フィラデルフィアの郊外にある集合住宅で管理人を務めるクリーブランド(ポール・ジアマッティ)は、仕事にはやりがいを見出せず無気力にただ毎日をやり過ごす日々が続いていた。

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そんなある日、夜中に共用の中庭プールで水しぶきの音を聞いた彼は、若者のイタズラかも?と犯人を取り締まるため人気の無いプールサイドへ。

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しかし彼が遭遇したのは、人魚のようなナーフ(妖精)。ストーリーと名乗るそのナーフ(ブライス・ダラス・ハワード)を助けた彼は、伝え聞いた古い伝説と彼女の境遇が一致しているのに気づく。言い伝えを信じ、彼女が元居た世界ブルー・ワールドへと戻してやろうと考え始めるのだが...

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M・ナイト・シャマラン監督のメジャー第5作品は、自分の娘達のために創作したベッドタイム・ストーリー
を題材にした、ちょっぴりスリラーも入ったミステリー・ファンタジー映画。

主演は「サイドウェイ 」での好演が記憶に新しいポール・ジアマッティ。第2候補としてケヴィン・コスナーの名前も挙がっていたようですが、今回のようにあえて影を薄くしてメディウムとして機能させた役作りを考えるに、ジアマッティで正解だったように思いました。

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なんか設定がひどく微妙なヒロインには「ヴィレッジ 」にも出ていたブライス・ダラス・ハワード。「こんなすごい女優は見たことがない」というシャマラン監督の評はお世辞か何かと思っていたのですが、どうやら本気で入れ込んでいるみたい(「ヴィレッジ」での彼女の演技、そんなに良かったかしらん?)

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過去に例が無いほど画面に出ずっぱりで、もはやカメオとは言いづらいほどの高い露出度だったシャマランや、キャピキャピ(死言?)の韓国系女子大生のシンディ・チャウ、など、いつもの彼の作品とは趣を変えたキャスティングですが、中でも異色だったのは、新たに引越してくるイヤミで辛らつな評論家役のボブ・バラバン。

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そのバラバンが演じるベテラン映画評論家が劇中で語るには、全てのストーリーのバリエーションは既に語りつくされていて、どんな作品もその焼き直しに過ぎない、んだとか。


過去一貫して"物語"の意味をずっと追求してきた監督の作品だけに、そんなギミックを入れ込んだ映画を観た後に、「どんでん返しも仕掛けもなんにも無い、大人が楽しめる単純なベッド・タイム・ストーリー」という監督の説明を聞いても、やっぱり照れ隠しの嘘にしか聞こえないわけですが...


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シックス・センス 」、の興行的な大成功から、「アンブレイカブル 」、「サイン 」、そして「ヴィレッジ 」とずっと続いていたディズニー系配給ルートとの蜜月関係は、どうやら破綻したようで今回は WB からの配給。さすがに2~4作目はディズニーの思惑とは裏腹にどんどんマニアックに成り過ぎてマーケット的にオイシクなくなってきた、、という事なんでしょうか?


邦題は「レディ・イン・ザ・ウォーター」となって、今年の秋に公開予定だそうです。


IMDb: Lady in the Water
Official Site: Warner Bros.
Lady in the Water

時は今から7年後。アメリカ全土に物質(サブスタンス)D と呼ばれるドラッグが蔓延していた。しかしその流通経路は複雑で謎に満ちており、どこで製造されどうやって社会に流れてくるのかを知る者は居なかった。



一方カリフォルニア州オレンジ郡の麻薬取締局は、完全匿名の囮捜査を遂行するために、スクランブル・スーツを導入。頭からすっぽり被る全身スーツ状のそれは、常に姿形を変化させ声を偽装する変装用のハイテク・ガジェットで、どんなテクノロジーを使っても中の人間が誰だかを推測する事は不可能。そのスクランブル・スーツを着用してオフィスに勤務する麻薬捜査官達の個人情報は、その上司ですら知らされていない。

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そんな中、捜査官の一人(キアヌ・リーヴス)は、秘密裏に屋内に取り付けられた監視カメラと録画装置を使い、アークターという名の中毒患者を24時間監視する事を命じられる。そのアークターという男は、中毒患者達と一緒に暮らし捜査を進めている囮捜査官である自分自身だったのだが...

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フィリップ・K・ディックの原作「暗闇のスキャナー」を、リチャード・リンクレイター監督が脚色し演出した近未来SFミステリー・スリラー。主人公を演じるのは、挙動不審ぶりがとても似合うキアヌ・リーヴス。虫の幻覚を見始めるヤク中患者でロリー・コクレイン。同居人かつ妙に明るい薬仲間でロバート・ダウニー・Jr(←この人、薬でえらいトラブってましたよね。よくこんな映画に出れるなぁ)とウディ・ハレルソン。微妙な位置関係に
居るヒロインにウィノナ・ライダー(←ぴったりの役どころ)。

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リンクレイター監督の復活作「ウェイキング・ライフ 」(←「ニュートン・ボーイズ 」の興行が大失敗してしばらくスタジオからホサれたんだとか)と同じく、ロトスコーピングと呼ばれる技法で2Dアニメーション化されています。実写の上から輪郭をなぞり色を付けていくこの技法、今はPC上のソフトウェアを使って作成される
そうなのですが、1分のフィルムに対し作業時間は500時間。リンクレイターはまず普通に映画を撮り、編集を終わらせて完全に1本の映画として仕上げて、それからアニメ化するのに18ヶ月も費やした、というポストプロダクションの塊のような作品だそうな。ちなみに、アニメ化する際、キアヌの無精ひげを一貫して同じに描くのが、けっこう難しかったそうな。

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同じジャンキー映画と言えども、例えばクローエンバーグの「裸のランチ 」などとは大きく異なった雰囲気を持つ作品で、監督曰く「ほんの少しの犯した過ちのために払わなければならなかったあまりにも大きな代償」がテーマなんだそう。


自分はロトスコーピングという独特のヴィジュアル・スタイルからくる不思議な浮遊感と距離感や、もっともらしくあちこちで提示される多義的なあいまいさを十分に楽しんだクチなのですが、そういうのが嫌いな人には少しツラい映画なのかもしれません。

途中はっきりした進行方向を見えずに迷走し続けるように見える物語が、ラストに向けて急速の収束する
のも「ウェイキング・ライフ」にちょっと似ていて、自分はひどく気に入ったのでした。

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製作予算は20億、公開2週目で全米17→216スクリーンに興行規模は拡大され、現在累計2億のり上げでボックス・オフィス・ランキング10位に登場。日本では単館系公開になるんでしょうか?邦題は「スキャナー・ダークリー」でこの秋に公開予定だそうです。


IMDb: A Scanner Darkly
Official Site: Warner Independent Pictures

A Scanner Darkly

ウィル(オーランド・ブルーム)とエリザベス(キーラ・ナイトレイ)がまさに結婚式を挙げようとしたその瞬間、二人はジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)を助けた罪で投獄。死罪が適用されようとしていた。今や世界の海を掌握しつつあり、その勢力を世界の端々まで伸ばすイギリス上層部が本当に欲していたのは、ジャックが持つ魔法の羅針盤。エリザベスを人質に取られた形で、ウィルはジャックの居所を探し出すために旅立つ。
一方そのジャック船長も頭を抱えていた。ずっと前に、冷血なデイビー・ジョーンズ船長(ビル・ナイ)との約束期限が迫っており、このままでは死後永遠に彼の元で奴隷として働かなくてはならなくなるのだが...




ご存知「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」の続編。過去、いわゆる"海賊モノ"映画は興行的に大失敗して会社が潰れたり、監督のキャリアが潰れかかったりと、映画会社にとっては鬼門的な扱いだったそう。そういうわけで前作を製作する際、配給会社のディズニー的には70億売れれば御の字、だった所が蓋を開けてみれば米国国内だけで300億以上の予想外の大ヒット。ディズニーが構想した、テーマパークの乗り物から映画を作る、という3部作企画のうち、他の2つ、「ホーンテッドマンション 」と「カントリー・ベアーズ 」が共に大ゴケしたのとは反対に、予想外の大成功。これに気を良くしたプロデューサ達は急遽続編の企画がスタート。フランチャイズ化を想定した大型商業作品の場合、「もし大ヒットして続編が作られた場合は...」という契約を最初から結ぶのが昨今の流行らしいですが、そういう事情で、売れっ子スター3人の顔をそろえるのはなかなか大変だったそう(キーラもオーランド・ブルームもかなり強気の出演料UPを要求したとか。結局この映画でのブルーム君のサラリーは12億円!)


また金計算には人一倍うるさいディズニーが今回試みたのは、「ロード・オブ・ザ・リング」で使われた、いっぺんに正編、続編を撮影、ポストプロダクションをシーケンシャルに流して、制作費を浮かす。それでもって正・続編の公開時期差を縮める、という作法。そういうわけで、パイレーツの 2 と 3 は並行して撮影が進められたそう。もっとも予想外の障害(台風を含む)が多発して、結局思ったほど制作費は減らず、2 の公開直前の段階で 3 の撮影は半分ほどしか終わっていないそうですが。元々マーケティング部門は夏休みに 2、冬休みに 3 の公開、というのを狙っていたらしいのですが、2 の編集が公開3週間前になっても終わっていないほど 2 の製作スケジュールが押し、結果 3 「Pirates of the Caribbean: At World's End 」の公開は来年5月末まで延期になったそう。



と、ネットで流れるそんな噂話も良く知らずに、とりあえずスクリーンに向かったので、3 まで続く前提でぶっつり終わるエンディングに「おぃおぃ、続編を作る含みったって、こんな終わり方は無いだろう」と突っ込んだのでした。 --- いや初めから SW みたいに 3 まであるよ、って知ってて 2 を観に行ったらのなら、「帝国の逆襲」で主人公の片腕がもげて病院入りした所で終わっても納得するわけですが...---


演出を担当したゴア・ヴァービンスキー監督は、当たり外れの差が大きいのであまり期待はしてなかったのですが、う~ん、これ、評価は難しいですね。大道具、小道具から SFX、 CGI まで、画面の隅から隅までお金のかかってそうなゴージャズな画面、端麗なシネマトグラフィ、アイデア良し動き良しのアクション・シークエンス、などなど、サスガ、と納得する所もあれば、この脚本、良く書けているけどお子様向けのマテリアルじゃないんじゃないの?と突っ込みたくなる所も。


それなりに売れるだろうし、気に入る人も多いと思うのですけど、個人的にはちょっと評価が低め、という気もします。もっとも初めから 3 まで作るって知ってて観に行ったのなら、もう少し印象が違ったかもしれません。


米配給元ディズニーは、シンデレラ城をモチーフにした新アイキャッチャーを付けたりもしてましたが、この映画はディズニー・ロゴ付きの配給にしてはめずらしく PG-13 (13歳以下のお子様には有毒なシーンがあり。普通その手の"有害"映画はタッチストーン・ブランドで配給)。 その割には自分の観た会場では乳母車に乗った子供までぎっしりでしたけど。あのお子様達、このお話をちゃんと追えてたんだろうか、ちょっと心配...


邦題は「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」となり7月22日から公開だそうです。(←ディズニーにしては日米公開時差が少ないのは意外)


IMDb: Pirates of the Caribbean: Dead Man's Chest
Official Site: Disney

Pirates of the Caribbean

南ロサンジェルスで警備員を務めるO2(オーツゥー: タイリース・ギブソン)は、過去2度務所入りを食らったが、現在は大切な息子のために堅気に生きようと必死。時間を過ぎても交代が出勤せず、息子のジュニア(H. ハンター・ホール)を学校へ迎えに行かねばならなかったシングル・ファーザーの彼は、無断で着の身着のママ職場を抜け出す。なんとか時間ぎりぎりで車で息子を拾った彼だったが、信号待ち中に強盗に拳銃を突きつけられ、車を奪われてしまう。
車に乗ったママの息子を救おうと、思わず職場から持ち出し中の拳銃で犯人グループに反撃を加える彼。しかし息子はさらわれ、街を牛耳るマフィアの親分ミート(ザ・ゲーム)からは息子を返して欲しければすぐに1千万円を用意しろ、と脅される。保護観察中に職場から持ち出した銃を発砲した彼は、警察に相談することもできず、偶然事件の現場に居た女ココ(ミーガン・グッド)を巻き混んで息子を救出しようとあがくのだが…




あの迷作「グリッター きらめきの向こうに 」でマライア・キャリーのキャリアを潰しかけたヴォンディ・カーティス=ホール監督が、脚本と演出を担当した、アーバン・クライム・アクション・スリラー。脚本にはダリン・スコットの名前もクレジットされています。


主演のタイリース・ギブソンを始めて映画で見たのは、たしか「サウスセントラルLA 」(日本劇場未公開: 原題"Baby Boy" うーむ)だったと記憶。それがヴィン・ディーゼルが降板した穴を埋めて「ワイルド・スピードX2 」に出演し、「フライト・オブ・フェニックス 」ではやや出番が少なかったものの、「フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い 」で手堅い存在感を示し、「愛と青春の旅立ち」の現代風焼き直し(?)「Annapolis 」では鬼教官役を好演していました。男前のブラック・アクターで、きちんとした演技をこなせるいい役者さんだと思います。


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ヒロインのミーガン・グッド、日本では「ロール・バウンス 」でおなじみでしょうか。米国では、先日話題になった尖った学園サスペンス・インディ映画の「Brick 」や、ここでも紹介した「Venom 」などに出演しています。


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この他、冷酷無血のギャング役で、ヒップホップの大物「The Game」、ギャング団に片足を突っ込みつつも主人公を気遣う親戚のラッキー役で、「Ray/レイ 」や「クラッシュ 」にも出演しているラレンズ・テイト。


こうみると、見事に隅から隅まで黒人キャスト。美男・美女のブラック・アクターを主役ペアにし大物ミュージシャンがゲスト出演、とまぁこれは典型的な黒人観客に特化したオーディエンス・セグメンテーションなんでしょう。


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物語が始まるセットアップや、途中「俺たちに明日はない 」(原題"Bonnie and Clyde")をモチーフになぞった展開など、プロットのアイデアにはポテンシャルが十分あると感じたのですが、脚本の作りこみと練りが少し足りない感じ。絵で表現できていない事を、キャラクターの口から説明させちゃう箇所がちらほらあって、その辺は安易すぎるんではないかと。演技はそこそこコナれたレベルだったと思いますが。


米国配給元のユニバーサルは、この手の中規模 B 級アクションを作らせるとなかなか上手いので、かなり気負って観劇に望んだのですが、ちょっと期待しすぎたかもしれません。日本の映画館にはかからないかもしれませんが、まぁ特別シネマトグラフィーが良いわけでも、スペクテキュラな特撮があるわけでもないので、ビデオ待ちで十分かもしれません。


IMDb: Waist Deep
Offical Site: Universal

Waist Deep

時は19世紀の終わり。所はオーストラリアの外れ。家族一家の惨殺とレイプの罪で追われていたバーンズ兄弟一味の二人が捕まった。スタンレイ警部(レイ・ウィンストン)は、兄のチャーリー(ガイ・ピアース)に対し、もし弟のマイキー(リチャード・ウィルソン)を助けたければ、山岳部へ逃げた長男のアーサー(ダニー・ヒューストン)をクリスマスまでに引き渡すように要求。馬と銃、そしてたった9日間の猶予をもらったチャーリーは、自分の兄の首を狩りに荒野へと旅立つのだが…

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脚本はニック・ケイヴ、演出は彼のミュージック・ビデオをデビュー以来手がけてきたジョン・ヒルコート。ミュージシャンでもあるニックは映画のサントラも担当しています。この二人が野心的にチャレンジしているのは、スピルバーグの「プライベート・ライアン 」的なリアリティを持つ、新しいオーストラリアン・ウェスタン・スタイルのアクション・クライム・ドラマ。


主演は、「タイムマシン 」や「モンテ・クリスト伯 」など大型商業作品をこなした後、お子様向け動物映画「トゥー・ブラザーズ 」に出て以来あまり顔を見た記憶がない英国オーストラリア人俳優のガイ・ピアース。

純真で天使のような幼い顔と、凶暴な残虐さの両面を持つ末っ子のマイキーを演じるのはリチャード・ウィルソン(←初めて見る顔でした)。慎重かつ大胆、沈着冷静で行動力もある犯罪グループのリーダの長男アーサーを演じるのは、ヴァージニア・マドセンの元旦那でアンジェリカ・ヒューストンの弟でもあるダニー・ヒューストン。レイ・ウィンストン演じる仕事に疲れきったスタンレイ警部の愛する妻の役にはエミリー・ワトソン。先日観た「Wah-Wah 」では異郷の地で本国式を貫く英国人社会から浮いたアメリカ人役を演じていましたが、この作品では"遅れた"田舎に文化と教養を持ち込もうとする英国の貴婦人という役どころ。

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英国の流刑地を舞台に、荒くれ者が移住者達の社会をしばしば脅かす時代を描く超リアルな異色のウェスタン。ファンタジー要素を取り除いた演出で、血や暴力や死が明暗はっきりと描かれた画面からは、その中に生きる人々の痛みが伝わってくるようでした。


登場するキャラクターのそれぞれがよく立っていて、やや尖った脚本に厚みのある丁寧な演出が添い、それを哀愁漂う音楽が被さった、近年なかなか見られない骨太の映画。砂埃の味が口の中に広がるような、乾いた大地の空気がカメラでよく切り取られていて、ザラザラした風の中で血を血で洗う残酷な殺し合いが繰り広げられる一方で、単に凶暴な暴力シーンをビジュアルで追うだけでなく人間の内面もしっかり掘り下げていて、いろんな意味でシンドさを感じつつも、なかなか見ごたえのある作品だったと思います。

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2005年の Australian Film Institute (AFI) で作品賞を含む12部門のノミネート、うち撮影、衣装、音楽、プロダクション・デザインの4部門で受賞したようです。原題の「Proposition」は提案くらいの意味でしょうか。邦題、日本での公開時期は探しきれませんでした。


IMDb: The Proposition
Official Site: First Look Pictures Releasing

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The Proposition

大学を出たばかりの新卒アンディ(アン・ハサウェイ)はジャーナリスト志望。学生新聞の編集長を経験し、夢はザ・ニューヨーカーで記事を書くこと。しかし田舎出身の女子学生に門戸を開く出版社は皆無で、唯一返答があったのはファッション・マガジンの「ランウェイ」誌。その仕事とは業界一の切れ者でかつ鬼のように厳しい編集長ミランダ(メリル・ストリープ)のパーソナル・アシスタント。
彼女は軽いツナギのつもりで面接に望んだのだが、なぜか業界知識も無くファッション・センスも無い彼女が他の応募者を差し置いて合格。第一アシスタントのエミリー(エミリー・ブラント)もはじめとしてモデルのように細い体に最新ファッションにまとった編集部の誰もが、田舎者丸出しでファッションのファの字も知らないアンディにはその仕事が勤まるとは思っていなかったのだが...


ローレン・ワイズバーガーの自伝的小説「プラダを着た悪魔」を、「Laws of Attraction 」や「Three to Tango 」のアライン・ブロッシュ・マッケンナが脚色した、ファッション雑誌での初仕事に振り回される新人社員のコメディ・ドラマ。演出は「セックス・アンド・ザ・シティ 」などの HBO 系プレミアムTVドラマで知られるデヴィッド・フランケル監督。


この作品、最初にポスターを見た時には「なんか変なタイトル」くらいにしか気に留めなかったのですが、劇場で流されているトレイラー(予告編)がとにかくすばらしく、長い間大変楽しみに公開を待っていたのでした( Apple のトレイラー・サイトは「ここ 」から)

主人公を演じるアン・ハサウェイは「プリティ・プリンセス 」時代から明るく健全なお子様映画への出演が印象に強く、シリアスな役がこなせるのか疑問に思うスタッフも多かったのが、そんな先入観を吹き飛ばしたのが「ブロークバック・マウンテン 」での演技だったそう。本作では、流れに押し流される若さを元気に明るく演じています。あえてパーソナリティを奥に引っこめた受け身のニュートラルな演技と演出が、観客の感情移入を助けているような印象。


そして、そんな彼女の前に立ちはだかる偉大な女優編集長ミランダを演じるのは、合計13回のオスカー・ノミネートを誇るメリル・ストリープ(原作小説では、ミランダは Vogue 誌のアナ・ウィンター編集長をベースに造形されているらしいですが、実際どんな人なんでしょう??)。先日観たばかりの「A Prairie Home Companion 」とはがらりと違う、すばらしいキャラクター造形に14回目のノミネートの予感!


この他の出演者は、同棲中のボーイフレンドとして「ニコルに夢中 」でメリッサ・ジョーン・ハートと共演したエイドリアン・グレニアー、親友役で「RENT/レント 」のトレイシー・トムズ、親切にしつつも彼女を密かに狙うハンサムなライターでサイモン・ベイカー、そしてランウェイ誌のファッション・ディレクター役に天才スタンリー・トゥッチなど。


TV ドラマ出身監督の采配のせいか、ボルテージの上げ下げが普通の2時間映画と比べてやや違和感があった点を除けば、脚本、演技、演出、編集すべてが高水準で文句無しにすばらしい。
特筆すべきは物語の語り手(カメラ)の距離感の保ち方で、主人公の第一視点に近づき過ぎず遠ざかり過ぎない微妙な間がなんとも絶妙。


新人が足がかりを作るために必死に努力する様や、微妙な局面でモノを言う社内政治力など、米国企業に勤務経験がある人なら、だれもが「うんうん」と肯けるリアリティを、きちんとドラマに仕上げた脚本も凄いですが(下手すると「うちの上司は嫌な奴で」で終わってしまうかも)、あえてカタログ映画に仕立てなかった監督の英断と力量もすごい。


スーパーモデルや有名デザイナーが本人役で出演しているので、ファッションに詳しい人はより楽しめると思いますが、そうでない人でも十分すぎるほど面白かった作品。テーマが年齢的に一番ハマりやすい層だという点は差し引いて考えなくてはならなかもしれませんが、自分は今年観た作品では本作が一番です。ご近所の映画館でかかっていたら、ぜひ。


IMDb: The Devil Wears Prada
Official Site: Fox 2000 Pictures

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The Devil Wares Prada


スーパーマン(ブランドン・ラウス)が姿を消してから5年以上が経っていた。そんなある日、とうもろこし畑の広がるスモールヴィルに再びスーパーマンを載せた隕石が落下。息子クラーク・ケントとして彼を育てたマーサ(エヴァ・マリー・セイント)は、彼の再訪をやさしく受け止めるのだった。
メトロポリスへと上京し、再びデイリー・プラネット新聞社へと出社する彼が目にしたのは、最愛のロイス・レーン(ケイト・ボスワース)の書いた「なぜ地球はスーパーマンを必要としないのか?」という記事。その記事はピューリツァ賞を受賞しており、しかも彼女は花形記者のリチャード(ジェームズ・マースデン)と結婚。ジェイソンという男の子を授かっていた。

一方、スーパーマンによって捕らえられ投獄されたレックス・ルーサー(ケヴィン・スペイシー)は既に出所。愛人のキティー(パーカー・ポージー)を使って大富豪の未亡人から遺産をせしめ、再び世界征服の野望を追い始めるのだが…




今更改めて説明するまでもない、「スーパーマン 」フランチャイズの最新作。お話的には「スーパーマン II/冒険篇 」の続きという設定で、「スーパーマン III/電子の要塞 」や「スーパーマン4/最強の敵 」は無かった事にされている!?


この作品、構想から公開まで19年、途中監督が4回も交代した超難産型の製作だったらしい。2004年の初夏に、最終的にディレクターとして作品を仕上げたブライアン・シンガー監督に話が回ってきた時には、既にWB内部で11年の歳月と65億円の準備費が費やされていたと言う。
ブライアン・シンガーは、既存のキャスティングを反故し脚本を全面改訂、制作費185億の約束を取り付け製作着手。途中予算を20億削るために、フル・セットが組まれる予定だったメトロポリスがCGIに変更(←設定はNYCかと思っていたんですが、実際には架空の都市、らしいです)。しかしCGIやらに追加のコストがかかり結局制作費は204億円にまで膨らんだんだとか。この制作費に、税金やら事前の準備費用やらを足していくと、製作総予算は263億。これに全世界向け広告宣伝費を約100億投じ、結果配給会社WBが負担する総コストは363億円。これを回収し収支をプラスに転じるには全世界で600億の売り上げが必要なんだそうな。


意外なのは、予想に反してこの新作は何から何まで予想通りだった事。今この時期にリメークするんだから音楽なり脚本なり演出に何か新しい"今風"のエレメントを入れてくるかと思ったのですが、いい意味でも悪い意味でもきわめて普通の万人が抱くだろう平均的イメージをなぞった"スーパーマン"映画でした。


サントラもジョン・ウィリアムズのオリジナルから大きくアレンジを変えず、穏やかなバリエーションの差異しかみせず、クレジットも懐古調。それでいて今の若い世代がイメージするだろう人気TVシリーズ「ヤング・スーパーマン 」との連続性も保っているのは、老若男女すべてに万遍無く受け入れられようとする配慮なのか?


ブルークラッシュ 」や「アイドルとデートする方法 」の印象が強かったケイト・ボスワースがロイス、って少し違うかなぁ、と見る前に想像していたのですが、この作品で彼女はキャサリーン・ヘップバーンの演技を研究して真似たとかで、ちょっと古風で落ち着いた印象。
実生活は不器用でケントに近いというブランドン・ラウス君(実際に黒ぶち眼鏡をかけてるんだとか)は、スーパーマンらしく見えるために立ち方、姿勢を強制したとかで、やっぱりどことなくクリストファー・リーヴ風。

ケヴィン・スペイシーやパーカー・ポージーは持ち味を生かした演技で安定感がありましたが、やや驚いた配役はロイスの旦那役ジェームズ・マースデン。つい先日、「X-MEN ファイナル ディシジョン 」でひたすらかわいそうなスコット(サイクロプス)を見たばっかりなので、まったく違うキャラがダブってなんとなくムズムズしました。


どこかにブライアン・シンガー監督ならではオリジナリティーを期待していた部分もあったのですが、まぁ考えてみればあまりコンテンポラリなスーパーマンってのも変なわけで、これはこれで良かったのかもしれません(噂ではオリジナルの脚本には9/11以降のテロに悩まされる世界、のようなモチーフも入っていたそうです)。ブライアン監督曰く「今まで自分の撮った映画の中で一番へテロセクシャルな映画(笑)」だそうですが、たしかに父性を中心にすえた"健全"なテーマの作品で、子供連れでも安心、みたいな所を狙っているのかも。


2時間半を越す長尺で、最初と最後はややスロー・テンポですが、とにかく美しいシネマトグラフィーで
やっぱり映画館で見ておきたい作品だと思いました。邦題はそのまま「スーパーマン リターンズ」で8月19日より公開だそうです。


IMDb: Superman Returns
Official Site: Warner Bros.


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Superman Returns

マイケル(アダム・サンドラー)は新進気鋭のアーキテクト。事務所の社長(デヴィッド・ハッセルホフ)に気に入られ、次々と主要プロジェクトで斬新なデザインを考案していくのだが、問題は仕事と家庭との両立。押しの強い社長は無茶なスケジュールで次々とプロジェクトを押し込んでくるが、妻のドナ(ケイト・ベッキンセイル)は子供達と過ごす時間が少ない事を常に不満に思っていた。
そんなある日、仕事と家族サービスに翻弄されるお父さん役に付かれきったマイケルは、リビングに多数あるリモコンの操作にいらだち、夜中にもかかわらず車でユニバーサル・リモコンを買いに走る。
1台で何の操作にも使える学習型リモコンが欲しかった彼に、怪しげな店員モーティー(クリストファー・ウォーケン)が店の奥から引っ張り出してきたのは、本当に何でも(ユニバーサルに)を時間を操作できる万能のリモコン。自分の過去の任意の地点まで戻ってプレイバックができれば、面倒で退屈な時間は早送りして未来にも行けるのだ。「返品は不可能」というモーティーの警告も気づかず、マイケルは万能リモコンの威力に惚れ込み理想の生活を手に入れたかに思えたのだが…



アダム・サンドラーの Happy Madison Productions が製作した、コメディ色の強いファンタジー・ドラマで、演出は過去「ウェディング・シンガー 」や「ウォーターボーイ 」などのヒット・コメディでもサンドラーと仕事をしたフランク・コラチ監督。脚本は「ブルース・オールマイティ 」を手がけたスティーヴ・コーレンとマーク・オキーフのコンビ。そう言えば、神から万能の力を与えられた平凡な男が、その力に翻弄されるという「ブルース…」と、テーマが被る部分は少なくないのかも? (ちなみに「ブルース…」の続編「Evan Almighty 」はスティーヴ・カレル主演でもうすぐ公開)


アダム・サンドラーの主演映画は、やっぱり全てが彼の方向を向いたアダム・サンドラーの映画なわけですが、脇役に前述のデヴィッド・ハッセルホフ、ベッキンセイル、ウォーケンとアクの強い三人を置き、ヘンリー・ウィンクラー、ジュリー・カヴナー (「ザ・シンプソンズ 」のマギー役の声優さんですね)、ショーン・アスティン、ジェニファー・クーリッジなど、個性と実力を備えた役者を配置した強力なキャスト。無名(自分が知らないだけか?)ながら子役7歳から20台後半までを3人づつで演じた子役(?)も上手かったと思います。


最近のアダム・サンドラーの出演作の傾向通り、この作品も単なるドタバタ・コメディではなく、むしろ仕事と家庭のバランスを見失った父親の半生を軸にしたヒューマン・ドラマ仕立て。所々にサンドラーお得意の毒を含んだギャグも挟まるものの、映画の本筋はしっとりと重い内省的な物語だと思います。

先日ここでも書いた「RV 」は、ロビン・ウィリアムズが仕事と家庭サービスのサンドイッチになるどたばたコメディでしたが、似たテーマの作品がこれだけ近い時期に公開されるという事は、ある意味米国の社会的側面を反映しているテーマなのかもしれません。


笑いを誘うギャグは鋭く、しんみりさせるシーンも丁寧な演出で、いい意味でお話は"お約束"の流れにしっかり乗って進行していく作品。滞留するほどは遅すぎず、乗り遅れるほど急ぎすぎない編集の妙もあって、個人的には十分すぎるほど楽しんだ作品です。


ネットでは制作費70億とも83億と伝えられる規模の作品ですが、この週末に全米1位でボックス・オフィス・チャートに初登場。公開スクリーン3750枚弱で売り上げ40億の成績は、相変わらずのアダム・サンドラーの求心力の強さを印象づけました。

伝統的にハリウッド発のコメディーは海外興行に弱い、と言われています(アダム・サンドラーも日本での知名度・信頼度はイマイチ)、「クリック」というノイズの載りやすいキーワードのせいもあってか、邦題、日本での公開時期は探しきれませんでしたが、日本人なら思わずニヤりとするようなギャグもあって(商談途中、どうせアメリカ人にはわかるまいと日本語でボロボロの悪口を言う出張ビジネスマン達の会話を、マイケルはリモコンで「英語」吹き替えにして内容を把握してしまう...)、日本でもまずまず評判になりそうな予感もするのですが、さて...


IMDb: Click
Official Site: Sony Pictures

Click

生まれた時から顔におおきなアザがあるジェイコブは、内気で内向的。一方双子の兄のルーディーは、やんちゃで活発。弟に絡むいじめっ子達に立ち向かう勇気と男気を見せる。二人の親友は、家族一同で太っているガスと、シングル・マザーの母親から十分に愛情を受けられない不満を感じているおませな女の子のマリー。 4人のお気に入りの場所は、裏庭の林の中にあるツリー・ハウス。いじめっ子達の手が届かない
その場所は、顔を恥じるジェイコブにとってとびきり特別な場所でもあった。
そんなある夜、部屋を抜け出した兄のルーディーとガスは二人でツリー・ハウスに寝泊りしていたのだが、そうとは知らぬいじめっ子は緊急避難場所として彼らがいつも逃げ込む憎憎しいこの場所に自作の火炎瓶を投げ込む。寝入っていたルーディーは焼死。なんとか逃げ出したガスも落下のショックで味覚と嗅覚を失い、食べる事が趣味な家族から浮いて行く。一方マリーは一方的な片思いから工事現場で働く若い男に付きまとうのだが…




その衝撃的な内容から2001年のサンダンス映画祭で大きな反響を呼んだ「L.I.E. 」の脚本アンソニー・チプリアーノとマイケル・クエスタ監督のコンビが再びタッグを組んだ、ダーク・ドラマ。製作予算は4千万で、米国での配給はインディ映画をケーブルに流す専用チャンネルの IFC。


常に自分の味方で真に心を許せた兄を失ったいじめられっ子の弟、食べる事だけが生きがいの家族の中で味も匂いも感じないため孤立する太っちょの子供、親からの愛に飢え家から出て行った父親を投影するかのように工事現場作業員に恋をする小学生女子、の12歳三人が主要キャラクター。その3人の書き込みは厚みがあり、引き込まれました。物語のセットアップがとにかくうまくて、その後の展開も、週末の落とし所も十分に考えられた知的な作品であります。


子供のアンバランスな利発さとおろかさや愛らしさと残酷さの共存を、よく整理・構成された秀逸な脚本で描くちょっと反社会的な匂いもする作風。演出も編集も、共に脚本の持つポテンシャルを100%引き出した見事な仕上がりで、これといった不満な点は見当たらないわけですが、一方で作品スケールの小ささと狭さは否定しがたい。面白く良くできた映画だとは思うのですが、いい意味でも悪い意味でも丁寧に小器用にまとめられたインディという枠は超えられなかったかも。


大人の知らない所で子供達がとんでもない事になっている、という点では邦画の「誰も知らない 」に通じる所もあるわけですが、本作は時に過剰、時に疎遠すぎる子供と大人の接合部を描いた点でユニークだった気がします。


日本の大手劇場チェーンでかかる可能性は低そうですが、広告宣伝から受ける印象よりずっと濃い内容で仕上がりも十分に磨き上げられた作品なので、ご覧になるチャンスがあったらぜひ。


IMDb: Twelve and Holding
Official Site: IFC Films

Twelve and Holding

時は1950年代の終わり、所はキューバのハバナ。富豪一家の3人の息子は各方面で活躍していたが、そのうちの一人(アンディ・ガルシア)は有名なナイトクラブのオーナー兼コリオグラファーだった。幸せに満ちた家庭を心の支えにし、芸術を追求する彼だったが、やがてカストロ革命の波が国を被って行く…


予告編を数度見たくらいの予備知識しかなく、しかも作品名と記憶が結びつかないママにたまたま時間が合って劇場に入って観劇。キューバ革命前の静かで美しくゆったりしたハイ・ソサエティの暮らしから、暴力革命の火がくすぶり始めて社会に暗雲が立ち込め、やがて狂気のような動乱が始まり、移民としてニューヨークへ渡たり底辺の生活を始めて…という、言わばありきたりのキューバ移民物語でありながら、本作はそのディテール量と湿気や気温が感じられるようなリアリティの厚みが際立っています。


自らもキューバ移民であるアンディ・ガルシアの手により暖められてきた原案で、演出も主演を兼ねるガルシア本人が担当。構想から公開まで足掛け16年(でも撮影は35日間だったとか)、当初306ページあった脚本の草案は120ページまで減らされたそう。それでも大掛かりで超大な物語で、主人公の家族・関係者を含めて多くの登場人物を、時間をかけ場所を変えて描写していきます。


自分のアイデンティティをかなり正直にぶつけた結果なのか、感情が内に入り過ぎた演出とギクシャクしたあまりエレガントでない編集には注文を付けたくなる点は多いものの、個々のシーンにはなかなかの迫力があります。フィルムから漂う気高さと気品は、例えばしばらく前に見て記憶に新しい「ダンシングハバナ 」などのエンタメ作品と比べるのがおこがましく感じるほど。リアリティを追求したキャスティングでありながら、ポイント的に使われるコミカルなビル・マーレイや、とびきりの存在感のダスティン・ホフマンから来るアクセントも良く機能していたと思います。


なかなか感心したのは、物語の進行に応じて画面のトーンをうまくコントロールしていた事。前半のひたすら華麗で美しいダンス・コリオグラフィが、徐々に物悲しさを帯びてくるのも良かったし、明るいキューバー→革命→夜のニューヨークと、展開に応じて画面の華やかさ明るさ、温度が変化して行く演出は見事でした。


キューバ革命前後の動乱と騒乱にさらされる家族や友情を舞台演劇の振り付け師の目を通して描く作品、個人的には気に入る要素を多く発見できた映画でもあるのですが、なぜかその出来の割りには米国での広告・宣伝がイマひとつ力が入ってないような印象。伝えられる制作費は10億と小規模の映画で、配給が弱小のマグノリア、全米の上映スクリーン数は50枚ちょっと、公開8週目で2億円弱の興行では、お金がかけられないのは理解できますが、もうちょっとプッシュしてもいいんではないかと。


ちょっと大げさな作りに構えちゃう人も多いかもしれませんが、長尺に耐えられる自信がある人はぜひ映画館のスクリーンで味わって欲しい作品だと思います。


IMDb: The Lost City
Official Site: Magnolia Pictures

Lost City