒りも生じずただひたすら呆れた「Starry Night 」(邦題「スターリー・ナイト 星月夜の調べ 」)という作品。


当時自分の住んでいた街のマイナーな映画祭に出品されてたまたま目にしたのですが、ストーリーラインの突拍子の無さ(現代のロス!?に画家ゴッホが生き返る)、演技のリアリティの無さ(中世オランダ生まれの主人公が終始怪しげなアクセントの英語を)、高校生の学園祭製作レベルの下手な演出+編集、と何をとってもダメダメ。極めつけは、エキストラを含め出演者全員がいかにも売れないハリウッド役者(志望)っぽくて、妙に芝居がかった嘘臭い半端な演技を続ける空気が硬いかたい。見ているだけで窒息しそう。


映画祭に来ていた脚本+演出のポール・エイヴィツ氏によれば、ユニバーサル・スタジオから空いてる機材を借りてのゲリラ撮影、というスティーブ・マーティンの「ビッグムービー 」顔負けの隙間製作だったらしいですが、低予算だからと言って駄作でしょうがない、とはやっぱり思えないわけで。


皆にこのダメさ加減をぜひ見て確認して欲しいのですが、残念なことに日本では劇場公開されておらず(WOWOWで放映されたとか)、日本語版DVD も未発売の様子。まともな映画を作るのって大変なんだなぁ、と改めてあたりまえを再認識できる本作品、IMDb のユーザ・レビューで「the perfect example of just how bad a movie can get...」とまでかかれた怪作、もしもごらんになる機会があったらぜひ。


いや、マジで一度これを観たら少々の駄作を見ても「金返せ」とは思えなくなります。


PS. amazon のユーザ・レビューに5点満点が二つも付いていますが、どうも関係者の自作自演っぽい気が…

舞台は19世紀のヨーロッパ。ビクター(声ジョニー・デップ)は音楽を愛し草花や蝶をめでるやさしい青年。彼の両親は強引に政略結婚を進め今日はそのリハーサル。お相手は落ちぶれた名家の娘で、新婦の両親は財産目的で面識のないビクターに娘のビクトリア(声エミリー・ワトソン)を押し付けようとしていた。
親同士の強引な結婚だったが、初めて会った両者は相手の優しさを瞬時に感じ取り、恋に落ちる。が、緊張のあまりリビクターはハーサルでトチリを連発。司祭に怒られ落ち込んだ彼は人気の無い墓地で誓いの言葉の練習を繰り返した。が偶然にもそこには結婚への未練を残し死んだ花嫁が眠っており、現世に蘇った死骸(Corpse)の花嫁(声ヘレナ・ボナム=カーター)はビクターを新郎として死者の世界へと連れて帰ってしまうのだが…


ナイトメアー・ビフォア・クリスマス 」の原案・製作のティム・バートンが再びストップ・モーション・アニメーションを手がけた、家族向けファンタジー・ミュージカル。「ナイトメアー…」は「ハロウィーン+クリスマス」がコンセプトで、今回は「ハロウィーン+結婚式」とでも言う感じか?
最近続けてティム・バートンで痛い目に会っている自分は、ちょっとチープな感じのする予告編 を見て実はあまり期待していなかったのですが、どっこい腰を抜かすほど良く出来た仕上がりに良い意味で期待を裏切られてびっくり。


よく練られたストーリー、過不足無く切り込まれた編集、統一の取れた美術の作り込みや巧みな造形の人形とそのアニメーションの技巧、そしてため息の出るような美しいシネマトグラフィー。映画の要素要素
それぞれの完成度の高さに「おたくの味方、ティム・バートンが帰ってきた」と無邪気に喜びたくなりました。


民生デジタル・カメラ+民生レンズで撮影され Final Cut Pro で編集されたという本作品、「ナイトメア…」から10+年を経ているせいもあって、テクニカルな精度向上にも目を見張るものがありました。アニメーションと言えば、ニック・パークのウォレスとグルミットの新作「Wallace & Gromit: The Curse of the Were-Rabbit 」も公開が近く、こちらもとっても楽しみだったりします。


邦題は「ティム・バートンのコープスブライド」となる予定だそうで(配給が WB だから例によって時差なし公開かな?)、日本公開示のリアクションがどんな風になるのか、興味津々で見守りたいと思ったのでした。


IMDb: Corpse Bride
Official Site: Warner Bros

CorpseBride


異国の地で突然夫を失い、カイル(ジョディ・フォスター)は極度に落ち込みながらも遺体移送の手続きを済まし、埋葬のためベルリン→ニューヨーク便へと乗り込む。
娘のジュリアと共に座席に着き、離陸から数時間の間眠りに付いて目が覚めてみると、一緒に乗ったはずの娘が居ない。最新式の2階建て E-474 は迷路のように広く、客室キャビンを隅から隅まで探しても姿は見当たらない。エンジニアとして機体の設計にかかわり、航空機のすべてを知っている彼女は同乗した航空保安官カーソン(ピーター・サースガード)やキャプテン(ショーン・ビーン)に手助けを求める。400人強の乗客を全員座席に着かせてフライト・アテンダント全員による捜索にもかかわらず、娘の手がかりはない。
それどころか、アテンダントの一人ステファニー(ケイト・ビーハン)は、乗客名簿には娘の名前は無く、搭乗確認時にも姿を見た記憶はないと言い出すのだが…


ピーター・A・ダウリングとビリー・レイによる脚本を、ロベルト・シュヴェンケ監督(名カメラマンミハエル・バルハウスの息子)が演出した、航空サスペンス。出演はこの他に「トラフィック 」で薬にハマる良家の子女役でセンセーショナルなデビューを果たし「プール 」の偏執ストーカー役も記憶に新しいエリカ・クリステンセン(でも本作品は出番がイマイチ少ない)


とにかくよく出来た予告編(雰囲気を楽しみたい方はこちら をどうぞ)で、久々のジョディ女史主演作品という事もあり、すごく楽しみにしていた作品なのですが、どうも今一つ納得できない箇所も。

つい先日、お話も雰囲気もずっとB級ながらタイトなウェス・クレイヴン監督の演出が光った「Red Eye (感想記事)」で同じ飛行機物を観た後、という条件もあるし、終盤から急に話が俗っぽく普通のアクションになってしまうプロット展開の尻つぼみ具合に対する不満も。
カット・カットを絵的に見せるセンスは巧いロベルト監督ですが、話の流れを紡ぐ部分は少しぎこちない印象。93分と尺を詰めた編集のせいなのか、演出の力不足のせいなのか、それとも脚本上で文字で読めば
面白いが映像化はそもそも難しい話ということなのか…

最後まで見終わって「たぶん脚本だけ読むともっと面白い作品なんだろうなぁ」と思った、という事は、素材のポテンシャルがうまく映像化できていない、という事なのかもしれません。


と文句は言いたくなるものの、本編単体だけ切り離して考えると見所は沢山で、仕上がりもほどほどに悪くない。特に前半部分の文芸調心理スリラーは秀逸で見事。最近母娘物 の印象が強いジョディ・フォスターの演技を楽しめた、という点ではきっちり評価できた作品でした。


IMDb: Flightplan
Official Site: Touchstone

FlightPlan

ロシア系移民2世のユーリ(ニコラス・ケイジ)は、ひょんなきっかけで銃器の販売を始めたのだが、トントン拍子に商売は拡大し大成功。地元ニューヨークから世界的マーケットに進出した後、既存の大口ディーラ(イアン・ホルム)には冷たくあしらわれたり、代金の代わりに受け取ったコカインに弟(ジャレッド・レト)がハマりリハビリ病院に送るハメになったりした失敗もあったが成功は続き、金に飽かせて美しいモデル(ブリジット・モイナハン)と結婚。ソビエト崩壊後、分裂したウクライナから大量の軍備放出の商談をまとめユーリの人生は順風満帆に思えたのだが…


トゥルーマン・ショー 」の脚本でハリウッドに足がかりをしっかりつかみ「シモーヌ 」の興行的失敗でしばらくホサれていたアンドリュー・ニコールの脚本+演出・最新作。本作も彼の脚本+演出で、配給会社はインディー系のライオンズ・ゲート。
ばりばりの弱小マイナー映画なのかと思いきや、制作費50億、公開スクリーン数2800枚と、大型の興行で、公開初週に9億強の売り上げで全米3位の登場。


物語の中盤以降、狡猾に法律をかい潜る武器商人のニコラス・ケイジ対正義感に燃え世界平和のために違法な武器取引を取り締まろうとするインターポールのイーサン・ホーク、という図式が取られます。
終盤までドラマチックな盛り立てはせず、ニコラス・ケイジの淡々としたモノローグに乗りクールでニヒルに進む演出で、武器商人の話の割にはドンパチのアクションは少なく、ワル対デカのチェイシング・ストーリーの割にはスリリングさも無い。その辺りが一部評論家等に叩かれている原因なのかもしれませんが、個人的には、この洪水のような情報量と共に少しドキュメンタリー・チックに感情移入を拒む突き放したスタイルは嫌いではないです。


終盤、暴力的な独裁者に支配されたリベリアに舞台を移してからは運命や運や周辺や偶然に流され続けるユーリのニヒルさがより強調される本作品、最後テロップには実際のイベントを元にしていると出てきて、いろいろ考える所が多かった観劇でした。


画面にずらりと並ぶ共産圏製戦車や3000丁のカラシニコフは実在の武器商人から借りた本物だそう。万人向けのエンターテイメントではありませんが、武器に興味がある人もそうでない人も観て損はしない不思議なテイストの作品だと思いました。

IMDb: Lord of War
Official Site: Lions Gate Films

LoadOfWar


成功したビジネスマンで金はあるが子供と接する時間が少ない父親の元を離れ、オーウェンはバージニア州にある全寮制の私立高校に転校。素行不良で転校を繰り返していたイギリス人のオーウェンを待ち受けていたのは、特権階級の金持ち家庭出身の子女達で、入校早々閉鎖的な彼らの「受け入れ試験」とも言うべきゲームのクライ・ウルフに参加させられる。
運の要素を抜いたポーカー的心理ゲームでたちまち才能を発揮しリーダー格の女の子に気に入られるオーウェンは、一夜ですっかり仲間と打ち解けるのだが、やがて彼らは以前郊外で殺害された同級生をネタに、壮大な「連続殺人鬼=ウルフ」をでっち上げ、在校生を怖がらせるために嘘の噂を電子メールでばら撒く悪戯を考える。
噂はあっと言う間に校内に広がり、被害者の親の耳にも届いて警察沙汰になる程現実味を帯びるのだが、その後オーウェンの元に本物の殺人者からメールが届いてしまう。自分の犯行を騙ったイタズラに憤慨した犯人は、オーウェンらを噂どおりに一人ひとり惨殺すると予告するのだが…


人を騙すゲームに熱中した高校生が、無邪気に流した噂が本当になり恐怖に怯えるというストーリー。予告を見た時には「スクリーム 」系のスプラッシュ・ホラーを想像したのですが実際に観劇してみると青春系サイコ・ドラマという仕立て。ヘイデン・クリステンセンから毒気を抜いた雰囲気の主人公、シャーリーズ・セロンから華を引いた感じのヒロインを含め、役者は全員無名ですが、何故か歌手のジョン・ボン・ジョヴィ(しばらく前にちょい役でよく映画にカメオしてました)がちょい役で出演。


実験作品「The Tower of Babble 」が映画祭で賞を取り、ジェフ・ワドロゥ監督がその賞金(約1億円)で製作したという本作品、脚本は随所に凝った工夫があり見方を工夫すればなかなか見所も多いのですが、やっぱり見ごたえという点でいわゆるハリウッド映画としては少し物足りなさも。

脚本に散りばめられた新しい試みの数々はうなずける箇所も多いものの、演技や演出の厚さが薄く、実験作品としては成功、商業作品として破綻気味、と言い切っちゃうと少し乱暴で気が引けますが…


自分が行った回(平日7時)は、自分以外誰も居ない一人ぼっちの観劇で、あんまり売れてなさそうな印象を
持ったのですが、ボックス・オフィス・ランキング によると1800スクリーンで公開され全米5位、4.5億円の興行成績は良くも無く悪くもなく、という感じでしょうか。
いろいろ思う所はある作品ですが、改めて初代「スクリーム」の偉大さを再確認しつつ帰路についたのでした。


IMDb: Cry_Wolf
Official Site: Enigma Media
Official Site: Official Fan Team

Cry_Wlf

サンフランシスコの病院に勤務する女流外科医エリザベス(リース・ウィザースプーン)は、まじめで熱血漢で潔癖症。プライベートを犠牲にし、患者の命を救うため長時間の激務に耐えてきた彼女は、長い間あこがれてきた部局長への昇進を聞いたその日に自動車事故に遭ってしまう。
時は変わって、最愛の妻を失い失意のデビッド(マーク・ラファロ)は、サンフランシスコのダウンタウンで家具付きアパートを探していた。彼が見つけた掘り出し物の物件は、見晴らしも良く屋上付きで条件は最高。早速月ぎめ契約で引っ越した彼だったが、存在しないハズの元の借主エリザベスが現れて大慌て。
なぜかエリザベスの存在を体感できる唯一の人間デビッドは、過去が思い出せないエリザベスと共に彼女の素性を探る探偵劇を始めるのだが…


アナライズ・ミー 」のピーター・トーランと「フォーチュン・クッキー 」のレスリー・ディクソンの脚本を、「ミーン・ガールズ 」でヒットを飛ばしたマーク・ウォーターズ監督が演出。モニカ・ポッター主演の「恋にあこがれてin NY 」では、さほど巧いとは思わなかったマーク監督でしたが、「フォーチュン・クッキー 」あたりからは、トラディッショナルにきっちり型を付けてくる手堅い演出手法が印象的。本作品も奇抜さは無いものの、過不足なく細やかさが光る作風に好感。


目に付いた他の出演者は、デビッドの親友役にTV コメディで顔を覚えていたドナル・ローグ、エリザベスの姉役でディナ・スパイビー、そしてオカルトに妙に詳しい怪しげな本屋の店員役で「Napoleon Dynamite 」の主演ジョン・へダーなど。


最近すっかり落ち目のメグ・ライアンに変わりラブコメの女王の座を確立しつつあるリース嬢と、オスカーにもっとも近い位置に居るとも称された芸達者のラファロの主演二人が引っ張る、キャラクター・ドリブンのプロットで、とにかく二人の演技の巧さにすっかり釘付け。大人の鑑賞に堪え得る、ちゃんとできたラブコメ映画、という観点からは、かなり高い評価になると思われます。


置かれた状況も性格も正反対の二人が鉢合わせするセットアップの巧妙さや、適度に広げられたサブプロットの幅など、精密に組み立てられた脚本の技巧性はなかなか。でも一方でなぜか物語の加速感と高揚感がなかなか出てこない。どことなく中盤にダルさを感じてしまったのは、あと一歩の脇の演技のベタさのせいなのか? 人間の尊厳死、など重いテーマを含有しつつも表層的なラブコメのから騒ぎに終始する作品のスタイルのせいなのか?うーむ…


終盤に急転回する物語に乗って、キャラクターの味付けをガラリと変えてくるリース嬢の演技の巧さは驚がく的。今後の彼女の更なる活躍を予感させる出来に、ほくほくしながら映画館を出てきました。

予算は58億円、公開第1週で、16億強の興行収入を稼ぎ全米一位。リース嬢の集客力は健在なのを再確認したのでした。


IMDb: Just Like Heaven
Official Site: DreamWorks

JustLikeHeaven

東欧で巨大な地下洞窟が発見された。巨体な地底湖により外界から完全に分離された先はまったくの未知の世界だった。最新の機材を持ち込み経験を積んだエキスパート達が洞窟の探検を始める。しかし落盤により入り口は塞がれてしまい、地底数キロから生還を模索した決死の冒険が始まるのだが…


大作リリースの隙間を縫うように、ひっそり公開された、洞窟アドベンチャー・ホラー。自分の無知のせいもあって、役者に知っている名前と顔は見当たらず。

地下洞窟の探索、というと、「かわぐちひろし探検隊」的な色物の臭いが直ちに漂うわけですが、本作品はそのマンマ B 級路線をまっしぐら。別段、特殊な造形の怪物を出して人を襲わせなくても、閉所恐怖症の人間を泣かせるような演出やら、極限におかれた集団の人間模様を描くとか、高尚な模索の手段はいろいろあると思うのですが、その手の A 級への色目は一切無く、「おいら B 級でもいいもんね」、という割り切りはなかなかすがすがしい。


巨大人食いコウモリ風の怪物に襲われ右往左往するグループ、というエイリアン風プロットになってからは、ドッカン系のショッカー演出とSFX に頼りつつラストへと奔走。パワーで押し切る体育会系のノリは嫌いじゃないですが、ちょっと荒っぽく雑さも残ってたかなぁ。


洞窟内の"怪物"の造形、その視覚効果、がこの映画の最大の売りだと思うのですが、+アルファでもう少しそれらしさを加えてもよかったんじゃないかなぁ。深海魚的なデザインとか、大きさとか、動きとか、色(普通
光りの無い所だと真っ白か透明でしょ?)、オリジナリティを加えるとずっと良くなったと思うんですが。
あと、あんな大型で活発に動く動物があんなにワサワサ沸いてでてきてましたが、普段は何食ってるんだろ? と疑問に思いました。地下水脈を通じてお魚が流れてくるのかしらん??

まーこの手にリアリティを追求してもしょうがないんですが、台詞の端っこにそれらしい説明を入れるとか、嘘をうまく付いてくれるとこっちももう少し乗れると思うんですけど。


ラストの引っ掛けに「まさかこの出来で続編作ろうって色目じゃないだろうな?」と突っ込みを入れたくなったりした観劇となりましたが、この手が好きな向きにはまずまず良いんじゃないでしょうか?


IMDb: The Cave
Official Site: Sony Pictures


TheCave

ホスピスの仕事に疲れたキャロライン(ケイト・ハドソン)は、ニューオリンズの村はずれに在る邸宅でで住み込み看病の仕事を始める。家の主人ベン(ジョン・ハート)は脳梗塞の後遺症から体の自由が利かず、介護士を必要としていたのだ。妻のバイオレット(ジーナ・ローランズ)は仲介する弁護士ルーク(ピータ・サースガード)に「よそ者は家の事は判らない」と乗り気でなかったのだが、ルークの「前任者もすぐ辞めたし、彼女が最後の望みだ」と説得。
古ぼけた屋敷で、幽霊が映るからと家中の鏡を取り外す程迷信深い夫婦の世話を始めるケイトだったが、世話を介してベンが異常に怯え必死に何かを伝えようとしているように思い始め、渡されたマスター・キー(スケルトン・キー)で屋敷を探検し始めるのだが…


低予算で製作され SFX や VFX に金を食われる結果しょぼいキャストになりがちなホラーというジャンルですが、この映画は主要キャラクターはまずまずの実力派を揃える、金をかけた配役。
最近男の子を出産したケイト・ハドソンは、ちょっとだけ肌の露出がありますが、あまりに体のラインが美しいので、てっきり妊娠初期以前に製作されたのかと思っていたら、出産後にダイエットして撮影に望んだらしい(60 lb の減量だって。すげい)。

ジョン・ハートの病気っぷりはリアルだし、ジーナ・ローランズがこんな激しい役をこなせるという意外さが驚き。そして美形の後ろに影が潜むサースガードが今回も独特の雰囲気。各キャラクターにしっかり色づけがされアンサンブルが美しく決まるキャスティングはお見事。


土地に伝わる魔術は信じている人にしか利かない、自分は信じていないのだから何も怖くない、と思っていたキャロラインが、物語の進行に従って徐々に信じ始めてしまい、逆に魔術で自分の身を守ろうとする、というやや技巧的なプロットを、しっかりした演技と演出で自然に流れを出している所は見事。
最初は何も恐れていないヒロインが身を守る術として呪術を使い始め、逆に恐怖を増していく、という流れと動機して、観客も怖がらされる、というパラレルな構造がバックボーンにあるわけです。

物語も技術もマンネリ化している所に、ちょっと目先を変えたり、視覚効果の技巧だけで新しさを出そうとするような、力技の金太郎飴的なホラー映画が量産されている中で、工夫された創造努力の新鮮さに好感が持てます。


血しぶきを散らしたり、首がすっぱり飛ぶようなショッカー系ではなく、たっぷり尺を取ったセットアップで、じわじわ恐怖を盛り上げる地味系のホラー、狙いは面白く、肉付けもちゃんと機能していたと思います。
予告編でも涙でマスカラを流しながら「自分は信じないから」と連呼するキャロラインの恐怖を、そのまま体感できる、ちょっと凝った構成のホラー映画。2時間たっぷり怖がって楽しんできました。


IMDb: The Skeleton Key
Official Site: Universal

TheSkeletonKey